2013 Fiscal Year Research-status Report
芽胞形成をターゲットとしたウェルシュ菌病原性の包括的解析
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24590520
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大谷 郁 金沢大学, 医学系, 講師 (30377410)
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Keywords | オーストラリア 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は、芽胞から毒素産生に至る過程や毒素産生、つまり菌の増殖から芽胞形成に至る一連の流れ、また、その節目に存在すると考えられるシグナルを明らかとすることを目的としている。この目標を達成するため、前年度新たに選定した芽胞形成、毒素産生株であるKZ119株のゲノム配列を、これまで解析に用いてきたstrain13 株と比較した。その結果、KZ119株にはstrain13にない複数の病原性関連遺伝子が存在することが強く示唆された。これまでにstrain13 で明らかとなっている毒素産生調節遺伝子に関しては、同じセットの遺伝子群を保持していることが明らかとなったため、これらの調節遺伝子の変異株ならびに相補株を作製した。さらに、ガス壊疽をおこすために必要と考えられる毒素遺伝子についても変異株、相補株を作製した。細胞培養を用いて病原性を簡易的に確認する系をたちあげ、これらの遺伝子変異株、相補株を用いて、病原性の有無を確認した。また、芽胞形成調節遺伝子virX については、前年度作製した変異株では、何らかの原因により完全長の遺伝子により相補することができなかったため、再度変異株を作製している。病原性発揮のために非常に重要であるvirR/virS 変異株の作製により、strain 13 にはなくKZ119株にある毒素遺伝子delta 毒素は、virR/virS システムによって調節されていないことが明らかとなった。また、KZ 119株はstrain 13 より強い細胞毒性を示したが、その差は培養上清を細胞に添加した時よりも、菌体を添加した時の方が顕著であり、KZ119 株は何らかの未知の因子により病原性を高めている可能性が示唆され、今後の詳細な解析が必要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度の達成度としては、芽胞形成調節遺伝子であるvirX 遺伝子変異株がインタクトな遺伝子を何らかの原因で相補することができず、を新たに作製し直すことになったことをみると遅れている。しかし、病原性を簡易的に確認するために、細胞培養を用いて細胞毒性を確認する実験系を確立した。この細胞培養での確認と動物実験での病原性の確認の結果は、よく一致しており、今後も病原性の簡易チェック法として有用であると考えられる。ガス壊疽関連の発現調節機構の側面からみると、病原性発現に最も重要と考えられるvirR/virS 遺伝子を含む、様々な調節遺伝子の変異株や相補株、また、ガス壊疽発現に重要と考えられる遺伝子の変異株、相補株を作製できたこと、また、細胞培養を用いた細胞毒性の解析が進んだことを考えると、ガス壊疽発現側からみた解析は、十分に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に遅れてしまった、芽胞形成に関連する解析を進める。まず、芽胞形成調節遺伝子であるvirX遺伝子変異株の再構築が最も急がなければいけない課題である。変異株が作製できた後は、芽胞形成性を確認する。また、virX 遺伝子がどのような環境で発現し芽胞を抑制するか、また逆にどのような環境でvirX 遺伝子発現が抑制され芽胞が促進されるかといった点について詳細な解析を行っていく。特に、本菌は傷口に入った時には、急激に増殖、毒素を産生することから、血液成分中の物質を中心に毒素産生を促進する物質を検索していく。 また、これまでにvirX 遺伝子が抑制されるような状態は明らかにできていないが、例えば、毒素産生を増強させる物質は芽胞形成を抑制するのか、といった点を解析していく。 またさらに、細胞に菌を感染させた実験から、KZ119株とstrain13 株では感染させてからの菌の増殖が異なっていたことから、この株の増殖能の違いには芽胞形成と毒素産生の切り替えのヒントが隠されている可能性があり、今後、strain13 とKZ119株の増殖能の違いについても解析していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほとんど予定通りに使用したが、最後まできっちりと使用することができず、2360円は次年度に繰り越すこととした。 25年度からの繰り越し分については、次年度の消耗品費に使用する。 26年度の計画に変更はなく予定通りけんきゅうをすすめて予算を使用する
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Research Products
(3 results)