2012 Fiscal Year Research-status Report
住血吸虫由来の分泌型細胞外小胞による免疫抑制機構の解析
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24590503
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
熊谷 貴 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40369054)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 住血吸虫 / エクソソーム / エキソソーム / 免疫抑制 / IFN-g / IL-4 / IL-10 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本住血吸虫より分泌される分子、特にエクソソームと言われる分泌型の小胞が、宿主の免疫応答に与える影響を調べることである。特に、住血吸虫は血管内に寄生するために宿主からの免疫を回避する必要があり、その免疫抑制機構を調べることは、住血吸虫の寄生適応を知る上で必要不可欠となる。 当該年度の研究実績としては、日本住血吸虫の成虫体、及び、虫卵を1週間培養することで、その培養上清から排泄/分泌物(ES)を得た。これを超遠心分離行うことで、その沈殿物中にエクソソーム等の微小胞膜を含む画分を得た。正常なBALB/cマウス、及び、日本住血吸虫に感染したBALB/cマウスから脾臓を取り出し、脾細胞を調整後、このエクソソーム画分で処理後、抗CD3抗体で刺激を行った。その結果、この画分で処理した群では、住血吸虫への防御効果に最も関わるTh1サイトカインの一つIFN-gの産生が有意に減少した。この効果は、成虫及び虫卵由来のエクソソームの両方で確認された。また、Th2サイトカインであるIL-4や抑制性サイトカインであるIL-10の産生は変化が無かった。また、Th1細胞の分化に関与する転写因子t-betの発現も抑えられていたことから、エクソソームはTh1細胞の分化に影響を与えている可能性が考えられた。 さらに、Th細胞が関わっているかどうかを確認するために、日本住血吸虫感染BALB/cマウスの脾細胞をCD4+細胞とCD4-細胞に分離して、同様の実験を行った。その結果、CD4-細胞でIFM-g産生の抑制傾向がみられ、CD4+細胞での影響は見られなかった。このことから、日本住血吸虫より産生されるエクソソームはTh細胞以外の細胞からのIFN-g産生を抑制している可能性が考えられた。今後は、その産生細胞の同定を目指すとともに、どのような分子が抑制に関わっているかについて解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的に記載した実験計画の進捗状況について、現在、住血吸虫からのエクソソームの回収、及び、精製、免疫誘導実験については、安定して再現性が得られるようになり、抗CD3抗体刺激下での、IFN-gの産生抑制はエクソソーム効果の指標となっている。さらに、今年度はソースとしての日本住血吸虫成虫からのエクソソームだけではなく、虫卵からのエクソソームも回収し実験を行った。その結果、虫体も虫卵も同程度に免疫抑制効果を持つことが確認された。 さらに分泌型小胞のサイズに関する実験も行った。結果、0.2μmのポアサイズのフィルターを通して実験した結果、同様の結果が得られた。このことから、やはりサイズが50-100nm程度の大きさを持つエクソソーム様の分子が免疫抑制に関わっている可能性が強く示唆された。 さらに、標的となるIFN-g産生細胞を検討するために、CD4+細胞とCD4-細胞を分離して実験を行った。当初の予想では、Th細胞が標的だと考えていたが、分離して実験を行うと、Th細胞を多く含むCD4+細胞ではなく、CD4-細胞でのみIFN-g産生の抑制がみられた。このことから、標的となる細胞はTh細胞ではないことが考えられ、標的細胞の同定に一歩進んだと考えた。しかし、まだTh細胞と抗原提示細胞を共培養した系で実験を行っていないため、次年度には、本当にTh細胞が関わっていないのかの確認実験を行う予定である。 本研究で精製されているのが、本当にエクソソームかを同定するためにマーカー分子に対する抗体が必要である。現在、マーカー分子の一つであるCD63分子の組換えタンパク質を作成中であり、発現大腸菌をクローニングし、組換えタンパク質を作る準備ができた。次年度は、組換えタンパク質から抗血清を作成していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、エクソソーム自体の解析を中心に行い、標的細胞と、そこに関わる分子を解析していく予定である。まず、CD63分子に対する抗血清を作成し、ウエスタンブロットや免疫電顕法により、エクソソームが分離されているかの確認、その局在を調べる。特に、電子顕微鏡を用いた解析で、住血吸虫からの分泌様式など、その性状を解析する。次に、分離したエクソソームがどのような分子を有しているかについて、受託解析によりmiRNAをRNA-seqで、タンパク質や脂質をプロテオーム、メタボノーム解析をを行う予定である。エクソソームに含まれている分子を検証しながら、標的となる分子を絞り込む。 また、標的細胞の同定として、Th細胞の関与の確認を抗原提示細胞を用いて、また、ダイレクトなIFN-g産生の抑制をγδT細胞やNKT細胞を標的として、単離または、FACS解析を行うことで、エクソソームの標的となっている細胞に絞り込みをかけていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、主に継続した実験のための試薬消耗品の購入が主となる。エクソソームの分離に関わる試薬、サイトカインの測定、FACS解析に必要な抗体等の試薬類、組換えタンパク質作成用の試薬、住血吸虫の維持、及び、抗血清作成用の動物購入飼育費、シークエンスやRNA-seqやプロテオーム解析のための受託解析費、これらの実験に付随するプラスチック消耗品や、一般試薬類の購入が物品費用として必要である。 旅費として、研究成果の学会発表として、国内で4件程度、海外で2件程度を考えている。また、住血吸虫の維持に必要な中間宿主貝の採取も山梨にて年2回程度行う予定である。 その他、印刷、通信、配送、一般文具、論文作成準備費用等も使用する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Phylogenetic relationships of rat lungworm, Angiostrongylus cantonensis, isolated from different geographical regions revealed widespread multiple lineages.2012
Author(s)
Tokiwa T, Harunari T, Tanikawa T, Komatsu N, Koizumi N, Tung KC, Suzuki J, Kadosaka T, Takada N, Kumagai T, Akao N, Ohta N.
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Journal Title
Parasitol Int.
Volume: 61(3)
Pages: 431-6
DOI
Peer Reviewed
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