2013 Fiscal Year Research-status Report
蚊中腸内マラリア原虫の虫体表面に発現する分子の機能解析
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24590506
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
橘 真由美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教 (00301325)
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Keywords | マラリア / 雄性生殖母体 / 伝搬阻止 / ワクチン |
Research Abstract |
初年度において、既に蚊の体内で発現されていることが確認された2種の分子について、ローデントマラリアであるPlasmodium yoeliiを用いて遺伝子欠損原虫を作製することに成功した。当該年度においては、さらに1種の遺伝子欠損原虫の作製に成功し、前者を含め、それらの表現型について検討を行った。そのうち2種類のマラリア遺伝子欠損原虫では、蚊の体内に於ける原虫ステージでの表現型は、野生型と変わらなかった。しかしながら、1種においては、雌雄生殖母体期に形成される細胞小器官、Osmiophilic bodyが雄性生殖母体において消失することが確認された。また、この遺伝子欠損原虫を人工吸血器を用いて蚊に吸血させ、10日後に蚊の中腸を解剖し、オーシストと呼ばれる蚊体内に特異的な発育ステージ原虫を観察したところ、野生型と比較して、遺伝子欠損原虫では、オーシストの形成数が低下していることが明らかとなった。雄の生殖母体は、脊椎動物の赤血球内に存在するが、一旦蚊の中に取り込まれると、赤血球膜から出現し、鞭毛を持った雄の生殖体を形成する。その後鞭毛は外部に放出され、Exflagellationと呼ばれる鞭毛運動を行うことが知られている。この現象をマラリア感染マウスの尾静脈から採取した血液を塩基性の培養液に曝すことで、実験的に再現すると、活性化された雄性生殖母体は数分以内に鞭毛放出し、鞭毛運動を始める。先述の分子に対する抗血清をこの培養液に混合し、同様の実験を行うと、鞭毛は一旦放出するものの、運動能が著しく低下することが示された。これらの現象から、この分子は蚊体内で原虫発育を阻止することを目的とした伝搬阻止ワクチンとして有望な候補抗原であることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、蚊体内でマラリア原虫の表面に発現すると予測された6分子について作製した抗ウサギ抗体を用いて、間接蛍光抗体法、及びウェスタンブロッティング法により、それぞれの分子について局在及び発現時期を確認することが出来た。また、前年度までに作製した遺伝子欠損原虫の解析を行ない、ある分子において、蚊への感染効率に影響を及ぼすことが確認された。更に、作製した抗ウサギ血清が、蚊の体内での原虫の発育を阻害できるかを確認することを目的とした伝搬阻止活性の検討を計画しているが、現在までにその実験条件を整えることができ、すでに抗血清を用いた実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
作製した抗ウサギ血清、或いは精製した特異抗体を用いて、伝搬阻止活性の検討を行う。 効果のあるものが見つかれば、補体の影響や、抗体価の検討を行う。 また未作製の遺伝子欠損原虫については、引き続いて作製を試み、蚊体内の原虫ステージにおける表現型を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に作製した抗血清、および遺伝子組換え原虫の作製が順調に進んだため、本年度に予定していた試薬の購入額を少なくすることが出来た。また、国内の学会が、地元で開催されたこともあり、旅費が節約できた。 前年度までに達成出来なかった実験を引き続き行うため、消耗品(プラスチック器具、遺伝子関連試薬(酵素等))および、今後行う予定である伝搬阻止活性の検定に使用するマウスの購入に使用する。さらに、これまでに使用した抗体の枯渇により、新たに抗体を作製する必要があるため、組換えタンパク合成試薬を購入する予定である。 また、国内外における学会において、成果発表を行う為の参加費及び旅費に使用する予定である。
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