2012 Fiscal Year Research-status Report
マラリア原虫転写調節領域に特異的に結合する原虫独自の因子の作用機序
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24590515
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
Principal Investigator |
安田 加奈子(駒木加奈子) 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (50415551)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マラリア / 転写因子 / 転写制御 / 細胞周期 |
Research Abstract |
マラリア原虫の転写制御機構の分子機構は全くといって良いほど解明されていない。申請者はマラリア原虫の一般的なhouse keeping geneの発現制御のモデルケースとして、prx遺伝子の赤血球内ステージにおける転写制御の分子機構について詳細な解析をおこない、時期特異的に働くcis-elementおよびこれに特異的に結合する核内因子QF122(以下この分子をprx regulatory element binding protein: PREBPとする)を同定した。本研究ではPREBPの作用機序の詳細な解析によって原虫転写制御の独自性を解明することを目的とする。 本年度はPREBP過剰発現原虫を作製し、これがprxの発現量へ与える影響を評価することを試みた。しかし、過剰発現用のプラスミドベクターを原虫に導入し、薬剤選択した結果、生原虫を得ることが出来ず、stableなPREBPの過剰発現が原虫における遺伝子の発現バランスを乱し、致死的に影響する可能性が考えられた。そこで、transientな過剰発現によって、PREBPの転写活性化能を証明するため、レポーターアッセイをおこなった。レポーターアッセイに用いたプラスミド上にはprxの5’領域のコントロール下にルシフェラーゼを発現させる発現カセットと、PREBPを過剰発現させる発現カセットが両方存在するように設計した。このプラスミドを培養熱帯熱マラリア原虫にエレクトロポレーションによって導入し、24時間後にルシフェラーゼの発現を測定した。その結果、PREBPを発現しているプラスミドを導入は、ネガティブコントロールと比較して、20倍以上のルシフェラーゼの発現増強が認められた。以上の結果からPREBPがprxの5’領域に作用して転写の活性化を促すことが示され、PREBPが転写活性化能を持つ、原虫の新規転写因子であることが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の最大の目標は、PREBPのin vivo における転写活性か能を証明することであった。予定ではPREBPのStableな過剰発現株の解析によって、これを証明する計画であったが、(おそらくは過剰発現の致死的な影響によって)過剰発現原虫は得られなかった。しかし、直ちに代替手段として、 transientなレポーターアッセイの系を構築し、これによって、PREBPの転写活性化能を証明することが出来た。PREBPがゲノムワイドにどれだけの遺伝子の発現制御をおこなっているのか、また分子作用機序はどのようなものなのか、については次年度以降の課題となるが、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
・ 抗PREBP抗体を用いたクロマチン免疫沈降をおこない、実際に原虫細胞内でprxのcis-elementとPREBPが特異的に結合しているのかを検証する。さらに沈降産物を次世代シークエンサーによって網羅的に解析し、PREBPが認識するcis-element(prx以外)についてのゲノムワイドな情報を集積する。 ・ 本年度樹立できなかった、PREBPのstableな過剰発現株を得るために、より弱いプロモーターのコントロール下にPREBPを発現させるベクターを作製する。これを原虫細胞に導入し、薬剤選択おけるスクリーニングをおこない、過剰発現原虫を得る。この株におけるprx遺伝子の発現の変化を解析し、PREBPがどの様にprx遺伝子の発現に寄与しているのか明らかにする。さらにPREBPが他にどのような遺伝子の調節をおこなっているのかをゲノムワイドに探索する為に、PREBPの過剰発現株を用いて、赤血球内寄生期の各ステージにおけるトランスクリプトーム解析をおこなう。 ・ PREBPが原虫細胞内で作用するために、どのような修飾を受けているのかを明らかにするために原虫核抽出物とPREBPの抗体を用いた免疫沈降をおこなう。沈降産物をリン酸化、ユビキチン化、アセチル化等の各種翻訳後修飾を検出する抗体を用いたウエスタンブロットによって解析し、これらの修飾の有無を検出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、組換え体作製用、また遺伝子改変原虫作製用のプラスミドを作製する為に、合成オリゴDNAの経費が必要である。更に、転写因子を欠損あるいは過剰発現している原虫の転写産物を網羅的に解析するためのマイクロアレイのチップを購入する経費が必要である。また、論文投稿料、学会発表、研究打ち合わせの為の旅費が必要である。
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