2012 Fiscal Year Research-status Report
ウエルシュ菌α毒素の新規受容体探索:ガングリオシドとの関係
Project/Area Number |
24590542
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
小田 真隆 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (00412403)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ウエルシュ菌 / α毒素 / GM1a / ノックアウトマウス / サイトカイン |
Research Abstract |
ウエルシュ菌α毒素によるガス壊疽や様々な疾患に対する予防及び治療薬の開発を目的とし、未だ明らかにされていないα毒素の受容体探索を行った。我々は、糖脂質糖鎖固定化アレイを用いた研究により、α毒素は、ガングリオシドGM1aに結合すると示唆される結果を得てきた。本年度の研究では共同研究者である名古屋大学の古川鋼一先生より供与していただいたGM1aの合成酵素をノックアウトしたマウスから5%のチオグリコール酸培地で誘導した腹腔マクロファージを用い、α毒素処理マクロファージからのTNF-α遊離量についてコントロール細胞(GM1a発現マウス由来マクロファージ)と比較解析を行った。その結果、毒素によるTNF-αの遊離は、GM1aを欠損した細胞において少量であった。また、GM1a欠損細胞へのCy3-ラベルα毒素の結合量も著しく低いことが判明した。 さらに、我々は、α毒素をGM1a欠損マウス、及びコントロールマウスに尾静脈内投与した時の致死作用、及び血清サイトカイン量についてフローサイトミックスを用いて解析した。その結果、コントロールマウスでは、α毒素投与後約12時間以内にすべてのマウス(1群5匹)が死亡したが、GM1a欠損マウスでは、約35-40時間まで致死時間の延長が見られた。また、毒素を尾静脈より投与したGM1a欠損マウスからの炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6)の遊離量は、コントロールマウスと比較して低値であった。 従って、α毒素の受容体としてGM1aが深く関与していることが判明した。しかしながら、GM1a欠損マウスでも毒素による致死作用は抑制できなかったことから、GM1a以外の受容体も毒性発現に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ガングリオシドGM1aのα毒素受容体としての可能性について詳細解析を行うため、名古屋大学医学部の古川鋼一先生より供与いただいたガングリオシドGM1a欠損マウスを用い、α毒素の毒性(活性酸素産生、サイトカイン産生)に対する反応を解析した。その結果、ガングリオシドGM1a欠損マウスに対してα毒素の毒性が現れにくいことが判明し、α毒素の毒性発現にガングリオシドGM1aが深く関与していることが世界で初めて明らかとなった。この結果は、アメリカ生化学会の学会誌であるJournal of Biological Chemistryに報告することができたため、本研究課題は、順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を遂行することにより、α毒素の受容体がガングリオシドGM1aであることを明らかにした。また、これまでの我々の研究でα毒素による病原性発現(活性酸素産生、サイトカイン産生)にチロシンキナーゼ関連受容体であるTrkAが密接に関与していることを報告してきた。従って、今後の研究では、TrkAとガングリオシドGM1aがどのように細胞膜上で存在し、毒素処理によりどのような挙動を示すのかについて解析を進める予定である。 また、α毒素は、ボツリヌス菌等が有するガングリオシド結合モチーフを有していることから、その領域のアミノ酸を点変異法を用いて変異させ、α毒素のどの部位(アミノ酸残基)がガングリオシドGM1aとの親和性に関与しているのかを表面プラズモン解析装置(BIACORE3000)を用いて測定する予定である。 加えて、α毒素とガングリオシドとの共結晶構造は、未だ明らかにされていないため、複合体の結晶化を試みる。その際、ガングリオシドは結晶母液に不溶性であるため、ガングリオシドGM1aの糖鎖部位のみとの結晶化を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①α毒素処理細胞の細胞膜内におけるリン脂質の挙動解析 これまで、研究グループでは、α毒素によるA549細胞(ヒト肺癌由来細胞)からのIL-8遊離メカニズムについて解析を行い、多くの新しい知見を得てきた。そこで、今回もA549細胞を用い、細胞膜リン脂質の挙動解析を行う。A549細胞をBODIPYでラベルされたホスファチジルコリンやスフィンゴミエリンで染色後、α毒素でインキュベーションし、細胞膜上での各々のリン脂質の挙動について共焦点レーザー顕微鏡(現有設備:Nikon A1R)を用いてタイムラプス解析を行う。 ②α毒素処理細胞の細胞膜上におけるガングリオシドGM1a/TrkAの挙動解析 A549細胞をBODIPYでラベルされたガングリオシドGM1aで染色後、α毒素でインキュベーションし、抗TrkA抗体を用いて蛍光抗体染色後、細胞膜上での各々の挙動について共焦点レーザー顕微鏡を用いてタイムラプス解析を行う。さらに、ガングリオシドGM1/TrkAの細胞膜上の挙動変化とリン脂質代謝物、すなわち、ジアシルグリセロール(ホスファチジルコリン代謝物)やセラミド(スフィンゴミエリン代謝物)の挙動変化の関連性について検討する。
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[Journal Article] Clostridium perfringens alpha-toxin recognizes the GM1a/TrkA complex.2012
Author(s)
Oda, M., Kabura, M., Takagishi, T., Suzue, A., Tominaga, K., Urano, S., Nagahama, M., Kobayashi, K., Furukawa, K., Furukawa, K., Sakurai, J.
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Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 287
Pages: 33070-33079
Peer Reviewed
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[Journal Article] Clostridium perfringens alpha-toxin induces the release of IL-8 through a dual pathway via TrkA in A549 cells.2012
Author(s)
Oda, M., Shiihara, R., Ohmae, Y., Kabura, M., Takagishi, T, Kobayashi, K., Nagahama, M., Inoue, M., Abe, T., Setsu, K., Sakurai, J.
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Journal Title
Biophys. Biochim. Acta - Molecular Basis of Disease
Volume: 1822
Pages: 1581-1589
Peer Reviewed
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