2013 Fiscal Year Research-status Report
インテグリン活性化制御の“乱れ”は免疫感受性を高めるか?
Project/Area Number |
24590579
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
島岡 要 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40281133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 貴行 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30378286)
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Keywords | 免疫 / 炎症 / 接着分子 |
Research Abstract |
本研究ではインテグリンの活性化の制御の異常が引き起こす病態生理の解明をもとに、インテグリンの活性化異常が発症の引き金となっているさまざまな免疫病の新規治療薬を生み出すイノベーションのシーズになるような、インテグリン・シグナル干渉戦略を研究することである。 そのためにまずインテグリン・コンフォメーション変化を詳細に理解するために構造生物学的アプローチを用いて、今までに発表してきた結晶構造解析のデータをもとにして、インテグリンの活性化をアロステリック(間接的に)制御するようなドメイン間相互作用のインターフェースを同定してきた。そのデータをもとにインテグリンの活性化をネガティブに制御する分子内部位を見いだした。この部位は免疫細胞だけでなく、他の血液細胞例えば血小板でも保存されているので、先天的にこの部位に変異のある血小板をもつ患者の病態生理が他のグループより報告されている。また我々が以前発表した遺伝子改変マウスを用いた遺伝子工学的アプローチでも、この部位のインテグリン活性化の生体反応の文脈での重要性が確認されている。 これらの情報はインテグリンの活性化シグナル伝達経路(細胞内の化学的シグナル伝達と細胞外のコンフォメーション・シグナル伝達双方を含む)が、免疫病や血栓止血異常の新規治療薬開発のシーズとなり医療イノベーションをおこす可能性をサポートしている。 またインテグリン活性化制御の基本的メカニズムは免疫系でも血栓止血系でも共通の部分があるので、免疫系の引き起こす炎症反応と血栓止血さらには凝固系とクロストークが存在することを示唆する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インテグリンの活性化異常をより深く理解し、インテグリンが治療標的となり得る免疫病や血栓症、さらには炎症反応と止血・凝固異常双方が病態生理に関わる敗血症性ショックの新規治療薬の開発に寄与できる知的リソースとツールを構築することができた。 リンパ球の主要な細胞接着分子であるインテグリンLFA-1をモデルとして、活性化状態を試験管内だけでなく、生体内でも容易にモニター出来るテクノロジーが、上記の目的を達成するためには不可欠である。そのようなテクノロジーはインテグリン活性状態のバランスの歪みを発見することができ、免疫病の早期発見や病態の進行状況をモニターし、将来的には予後予測にも寄与できる可能性がある。そのようなテクノロジー開発を行った。 まず様々な異なったタンパクの構造やコンフォメーションの違いを認識し得る低分子物質の集合体(ライブラリ-)から出発し、それぞれの低分子物質を事後的に同定できるように、特異的なDNA配列を接続し、アッセイ後に回収した低分子物質をPCRし、DNAシークエンシングすることにより、その特異的DNA配列の情報から低分子の特異的構造をしることが出来る非常にパワフルな研究開発・新薬開発基礎システムを使用することができた。このシステムのDNA特異的配列はDNAバーコードと呼ばれている。 このDNAバーコードシステムでタグ付けした低分子物質のライブラリーを、不活性型インテグリンLFA-1と恒常的活性型LFA-1タンパクをバイトとして、標的特異的戦略的スクリーニングをおこなった。明示的には不活性型インテグリンLFA-1は“健康状態(炎症フリー)”を、恒常的活性型LFA-1は“病的状態(慢性炎症)”を代表するモデルであるという仮説を設定した。このアプローチにより、慢性炎症特異的コンフォメーションを選択できるテクノジーの基礎を構築できた。
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Strategy for Future Research Activity |
インテグリンの活性化制御のメカニズム研究をさらに免疫病や血栓止血異常の病態解明や新規治療薬解明につなげていくための研究を推進していく。まずそのために今までの研究成果を活かして、インテグリンの活性化状態を人為的に操作した遺伝子改変マウス(かっての共同研究者である東大医科研Eun Joeng Park博士が所有)での検討を加えるための基礎実験を行う。免疫異常の具体的な表現型として、免疫系のホメオスタシス維持に中心的役割を果たしているヘルパーTリンパ球のデベロップメントに与える影響を調査する。そのために試験管内でヘルパーTリンパ球を様々な専門的機能を司る特異的細胞集団に分化していく系を実現できる系を再現性を持って達成できるように行う。具体的にはTH1, TH2, TH17および制御性タイプへの分化を細胞内サイトカインを検出するアッセイ系を確立する。この系を用いて、インテグリンを介したシグナル伝達経路の異常や歪みが、細胞性免疫、液性免疫、自己免疫疾患誘発ポテンシャル、炎症抑制ポテンシャルに与える影響を適宜検討できるように実験系を最適化する。 また炎症反応異常は場合によっては血栓・止血・凝固系にまで影響を及ぼす可能性があるので、リンパ球や単球系の細胞に発現するインテグリンMac-1が異常に活性化された場合に、どのように凝固系の重要な分子と相互作用を持つのかを検討する。そのためにはサーフェス・プラズモン・レゾナンス(SPR)検査装置を用いて好感度リアルタイムでタンパク間相互作用を検出することを試みる。異常活性化はマンガンイオンを添加することにより恒常的高親和性インテグリン・コンフォメーションを誘導することにより、実験的にモデリングを行う。また細胞表面上での機能も検討する。さらにインテグリン阻害剤の臨床的意義を総説としてまとめる。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Application of encoded library technology (ELT) to a protein-protein interaction target: Discovery of a potent class of integrin lymphocyte function-associated antigen 1 (LFA-1) antagonists.2014
Author(s)
Kollmann CS, Bai X, Tsai CH, Yang H, Lind KE, Skinner SR, Zhu Z, Israel DI, Cuozzo JW, Morgan BA, Yuki K, Xie C, Springer TA, Shimaoka M, Evindar G
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Journal Title
Bioorg Med Chem
Volume: 22
Pages: 2353-2365
DOI
Peer Reviewed
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