2013 Fiscal Year Research-status Report
神経軸索伸長阻害因子による自己免疫疾患の新たな制御機構の解明
Project/Area Number |
24590572
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
乾 匡範 東北大学, 加齢医学研究所, 講師 (80443985)
|
Keywords | 免疫制御 / 自己免疫疾患 |
Research Abstract |
抗体産生細胞であるB細胞の自己寛容機構が破綻すると病原性自己抗体の産生が誘導され,全身性エリテマトーデスなど様々な自己免疫疾患の発症につながる.自己のMHC class Iを認識する免疫制御受容体PirBは自己抗体の産生を制御することで自己免疫疾患の発症を抑制し,B細胞の自己寛容の成立・維持に必須の役割を果たしているが,PirBの新規なリガンドとして神経軸索伸長阻害因子であるNogo/MAG/OMgpが報告されるなど,これら受容体-リガンドによる新規な免疫制御ネットワークが興味深い.本研究では,これら分子群によるB細胞の自己寛容の制御機構を明らかにするため,各種遺伝子欠損マウスを用いてB細胞の分化・機能における役割を解析した.その結果,Nogoが骨髄B細胞や腹腔B-1細胞の分化・生存,さらに胚中心B細胞の活性化を負に制御している可能性を明らかにした.さらにNogo/MAG/OMgpの受容体であるNgR1の免疫細胞での発現を確認し,PirB非依存的なB細胞寛容誘導機構の存在を調査するためNgR1遺伝子欠損マウスにおけるB細胞の機能解析を行ったが,野生型マウスと比較して骨髄や脾臓,腹腔B細胞の分化・生存に有意な違いを認めることはできなかった.このように,NogoはNgR1ではなくPirBを介してB細胞寛容誘導に寄与している可能性が考えられる.自己免疫疾患の発症制御における役割は依然明らかではないが,NogoはB細胞による抗体産生を負に調節することが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫制御機構,特に自己抗体の産生と自己免疫疾患の発症機序に着目し, Nogo/MAG/OMgpおよびその受容体であるPirBやNgR1のB細胞の自己寛容の成立・維持における役割の検討を行った.Nogo遺伝子欠損マウスの解析において,Nogoが胚中心の形成制御に重要な役割を果たすこと,さらにB細胞による抗体産生を負に調節する可能性を明らかにした.一方,NgR1遺伝子欠損マウスのB細胞分化・生存に明らかな異常は観察されず,これら受容体-リガンドを介する免疫制御ネットワークによる自己寛容維持機構についてさらなる解析が必要である.
|
Strategy for Future Research Activity |
Nogo遺伝子欠損マウスの解析よりNogoが胚中心形成や抗体産生を負に制御することが示唆された.しかしNogo単独の異常では明らかな自己免疫疾患の症状を呈さないことから,現在,自己免疫疾患自然発症モデルマウスと交配中であり,自己免疫疾患に及ぼす影響を明らかにする.さらに,Nogo/MAG/OMgpや NgR1, PirBによるB細胞制御の分子機序を解明する.
|