2013 Fiscal Year Research-status Report
単鎖T細胞受容体とMHC-I単鎖三量体を用いたHTLV-I特異的癌治療法の開発
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24590547
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大橋 貴 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (10282774)
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Keywords | HTLV-I / ATL / Tax / CTL / T細胞受容体 / single chain trimer / MHC-I |
Research Abstract |
前年度の研究で単離したラット由来HTLV-I Tax180-188エピトープ特異的CD8陽性CTL細胞株(4O1/C8細胞)が発現するT細胞受容体(TCR)α鎖およびβ鎖の全長遺伝子をP2A配列で結合し、レンチウイルスベクターに組み込んで新たな発現ベクターを構築した。本レンチウイルスベクターはヒトT細胞株やラットCD8陽性T細胞株に感染し、ラットTCRαβ複合体特異的抗体によって認識される蛋白を発現することが確認されたが、Tax180-188特異的テトラマーには認識されなかった。この結果は、前年度のレトロウイルスベクター用いた場合と同様であり、TCR複合体のMHC-I/ペプチド複合体への親和性が低いことが、テトラマーによる認識の障害となっている可能性が考えられた。レンチウイルスベクターによりTCRの発現効率は向上したが、MHC-I複合体との親和性を向上させる改良の必要性が示唆された。 また、既に樹立しているTax180-188提示型MHC-I単鎖三量体発現ワクシニアウイルスベクターを用いて、4O1/C8細胞との併用効果についてCTL耐性HTLV-I感染細胞株(FPM1V.EFGFP/8R細胞)を用いて検討した。その結果、4O1/C8細胞は単独ではFPM1V.EFGFP/8R細胞に対する細胞傷害活性を発揮出来なかったが、Tax180-188提示型MHC-I単鎖三量体発現ワクシニアウイルスベクターとの併用により、IFN-γ産生を伴ったFPM1V.EFGFP/8R細胞の細胞傷害を誘導することが確認された。この細胞傷害の程度は、ワクシニアウイルス単独の腫瘍溶解活性よりも有意に高かったことから、CTLの活性化がHTLV-I感染細胞の傷害を増強したことが示され、本ワクシニアウイルスとCTLの併用がCTLからエスケープ可能なHTLV-I感染細胞の排除に役立つ可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単鎖TCRに関しては、複数の発現ベクターを構築し導入効率の向上は進んでいるものの、機能解析が完了しておらず、若干の進展の遅れと評価される。一方、Tax180-188提示型MHC-I単鎖三量体発現ワクシニアウイルスのHTLV-I感染細胞に対する効果に関しては、次年度以降に予定されていたHTLV-I感染細胞に対するCTLとの併用効果の解析を一部行い、論文報告を完了したことから、当初の計画以上の進展と評価される。これらを総合するとおおむね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に未完了であった単鎖TCRの機能解析を早急に完了する。構築した膜型単鎖TCR発現レンチウイルスベクターを用いて、Tax特異性の無いT細胞株や初代培養T細胞に膜型単鎖TCRを発現させるとともに、HTLV-I感染細胞を標的にした細胞傷害活性を評価し、膜型単鎖TCRのHTLV-I特異性を明らかにする。さらに、TCRαβ蛋白の発現形態の改良や、内在性TCRの発現抑制等の工夫を行い、単鎖TCRのMHC-I複合体への親和性向上を図る。また、Tax180-188提示型MHC-I単鎖三量体発現ワクシニアウイルスに関しては、in vitroで明らかに出来たTax特異的CTLとの併用効果についてラットHTLV-I感染モデルを用いたin vivoでの解析を進め、抗HTLV-I治療への応用の可能性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
T細胞受容体の機能解析に遅れが生じ、そのために必要な抗体や実験動物の購入が次年度に延期されたため。 当該年度中に実行できなかった研究を次年度に速やかに遂行するための経費に使用する。
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