2013 Fiscal Year Research-status Report
HIV-1複製制御に係わる宿主要因子の解析とHIV-1治療薬の探索
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24590557
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
高久 洋 千葉工業大学, 工学部, 教授 (50101267)
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Keywords | APOBEC3G / HSP70 / HVV-1 / HIV-1 Vif / PGA1 / non-permissive cells / MAGI cells |
Research Abstract |
AIDSの原因ウイルスであるHIV-1の増殖・複製は宿主因子由来たんぱく質により正または負に制御されている.また、宿主側因子による宿主防御機構も考えられる。従って既存の抗ウイルス剤とは全く異なる作用機序を有するHIV-1治療薬の開発には、ウイルス複製を詳細に解明し、HIV-1複製を負に制御する新たな因子を同定する必要がある. 本研究では培養細胞によるHIV-1 感染・増殖系を活用して、HIV-1増殖を制御する宿主要因や宿主側の機能変化ついて様々な観点から分子レベルでの解析を行うことである.特に細胞内で多彩な機能を発揮する宿主因子・熱ショックタンパク質によるウイルス複製制御機構を明らかにし、HIV-1による感染・増殖を是正する方策を探る. 平成24年度において、Hsp70がVifによるAPOBEC3G(APO3G)の分解を制御することで, HIV-1の感染性が抑制されることを明らかにした.平成25年度はHsp70によるAPO3G依存的なHIV-1感染抑制効果および内在性APO3G発現T細胞におけるVifのAPO3G分解に対するHsp70による分解抑制効果の解析を行った.はじめに、APOC3Gの発現およびHIV-1粒子内へのAPO3Gの取り込みを確認したところHsp70はHIV-1粒子へのAPO3Gの取り込みを促進する機能を有していることが示唆された.また、作製したHIV-1の感染性をMAGI assayにより評価した結果, Hsp70はAPO3G依存的にHIV-1感染性を抑制することを明らかにした.さらに、内在的にAPO3Gを発現している細胞においても Hsp70はVifによるAPO3G分解を抑制することが確認された。平成24、25年度の結果から、宿主因子Hsp70はHIV-1感染細胞でもAPO3Gの分解を抑制し、APO3G のHIV-1粒子への取り込みを促進することで、HIV-1の感染性が著しく減弱することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究目的達成度 1)HIV-1感染細胞内のVifによるAPOBEC3Gの分解がHsp70により抑制され、HIV-1粒子へのAPOBEC3Gの取り込みが増加していることを明らかにした。即ち、 NL4-3ΔVif発現細胞 (Vif非存在下) においてはHsp70発現によりAPOBEC3G発現には影響がなかったのに対し,NL4-3発現細胞 (Vif存在下) においてはHsp70発現量依存的にAPOBEC3Gの発現が増加していた。また、NL4-3ではHsp70発現量依存的に HIV-1粒子へのAPOBEC3Gの取り込みが増加していた。これは細胞内のVifによるAPOBEC3Gの分解がHsp70により抑制されると共に、Hsp70はHIV-1粒子へのAPOBEC3Gの取り込みを促進するはたらきを有している。 2)Hsp70はAPOBEC3G依存的にHIV-1の感染性を抑制することを明らかにした。MAGI細胞に作製したHIV-1を感染させ,感染2日後に TCID50を算出した。その結果,APOBEC3G発現下においてHsp70発現量依存的にHIV-1の感染性を抑制した。この結果は,HIV-1粒子への APOBEC3Gの取り込み量に相関していることから,Hsp70はAPOBEC3G依存的にHIV-1の感染性を抑制することが示された。 3)内在的にAPOBEC3Gを発現しているnon-permissive細胞下でもHsp70によるVifのAPOBEC3G分解抑制が確認できた。即ちVif-V5発現下においてはFLAG-Hsp70を発現させた場合においてAPOBEC3Gの発現が増加したことから,non-permissive細胞においてもHsp70はVifによるAPOBEC3G分解を抑制することが明らかとなった。 以上平成25年度の研究目的はほぼ達成でき、一部平成26年度の研究計画を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を遂行するのにあたり、計画した具体的な研究項目の内、平成24年度から25年度では(1)宿主細胞内におけるHsp70-AOPBEC3G(APO3G)またはHIV-1vifとの相互作用を確認することが出来た。2)HIV-1感染細胞でのHIV-1 vif によるAPOBEC3G分解抑制にHsp70が関与していることを明らかにした。3)Hsp70knock-down 細胞系ではHIV-1 vif によるAPOBEC3G分解に対して内在性Hsp70が関与していることを見出した。4)HIV-1感染細胞内のVifによるAPOBEC3Gの分解がHsp70により抑制され、HIV-1粒子へのAPOBEC3Gの取り込みが増加していることを明らかにした。5)Hsp70はAPOBEC3G依存的にHIV-1の感染性を抑制することを明らかにした。6)内在的にAPOBEC3Gを発現しているnon-permissive細胞下でもHsp70によるVifのAPOBEC3G分解抑制が確認できた。 最終年度である平成26年度は(1)Hsp70持続発現H9細胞でのHIV-1複製抑制効果、(2)エイズ治療に対する新薬としてのHsp70発現誘導低分子化合物の探索とその抗HIV-1活性の評価を遂行する。また、最終年度であるので総括してまとめる。 以上の研究を遂行することでHIV-1増殖・複製に対して、未だその機能が明らかにされていない分子シャペロンであるHsp70による HIV-1複製制御の分子メカニズムを明らかにする。そしてさまざまな角度から網羅的かつ分子レベルでの解析を行い、Hsp70発現誘導化合物の開発に展開するための研究基盤の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は主に細胞系に目的タンパク発現プラスミドを導入し、抗体試薬を用いて作用機序の解明を進め、特に抗体試薬等は常備している試薬を使用したことから、予算的に余裕ができました。しかし、次年度はHIV-1感染細胞系の実験が主体になりHIV-1、p24抗体試薬、メカニズム解明のためのレンチウイルスshRNA発現系の作成等に当初の計画よりも予算が掛かることから、平成24年度の予算を25年度に使用する計画を立てました。また、当該年度の究計画を進めるために研究補助員よる実験の補助時間の超過が予測されたためであります。 25年度はHIV-1感染細胞系の実験が主体になりHIV-1、p24抗体試薬、メカニズム解明のためのレンチウイルスshRNA発現系の作成等に、平成24年度の予算を25年度に使用する計画を立てました。研究補助員の実験補助時間の超過に対してのアルバイト代金の支払いにも使用する計画を立てました。
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