2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590534
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
羽田 健 北里大学, 薬学部, 講師 (00348591)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | III型エフェクター / 炎症制御 |
Research Abstract |
本研究はサルモネラの自然免疫回避機構を解明することが目的である。平成24年度はサルモネラの自然免疫回避エフェクターSpvCに注目した。SpvCはリン酸化スレオニンリアーゼ(PTL)活性をもち、感染宿主のmitogen-activated protein kinases(MAPKs)を不活化する。報告者らは、SpvCはサルモネラ感染時に腸管において分泌され、MAPKsを不活化することで炎症を制御し、菌を全身に拡散させる役割を担うことを明らかにした(Cell Microbiol, 2012)。また、マウスを用いたin vivo感染実験により、SpvCによるマウス脾臓内増殖性(全身感染性)にはPTL活性すなわちMAPKsの不活化が関与することを示唆するデータを得た(データ未発表)。 サルモネラが全身感染性を示すにはマクロファージ内で増殖することが重要であることから、まず、サルモネラ野生株またはSpvC変異株をマクロファージ様培養細胞RAW264.7に感染し、細胞内で増殖を比較した。その結果、SpvC変異株の細胞内増殖性は野生株と同程度であった。また、DBA2マウス大腿骨由来の骨髄マクロファージ(BMM)を用いて同様の実験を行ったが、サルモネラ野生株とSpvC欠失株に細胞内増殖性の違いは見られなかった。次にマクロファージ内でSpvCがPTL活性を示すか否かを調べるために、SpvCを発現させたRAW264.7細胞またはBMMを用いて、MAPKsの表現系(炎症性サイトカインの分泌性[p38 MAPK]、細胞増殖性[ERK1/2 MAPK]およびアポトーシス誘導性[JNK MAPK])を調べた。しかしながら、どの表現系もSpvCを発現していない細胞と同程度であった。 以上のことからSpvCによるマウス臓器内増殖性にはマクロファージ内での増殖およびPTL活性は関与しないことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はサルモネラの自然免疫回避エフェクターとして報告されているSpvCの全身感染性における役割を明らかにすることを試みた。実験は交付申請書に記載した研究計画どおりに進んだが、SpvCはマクロファージ内増殖性へには関与せず、またSpvCを発現させたマクロファージにおいてMAPKsの不活化を確認することが出来なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は別のIII型エフェクターSseK1、SseK2およびSseK3の機能解析を行う。SseK1、2および3はそれぞれがアミノ酸相同性を示すタンパク質であり、T3SS-1および-2から分泌されるIII型エフェクターであることが知られている。申請者らは、少なくともSseK1およびK2の欠失株接種マウスでは感染24時間後では、野生株接種群に比べて盲腸に強い萎縮(炎症の指標)が見られたことから、これら2つのエフェクターが感染局所における炎症の抑制に関わることを明らかにした(データ未発表)。また感染48時間後では、これら2つの欠失株はマウス脾臓内増殖能が野生株に比べて低下することを明らかとした(データ未発表)。このことからSseK1および2は自然免疫回避エフェクターであることが示唆された。また、SseK3もSseK1-2と高いアミノ酸相同性をもつことから同様の機能を持つことが予想される。SseK1-3 はそれぞれ腸管病原性大腸菌(EPEC)のNleBエフェクタータンパク質とアミノ酸相同性をもつ。NleBはNF-κB経路を抑制する機能をもつことが報告されている。そこでサルモネラにおいてもSseK1-3エフェクターがNF-κB経路を抑制することで自然免疫を回避するという仮説を立て、以下の実験を行う。まず、SseK1-3がNF-κB経路を抑制するか否かを明らかにするために、SseK1、2および3各タンパク質をヒト子宮頸癌由来上皮細胞HeLaにトランスフェクションし、デュアルルシフェラーゼアッセイによりSseK1-3がNF-κBの活性化を抑制するか否かを調べる。次に、SseK1-3がNF-κB経路のどの宿主因子と結合し、シグナル伝達を阻害するのかを調べるために、SseK1-3に結合する宿主因子を同定する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
|