2012 Fiscal Year Research-status Report
HIV-1複製制御に係わる宿主要因子の解析とHIV-1治療薬の探索
Project/Area Number |
24590557
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
高久 洋 千葉工業大学, 工学部, 教授 (50101267)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | APOBEC3G / HSP70 / HIV-1 / HIV-1 vif |
Research Abstract |
現在求められている抗HIV薬は,薬剤の副作用、あるいは薬剤耐性HIVの発生と蔓延による治療効果の低減を考えると新たな治療法の開発が切望される。AIDSの原因ウイルスであるHIV-1の増殖・複製は宿主因子由来たんぱく質により正または負に制御されている.また、宿主側因子による宿主防御機構も考えられる。従って既存の抗ウイルス剤とは全く異なる作用機序を有するHIV-1治療薬の開発が望まれている. 本研究ではHIV-1増殖を制御する宿主要因や宿主側の機能変化ついて様々な観点から分子レベルでの解析を行う.特に細胞内で多彩な機能を発揮する宿主因子・熱ショックタンパク質によるウイルス複製制御機構を明らかにし、HIV-1による感染・増殖を是正する方策を探る. HIV-1粒子に取り込まれることで,HIV-1複製を強力に抑制する宿主因子としてAPOBE3G(A3G)が同定された.しかし,HIV-1はA3Gに拮抗するVifタンパク質を有し、 A3Gをポリユビキチン化し、26Sプロテアソームにより分解する.この問題を解決するため分子シャペロン、Hsp70がHIV-1粒子に取り込まれるという報告から,Vif依存的なA3Gの分解をHsp70が抑制できるのではないかという仮説の基,検討を行った.はじめに、293T細胞中にHsp70を強発現するとHsp70発現量依存的にA3G発現量が増加した.また,vif遺伝子を欠損させたpNL4-3ΔVifを導入した293T細胞では,Hsp70はA3Gの発現に対して影響しなかった。一方、Hsp70を強発現させた場合,Hsp70発現量依存的にA3Gの発現量が回復したことから,Hsp70はA3Gの安定化に寄与する.さらにHsp70はVifのN末端及びAC3Gの128-130番残基を含む領域 に結合することでA3GとVifの結合を阻害し,VifによるA3Gの分解が抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目的達成度 (1)宿主細胞内におけるHsp70-AOPBEC3G(A3G)またはHIV-1vifとの相互作用を確認することが出来た。即ち、Hsp70はVifのN末端及びAC3Gの128-130番残基を含む領域 に結合することでA3GとVifの結合を阻害し,VifによるA3Gの分解が抑制された。 (2)HIV-1感染細胞でのHIV-1 vif によるAPOBEC3G分解抑制にHsp70が関与していることを明らかにした。pNL4-3をtransfection した293T細胞中にHsp70を強発現するとHsp70発現量依存的にA3G発現量が増加した.また,vif遺伝子を欠損させたHIV-1感染性分子クローン発現プラスミドpNL4-3ΔVifをtransfectionした293T細胞では,Hsp70はAPOBEC3Gの発現に対して影響しなかったことから、HIV-1 vif によるAPOBEC3G分解を内依存性Hsp70が制御していた。 (3)Hsp70knock-down 細胞系ではAPOBEC3Gの安定性に対して内在性Hsp70の影響を受けていることを見出した。実際に内在性Hsp70 knock-down 細胞系ではAPOBEC3Gの発現は消失し、ウイルス産生量が著しく増加したことからも、内在性Hsp70 がHIV-1 vif依存的 APOBEC3G分解の抑制に寄与していた。 以上平成24年度の研究目的はほぼ達成でき、一部平成25年度の研究計画を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を遂行するのにあたり、計画した具体的な研究項目の内、平成24年度は(1)宿主細胞内におけるHsp70-AOPBEC3G(A3G)またはHIV-1vifとの相互作用を確認することが出来た。2)HIV-1感染細胞でのHIV-1 vif によるAPOBEC3G分解抑制にHsp70が関与していることを明らかにした。3)Hsp70knock-down 細胞系ではHIV-1 vif によるAPOBEC3G分解に対して内在性Hsp70が関与していることを見出した。 平成25年度以降は(1)内在性APOBEC3G発現T細胞におけるHsp70によるHIV-1 Vif依存的APOBEC3G分解抑制機序を解析する.(2)HIV-1感染細胞でのHsp70によるAPOBEC3G依存的HIV-1複製制御機構の解明。(3)エイズ治療に対する新薬としてのHsp70発現誘導低分子化合物の探索とその抗HIV-1活性の評価である。 以上の研究を遂行することでHIV-1増殖・複製に対して、未だその機能が明らかにされていない分子シャペロンであるHsp70による HIV-1複製制御の分子メカニズムを明らかにする。そしてさまざまな角度から網羅的かつ分子レベルでの解析を行い、Hsp70発現誘導化合物の開発に展開するための研究基盤の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は千葉工業大学・生命環境科学科とハイテクリサーチセンターで実施いたします。主な研究の材料は培養細胞で行います。研究遂行に必要な培養施設・設備(P2,3),分子生物的な解析装置など実施場所にすでに備わっています。 経費の主な用途は消耗品です。培地、抗生物質、ウシ血清、抗体試薬や培養フラスコ、ディッシュ、ピペット等のプラスチック器具、ガラス器具、免疫染色用の試薬、その他一般生化学試薬類の購入が必要です。また、研究補助員費、研究成果を学会にて報告する経費として旅費および論文発表の際の諸経費を計上しています。
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Research Products
(5 results)