2014 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスがヒトに適応するメカニズムの解明
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24590549
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 晋弥 東京大学, 医科学研究所, 助教 (90466839)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | インフルエンザ / 適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、H5N1インフルエンザウイルスが、どのような変異を獲得するとヒトで効率よく増殖・伝播するのかを明らかにし、さらに、ヒトに適応し季節性のウイルスとなる場合、どのような変化が重要であるか解明することを目的とする。 目的達成のために、H5N1ウイルスが正常ヒト気管支細胞(NHBE)に適応する過程で獲得した変異について解析を行った。その結果、とりわけ、ヘマグルチニン(HA)の変異がNHBE細胞における効率のよい増殖性に寄与し、その多くは、ウイルスの熱安定性やpH依存的なHA蛋白質の膜融合能に関与しうることを明らかにした。鳥類からヒト間で増殖・伝播するようになるには熱安定性や膜融合能の変化が重要であり、ヒトへの適応に関わる変化であると考えられた。また、ウイルスのポリメラーゼ複合体の構成蛋白質であるPAやPB2、マトリックス蛋白質のMにおける変異がヒト呼吸器上皮細胞での増殖性に関与していることを明らかにした。 また、NHBE馴化変異ウイルスにみられるHAの変異を有するウイルスは、親株と比較して、肺胞上皮細胞では顕著な差がないが、より上部の呼吸器上皮細胞において、親株に比べよく増殖するにも関わらず、細胞傷害活性が低いといった特徴を有していた。これは季節性ウイルスの主要な増殖部位である上部気道で安定して増える何かしらの適応が起きていると推測される。興味深いことに、2013年の中国のヒト分離H7N9ウイルスにおいても同一の変異が報告されていることからも、ヒトへの適応に重要であると考えられる。 本研究では、鳥インフルエンザウイルスがヒトの呼吸器上皮細胞の適応する過程の一端を示している可能性が考えられ、ヒト以外の動物由来のウイルスがヒトで流行し、季節性のウイルスへと変化していくメカニズムの一部の理解に貢献できたと考える。
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Research Products
(2 results)