2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590518
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
川本 進 千葉大学, 真菌医学研究センター, 教授 (80125921)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 低酸素ストレス / 病原真菌 / クリプトコックス / シグナル伝達 / 環境応答 / 細胞周期制御 / 転写因子 / カルシニューリン |
Research Abstract |
病原酵母Cryptococcus neoformansは、我が国に常在する真菌のうちで最も病原性が強く、易感染患者、特に、エイズ患者の直接死因としても臨床的に極めて重要な真菌である。本菌は、生育に酸素が必須な偏性好気性真菌であり、本菌は自然環境からヒトに感染時、肺に感染後、血流に乗り脳血液関門を越え脳髄膜へ移行して病原性を発揮して行く際、高酸素環境から低酸素環境への酸素欠乏ストレス条件に打ち勝ってはじめて増殖し、病原性を発揮して行く。すなわち、本菌の低酸素環境ストレス応答は、本菌感染の病原因子のひとつと言える。我々は、本菌の細胞周期制御機構を研究中、低酸素環境条件下では細胞周期制御が flexibleになるという、本菌のユニークな低酸素ストレス応答現象を見出した。そして、我々は、Agrobaceriumを用いた、ゲノムランダム挿入遺伝子変異体ライブラリーを構築してスクリーニングし、低酸素応答遺伝子として、これまでに「転写因子A」を見出し、平成24年度には、「転写因子A」の分子機能解析を詳細に進めるとともに、更にスクリーニングを行い、新たに「遺伝子 B」を得て、解析を進めた。 C. neoformansの低酸素応答遺伝子「転写因子A」は、カルシニューリン(Ca2+-カルモジュリン依存性セリン-トレオニンプロテインホスファターゼ)応答 (Crz1)転写因子、及び、PKC1-依存性(SP1-like)転写因子にhomologous な分子であった。また、本分子は、本菌細胞の integrityの維持、低酸素環境下での増殖の低下、バイオイルム生成、フルコナゾール感受性など、本菌の感染に関連した種種の細胞機能に重要な役割を持つ分子であることを明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には、本菌Cryptococcus neoformansの低酸素応答遺伝子として我々が以前に見出した「転写因子A」の詳細な分子機能解析を進め、論文を作成して報告した。更に以下のように、新たに低酸素応答遺伝子「遺伝子B」を見出し、分子解析を進めることができた。まず、Agrobacterium法による形質転換を用いて、ゲノムランダム挿入ミュータントライブラリーを作製し、その中から低酸素環境非適応株を選抜した。次に、選抜された菌株のT-DNA挿入部位をシーケンス解析によって特定し、低酸素応答遺伝子「遺伝子B」を見出した。なお、「遺伝子B」は機能未知の分子をコードする遺伝子であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、本菌Cryptococcus neoformansの低酸素応答遺伝子として我々が見出した「転写因子A」に加えて、平成24年度に新たに見出した、低酸素応答遺伝子「遺伝子B」の分子機能解析についても更に詳細に進めて行く予定である。今後の展望としては、「遺伝子B」の遺伝子破壊株などを作成し、分子機能解析や動物実験による病原性試験なども行い、「転写因子A」、「遺伝子B」の更なる分子機能解析を進める予定である。更には、C. neoformansの低酸素ストレスに対する環境応答シグナリング機構の解明を目指し、本菌の病原性との関連を考察し、C. neoformans における低酸素応答メカニズムの解明や新規薬剤の開発へと繋がる知見が得られることを期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、当初に予定していた「人件費・謝金」(当初予定:300,000円)については、研究補助のための雇用などを行わなかったので全く使用せず(0円)、また、「旅費」(当初予定:400,000円)については、半分以下(180,100円)に押さえることができたなどの結果、未使用額(918,271円)を生じた。平成25年度には、上記未使用額分を含めて、消耗品費など物品費の他、国内外の学会に参加して研究発表、情報収集するための国内外旅費として使用するとともに、研究補助者を雇用して、人件費、謝金としても使用する予定である。
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Research Products
(6 results)