2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590574
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳井 秀元 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (70431765)
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Keywords | 自然免疫系 / 核酸認識受容体 / 感染 / ウイルス / 細菌 / 病原体 |
Research Abstract |
ウイルスや細菌など、病原体の感染に際し、病原体由来の核酸は自然免疫受容体によって認識され、免疫応答を強く活性化することが知られている。この応答は感染防御に必須である一方、過度の免疫応答の活性化は、アレルギーや自己免疫疾患などの病態の増悪に寄与すると考えられている。そのため、核酸がどのように認識され、どのような免疫応答を活性化するのか、その詳細を明らかにしていくことはこれら疾患の制御法の確立という観点から重要であると考えられる。 我々は、病原体由来核酸を模した核酸アナログを用い、この核酸アナログと結合するタンパクのスクリーニングから、核酸の認識に関与すると思われる候補分子2種類(Nucleic acid sensor 1 (NAS1) 及び NAS2)を同定した。平成24年度においては、この2つの分子についてコンディショナルノックアウトマウスを作製し、これら分子の核酸刺激による応答への関与を検討した。その結果、NAS1について、骨髄由来樹状細胞において、B-DNA刺激、TLR9刺激時のI型IFNやIL-12p40の産生が顕著に減弱することが明らかとなった。一方で、このような異常はNAS2欠損マウス由来細胞では検出されなかった。そこでNAS1に着眼し、今後の解析を進めて行くことにした。 平成25年度においては、in vivoにおけるNAS1の重要性について感染実験での検討を行った。その結果、全身性にNAS1を欠損させたマウスにおいては、コントロールの野生型マウスと比較し、単純ヘルペスウイルス感染、リステリア感染時の生存率に顕著な低下が認められた。NAS1はこれら病原体の感染防御に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。現在、さらに、自己免疫疾患モデルマウスとの交配を進めており、引き続き、NAS1のこれら病態における役割について解析すると共に、そのメカニズムの詳細を明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、ウイルスや細菌などの病原体由来核酸によって活性化される自然免疫応答について、我々が見出した核酸結合性分子NAS1、及びNAS2に着眼し、未だ不明な点が多く残されている核酸認識機構や免疫応答について、新規シグナル伝達機構の存在についても視野に入れ、検討を行うものである。本研究課題において必須である、NAS1、NAS2のコンディショナルノックアウトマウスの作製は既に完了しており、また既にそれらマウス由来の細胞を用いて解析を進めているいるところである。そのため、本研究課題に必須の材料については、計画通りに準備することに成功している。また、解析を進めてきた過程において、NAS1はウイルス感染、細菌感染に際して、生体防御の観点から重要な役割を果たしていることも明らかとなってきた。このことは、当初計画の予想通り、NAS1が核酸認識による免疫応答の誘導に重要な役割を担っていることを示唆しているものと考えられる。このことは、in vitroにおける核酸刺激時のサイトカイン産生がNAS1遺伝子欠損細胞において認められることからも支持されるものと考えられる。一方で、NAS2については、NAS1で見られたような異常は認めることが出来ず、NAS2は、核酸認識による免疫応答にはあまり関与していないことが考えられた。このような結果が得られたことは、遺伝子欠損マウスを作製し、検証することができたからこそ明らかになったものである。このようなことから、本研究課題は、一部当初予想とは異なった結果が得られつつも、一定の目的を達成しながら、順調に進展してきているものと考えている。今後、その詳細を明らかにし、論文として成果を公表することを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、研究実施計画に沿って検討を進めていく。特に、NAS1については核酸刺激、ウイルス・細菌感染において脆弱性を示すなどの表現型が得られているので、NAS1について集中的に解析を進めていく。NAS1は主に核内に局在するタンパク質として知られているが、感染、特にHSV-1の感染に伴って細胞質内に移行し、スポットを形成するという予備的知見が得られている。①NAS1がどのように刺激によって、どのようなメカニズムにより核内から細胞質内に移行するのかを明らかにして行きたい。また、②細胞質内に移行したNAS1について、そのスポットがどのような細胞内小器官に該当するのか、小胞体、ミトコンドリア、エンドソーム/リソソームなどを免疫染色により明らかにすると同時に、他のタンパク質と複合体を形成しているのかどうか、その可能性を検討すると同時に、もし複合体を形成するのであれば、どのようなタンパク質群であるのかを明らかにしていきたい。このことは、新しいシグナル伝達経路の解明に繋がる可能性があるのではないかと期待している。③また、現在、NAS1遺伝子欠損マウスと自己免疫疾患モデルマウスとの交配も進めており、自己免疫疾患とNAS1との関わりについても検討を進めていく予定である。④NAS1は樹状細胞において、核酸による免疫応答との関与が見られていたが、最近の解析から、マクロファージなどのミエロイド系細胞群においてはあまりNAS1の関与が見られないといった予備的知見も得られている。細胞種特異的なNAS1の機能がある可能性が考えられるため、どのような細胞でその関与が認められるか、現在、様々な細胞群においてNAS1欠損細胞を作製しており、この点についても明らかにしていきたいと考えている。 これら一連の解析を通して、NAS1の核酸による免疫応答惹起への関与、そのメカニズム、個体レベルでの重要性を明らかにし、論文として公表したいと考えている。
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Research Products
(3 results)