2012 Fiscal Year Research-status Report
蚊中腸内マラリア原虫の虫体表面に発現する分子の機能解析
Project/Area Number |
24590506
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
橘 真由美 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00301325)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | マラリア / 伝搬阻止 / 雄性生殖母体 / Osmiophilic body / ワクチン |
Research Abstract |
マラリア原虫は、吸血によって蚊の中腸内に取り込まれ、極めて短時間のうちに生殖母体から生殖体へと分化し、受精を行う。この劇的な形質転換を伴う有性生殖の分子機構はほとんど解明されていない。これまでにデータベースを基にマウスマラリアであるPlasmodium yoeliiの生殖母体に特異的に発現している未知の分子20種を探索し、そのうちの6分子が蚊体内での原虫表面に発現していることを明らかにした。そこで、詳細な性状解析を行うことを目的とし、新たにウサギ抗血清を作製した。作製した抗体を用いた間接蛍光抗体法、および免疫電顕法により詳細な局在を確認したところ、1つの分子において、雄性生殖母体及び生殖体の細胞小器官(Osmiophilic body)に特異的に発現しており、鞭毛放出(Exflagellation)時に外部に放出された後、細胞表面に局在することを明らかにした。この分子は雄の生殖期に重要な機能を持つことが予測されることから、この分子の遺伝子を欠損させた組換え原虫を作製し、現在その解析を行っている。また、さらに2つの分子について遺伝子欠損原虫の作製に成功し、それぞれについて同時に機能解析を進めている。これらの分子は、有性生殖期に特異的に発現されている分子であり、機能が明らかになることで、このステージに於ける分子機構を解き明かすヒントとなると考える。また、これらの分子については原虫表面に発現されており、蚊の体内で原虫発育を阻止する伝搬阻止ワクチンの候補抗原となり得ることから、ウサギ抗血清を用いた伝搬阻止活性の検討を行っている。極めて有効なマラリアワクチンは未だ不在であり、新規のワクチン開発が急がれている現状から、マウスマラリアにおいて有効性が認められるような知見が得られれば、新しいワクチン候補抗原としてヒトマラリア(熱帯熱マラリア及び三日熱マラリア)への応用に期待が出来る。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験に於いて、蚊体内でマラリア原虫の表面にあることが確認された6分子について、抗ウサギ抗体を作製することに成功し、これらの特異抗体を用いた間接蛍光抗体法、免疫電顕法、及びウェスタンブロッティング法により、詳細な局在を確認し、発現プロファイリングを行っている。また、同時に機能解析を行う為に遺伝子欠損原虫、さらに局在解析を行うためにタグ付きの組換え原虫を作製し、その解析を行っている。研究計画に基づき、初年度は抗体作製、及び組換え原虫の作製といった研究基盤となる材料を整えることを中心として行ったが、すでにそれらを用いた解析を開始しており、さらに、作製した抗血清が蚊の体内での原虫の発育を阻害できるかを確認する為に次年度に実施予定であった伝搬阻止活性の検討も同時に開始していることから、研究進展度は概ね順調であると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
作製した抗ウサギ抗体を用いた伝搬阻止活性の検討は、特異抗体の精製を行い、順次行っていく予定である。 作製済みの遺伝子欠損原虫については、各ステージに於ける表現型(雌雄生殖母体及び生殖体の形成、雄生殖体の鞭毛放出、受精、オーキネートの形成、運動能、オーシストの形成、スポロゾイトの形成等)を野生型と比較することで各遺伝子の機能を探る。また未作製の遺伝子欠損原虫については、引き続いて作製を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度までに達成出来なかった実験を引き続き行うため、主に消耗品(プラスチック器具、遺伝子関連試薬(酵素等))及び、動物実験に使用するマウスの購入に使用する予定である。また、定期的にある国内、及び海外の学会において、成果を発表する為に、その参加費および旅費に使用する予定である。
|