2013 Fiscal Year Research-status Report
O157ゲノムからのIS切り出しを促進する新規タンパク質IEEの機能解析
Project/Area Number |
24590543
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
楠本 正博 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所 細菌・寄生虫研究領域, 主任研究員 (40548210)
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / O157 / IEE / プロファージ様エレメント / DNAマイクロアレイ |
Research Abstract |
IEEは腸管出血性大腸菌(EHEC)においてISの切り出しおよびISを介したゲノムの多様化に関与する因子であり、その生物学的な機能や活性の種類の解明に向けて、以下のような解析を行った。 1. 昨年度のDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析の結果、EHEC O157においてIEEの過剰発現による遺伝子発現の変動はほとんど見られなかった。そこで今年度、染色体上のiee遺伝子を欠失させたO157について同様に確認したところIEEの影響がよりクリアになり、DNA複製に関与する一本鎖DNA結合タンパク質(ssb)や、dinI、recN、recAなどDNAダメージ応答に関与する因子の発現がIEE過剰発現により増加することが新たに判明した。 2. IEEホモログは細菌に広く存在するが、これまでゲノムが解読されiee遺伝子を保有することが判明した大腸菌のほぼすべてがEHECであった。そこで様々な大腸菌について調査したところ、毒素原生大腸菌(ETEC)の一部が系統特異的にiee遺伝子を保有することが明らかになった。iee遺伝子保有ETECでは本遺伝子周辺の塩基配列が高度に保存され、その構造はEHECが保有する約90 kbのプロファージ様エレメントSpLE1と極めて類似していた。多くのプロファージはintegrase遺伝子の下流にexcisionase遺伝子を持ち、excisionaseがプロファージの切り出しに関与するが、本SpLE1様エレメントではintegrase遺伝子の下流に(excisionase遺伝子とは長さも配列も大きく異なる)iee遺伝子が存在していた。 以上の検討により、IEEはDNAの複製やダメージ応答に関与する遺伝子の発現に影響し、さらにプロファージ様エレメントの切り出しにも関与する可能性があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IEEはゲノムからのISの切り出しを促進する因子として同定され、ISを介してゲノムの多様化にも関与することが判明した因子であるが、他の機能や生物学的な意義は未だに不明のままである。平成25年度は染色体上のiee遺伝子を欠失させたO157を用いた網羅的な遺伝子発現解析により、IEEがDNAの複製やダメージ応答に関与する遺伝子の発現に影響することが明らかになった。さらに、IEEが自身の遺伝子を保有するプロファージ様エレメントの切り出しにも関与する可能性があることが判明するなど、本研究の目的であるIEEの生物学的な機能や活性の種類の解明に向けて、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、平成26年度はIS切り出しに重要なアミノ酸領域を変異させたIEEを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行う予定であった。しかし平成25年度までの検討により、IEEが菌の増殖、DNAの複製やダメージ応答に関与すること、さらにiee遺伝子を保有するプロファージ様エレメントの切り出しにも関与する可能性のあることなど、その具体的な機能が見えつつある。そこで当初の計画を変更し、以下の検討を行う。 1. リアルタイムRT-PCRを用いて、DNAの複製やダメージ応答に関与する遺伝子の発現に対するIEEの関与を調査する。 2. プロファージ様エレメントSpLE1の切り出しに対するIEEの関与を調査する。 これにより解析手法が変更となるが、当初の計画にあるマイクロアレイ解析費用をクローニング試薬費用に充てることで実施可能と考えられる。
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