2012 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫を抑制するウイルス蛋白質の構造と作用機構の解析
Project/Area Number |
24590554
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂口 剛正 広島大学, その他の研究科, 教授 (70196070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 康祐 広島大学, その他の研究科, その他 (60571255)
入江 崇 広島大学, その他の研究科, 准教授 (70419498)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ウイルス / アクセサリー蛋白質 / 自然免疫 / インターフェロン / 蛋白質結晶化 / 蛋白質構造解析 / 共結晶化 |
Research Abstract |
センダイウイルスのアクセサリー蛋白質(V, C)には自然免疫を抑制する機能がある。このためには、V蛋白質はインターフェロン関連転写因子IRF3と結合すること、C蛋白質はインターフェロン関連転写因子STAT1と結合することが重要であると考えられている。これらのアクセサリー蛋白質の結晶化と立体構造の解明を行い、その相互作用の分子機構を解析し、アクセサリー蛋白質による自然免疫阻害の構造学的な分子基盤を明らかにすることを本研究の目的としている。 平成24年度には、C蛋白質とSTAT1の結合に着目し、両者が結合するための最小のドメインを規定することをはじめた。全長204アミノ酸残基のC蛋白質のうち、C末端106アミノ酸残基(Y3蛋白質と呼ばれる)と全長750アミノ酸残基のSTAT1のN末端ドメイン(1-126アミノ酸残基、STAT1N)が結合に必要な領域と判明した。Y3蛋白質を大腸菌で発現・精製したが、おそらく構造が不安定なため結晶を得ることはできなかった。一方、Y3蛋白質とSTAT1Nを含む蛋白質溶液を調製し、シッティング蒸気拡散法で共結晶化を試みたところ、六方晶系の結晶を得ることができた。その結晶をSDS-PAGEで解析して、Y3蛋白質とSTAT1Nの複合体であることを確認した。さらにCuKα(大阪大学)を利用してX線回析実験を行い、分解能3.4Åの解析データを得て、STAT1Nの結晶構造をスタートモデルとして用いた分子置換法により複合体の構造を決定することができた。 得られた立体構造の正当性を変異蛋白質を用いた解析で確認するために、一連のC変異体とSTAT1との結合実験を行い、一方でこれらのC変異体がSTAT1が関与するJak-Stat経路を阻害するかどうかと関連づける研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
蛋白質の結晶化が成功するかどうかは予測困難であった。C蛋白質あるいはそのSTAT1結合に関わる部分(Y3蛋白質)を大腸菌で発現させて精製しても結晶を得ることができなかった。しかし、Y3蛋白質とSTAT1の結合に関わるSTAT1N蛋白質を共存させることで、両者が結合した状態の共結晶を得ることができた。しかもその結晶はX線解析に使用可能な質の結晶であった。このことは僥倖であり、結晶化が失敗することを想定して、その際の方策を記していた当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、昨年度得られたY3蛋白質とSTAT1Nの共結晶の構造について研究を進める。大型放射光施設 SPring-8(理化学研究所)を利用して、さらに高分解能の構造を取得する。これによって結合に必須と判明したアミノ酸に点変異を導入して結合を調べ、立体構造を確認する。また、一連のC変異体とSTAT1蛋白質との結合と、C変異体がJak-Stat経路を阻害する活性との関連について研究を完成させる。 また、STAT1とある程度構造に共通性のある、STAT2, STAT3, STAT4のN末端ドメインとC蛋白質との共結晶化を行う。あるいは各精製蛋白質とC蛋白質の結合をBiacoreを利用して解析し、両蛋白質の結合面を形成するアミノ酸残基の違いと結合の強さを比較する。 以上の研究からC蛋白質とSTAT1の結合様式を詳細に解明する。最終的には、C蛋白質とSTAT1の結合によって自然免疫発動に重要なJak-Stat経路が阻害される分子機構を解明することを目標とする。従来より、C蛋白質とSTAT1との結合により、STAT1とヘテロダイマーを形成するSTAT2のリン酸化が阻害されることが知られている。C蛋白質がSTAT1に結合することで、実際にどのような分子機構によってSTAT2のリン酸化が阻害されるのかを明らかにする。 並行して、もうひとつのウイルスアクセサリー蛋白質であるV蛋白質と、転写因子IRF3の結合について、構造学的な解析を目指して結合ドメインの同定、蛋白質発現、蛋白質結晶の作製を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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