2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590528
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
TOMA Claudia 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40325832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 敏彦 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10292848)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細菌 / レプトスピラ |
Research Abstract |
病原性レプトスピラは多くの哺乳動物に感染し、腎尿細管で増殖し尿中へと排出される。ヒトは、この尿との直接的な接触、あるいは尿に汚染された水や土壌との接触により感染する。レプトスピラ症の軽症型の場合は風邪と似た症状でやがて回復するが、重症型(ワイル病)の場合は黄疸、出血、肝・腎臓の障害などの症状がみられ高い死亡率を示す。レプトスピラ症の病態形成のメカニズムはほとんど解明されておらず、病原因子としては溶血毒素や、宿主細胞外マトリックスへの接着に関与している外膜タンパク等の報告がある。また、本菌の宿主細胞への侵入過程は、病態形成の鍵となる重要なステップである。しかしながら、病原性レプトスピラの侵入機構はほとんど理解されてないのが現状である。本研究では、病原性レプトスピラが細胞内へ取り込まれるために必要な病原因子および宿主因子を同定し、病原性レプトスピラの細胞侵入の分子機構を解明することを目的とする。 本年度は、病原性を持つ親株と人工培地にて継代を長期間繰り返し病原性を失った株のマクロファージへの侵入を比較した。人工培地にて継代を繰り返すことによってマクロファージへの侵入の減少が認められたことから、両株のタンパク質の発現プロファイルを解析した。タンパク質の発現の違いからマクロファージへの侵入に関与している因子を推測し、各種遺伝子変異株の細胞侵入性を調べた結果、外膜タンパクをコードする遺伝子に変異を持つ2つの株でマクロファージへの侵入の減少が認められた。そのうちLA3778は、病原性レプトスピラと宿主細胞との相互作用に関与していると報告されてきたが、本研究によってLB216も関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、病原性レプトスピラが細胞内へ取り込まれるために必要な病原因子および宿主因子を同定し、病原性レプトスピラの細胞侵入の分子機構を解明することを目的としている。 本年度は、マクロファージとの相互作用に関わると想定される候補因子を絞りこみ、これらの因子の解析を開始した。重要因子だと思われた因子の特異的抗体を作成し、当該因子の局在を調べた結果外膜タンパクであることを明らかにした。また、各種遺伝子変異株を用いてマクロファージへの侵入を比較し、細胞内取り込みに関与している2つの外膜タンパク(LB216とLA3778)を同定した。 さらに、LB216の組み換えタンパク質を作成・精製し、当該因子が菌と細胞の相互作用を阻止することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、細胞への侵入に関与している因子を同定し、菌体表面に存在することを明らかにした。今後は、プルダウンアッセイによって菌側因子が結合する宿主タンパク質を同定する。さらに、当該因子が標的宿主因子に結合することによって生じる細胞内変化を多面的に解析する。標的分子に関する情報(リン酸化される、ユビチン化される、細胞内局在が変わる等)があれば、当該因子によるそれらへの影響を調べる。また、シャトルベクターに当該因子をクローニングし非病原性レプトスピラ(L. biflexa) に導入することによって、細胞への侵入が上昇するかを調べる。 次に、同定された因子が実際に病態形成に関与しているかを明らかにするために、レプトスピラの野生株および各因子の欠損株のマウス感染実験を行い、1)マウスの生存率、2)腎臓、肝臓、肺等への菌の移行をリアルタイムPCR法で定量化する、3) 各臓器の切片サンプルを染色し、菌の局在や炎症性細胞の浸潤等を観察する。候補因子が病態形成に関与しているならば欠損株で感染したマウスの生存率は野生株で感染したマウスより高いと予想される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは、研究計画の順番に変更があったためである。当初の計画では、本年度は侵入様式の解析を行う予定であったが、本年度で細胞侵入に関与してい重要因子を絞り込むことができたため、菌側因子の解析を先に進めた。従って、一次抗体や蛍光標識されている二次抗体等は次年度に購入する予定である。 次年度使用額は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、消耗品としてはまず、①宿主細胞への侵入様式の解析に必要な一次抗体や蛍光標識されている二次抗体等、②分子の活性化をウエスタンブロットで解析するための各種抗体、HRP結合二次抗体、③細菌培養用培地、培養細胞に必要な培地・ウシ胎児血清等、④、細菌培養用のプラスチッククシャーレ、各種プラスチックチューブ、細胞培養用シャーレ、6ウェル・24ウェルプレート、ピペット等のプラスチック器具類等、⑤PCR用プライマー及び酵素類、プラスミド精製キット、菌を定量するためのリアルタイムPCRキット等の遺伝子解析用試薬類の消耗品等の購入を計画している。 また、途中経過報告を国際学会で行うため、旅費として使用予定している。
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Research Products
(3 results)