2013 Fiscal Year Research-status Report
宿主自然免疫応答からの菌の回避に細菌リポ多糖の構造変化が果たす役割
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24590523
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松浦 基博 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (20150089)
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Keywords | 細菌リポ多糖LPS / 自然免疫 / 免疫回避 / 細菌感染 / TLR4 |
Research Abstract |
LPSのアシル基数が減少したサルモネラ変異株の生菌をヒトマクロファージ系U937細胞に感染させる実験で、(1)アシル基数が6個から5個に減少すると炎症性サイトカイン産生誘導活性が大きく低下すること、(2)野生株やアシル基6個の生菌による強い活性も、ヒト細胞のTLR4に対する抗体や拮抗剤で処理した場合は抑制を受けるが、(3)抗TLR2抗体によっては全く抑制を受けないことが分かり、生菌感染の場合にも、フォルマリン死菌体を用いた場合とほぼ同様の結果が得られることが分かった。これらのことから、サルモネラ菌の感染に対してヒトマクロファージ系細胞は菌が持つLPSを優先的に認識してTLR4シグナル伝達系で強く応答するが、TLR2による認識を始めとしてLPS以外の菌体成分に対する認識応答系はさほど働かせていないことが示唆された。従って、LPSのアシル基数を変化させてTLR4を介した宿主の自然免疫応答系を回避することは、感染菌に取って宿主体内における排菌ネットワーク機構をすり抜けて増殖を続けるために、極めて有効な戦略であると考えられることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際の感染時に起こる生体内での反応に迫るために予定していた、培養細胞系での生菌感染実験も順調に進み、フォルマリン死菌体を用いる実験で得られた結果が生菌感染に対する応答にもよく反映されることが明らかになった。期待していたような結果が得られ、生菌感染に対する宿主細胞応答に関する基本的な情報が蓄積しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
サルモネラ変異株の生菌をヒトマクロファージ系培養細胞に感染させ、宿主細胞の貪食効果に対する菌の応答がアシル基数の変化によってどの様な影響を受けるのかを調べる。その際、抗TLR4抗体やTLR4アンタゴニストを作用させたりTLR4アゴニストを作用させたりして、この貪食効果にTLR4刺激伝達系が関与しているかどうかについて明らかにする。また、菌の貪食に関与する可能性が指摘されている宿主細胞の様々な因子についても、これら変異株の貪食に影響を及ぼすものがあるのかどうかを調べると共に宿主細胞による殺菌効果に対する変異株の応答についても検討を加える。更に、生体内での菌のクリアランスに結び付けて説明できる結果を示すことを目指して、そのための実験系の開発についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(B-A)は4,192円となり次年度使用額が生じたことになるが、小額であり予算のほぼ全額を使い切ったと考えている。 次年度使用額として残ったのは小額であり、使用計画に変更を加える必要が生じる程の額ではないと考えている。
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Research Products
(2 results)