2014 Fiscal Year Research-status Report
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24590580
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱崎 洋子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362477)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 胸腺 / 胸腺上皮細胞 / 幹細胞 / 胸腺退縮 / 自己免疫疾患 / 中枢性自己寛容 |
Outline of Annual Research Achievements |
胸腺はT細胞の産生と自己免疫寛容の成立に必須の中枢リンパ組織である。この組織骨格を形成しストロマとして働くのが胸腺上皮細胞であるが、その発生分化機構については不明な点が多い。申請者はこれまでに、胸腺原基でクローディン(Cld)を発現する上皮細胞に着目し、このCld陽性細胞が少なくとも2種類の髄質上皮に分化可能な前駆細胞であることを明らかにしてきた。本研究では、1)この発生初期の髄質上皮前駆細胞がマウス個体内で長期間保持されうるか、2)self-renew可能であるか、3)移植することによって髄質上皮の欠損による自己免疫疾患を回避させうるか、4)髄質の長期維持に関わる細胞特異的に発現するマーカー分子の同定、について解析を行い、機能的な胸腺髄質上皮のターンオーバーを一生涯維持する胸腺髄質上皮幹細胞が存在する可能性の検証、及びその実体を同定することを目的としている。このうち、本年度は下記の点を明らかにした。 1)髄質上皮細胞の産生を長期間維持可能な胎生期クローディン(Cldn)陽性胸腺上皮細胞分画のうち、SSEA1陽性の細胞群に長期再構成能が濃縮する。2)このCldn+SSEA1+の細胞はin vitroにおいてコロニーを形成することができ且つ継代可能である、即ち自己複製能を有する。3)Cldn+分画を移植することにより自己免疫疾患を回避しうる。4)コロニー形成能は生後すぐに顕著に低下する一方で、T細胞産生を欠くRag2KOマウスでは、コロニー形成能は歳をとっても高く維持される。 これらの結果から、胎生期Cldn+SSEA1+に胸腺髄質上皮幹細胞が存在すること、幹細胞の活性は加齢に伴い低下すること、これは出生時期の爆発的なT細胞産生に因ることが明らかになった。以上の結果を、論文として報告した(Immunity 2014 Sekai et al.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胸腺は、T細胞産生とその中枢性自己寛容を担う中枢性リンパ組織であり、近年その発生メカニズムについて分子レベルでの理解が急速に進んだ。一方、胸腺組織は加齢に伴い顕著に機能低下するというユニークな性質を有するが、組織を維持するメカニズムやそれに関連すると想定される胸腺退縮のメカニズムは十分に理解されていない。髄質上皮細胞は体内の様々な自己抗原を異所性に発現することにより自己寛容の成立に必須の役割を果たすが、皮質の上皮細胞と比較して早期にその数が減少することから、加齢に伴い徐々に自己寛容が破綻する現象の一因となっている可能性が指摘されている。本研究は、胸腺髄質上皮細胞がどのように維持されているのかを理解し、その制御方法を開発することによってこの仮説を検証し、これにより、胸腺退縮や加齢と並行して起こる免疫老化に関連する現象の制御を目指すものである。本年度は、本目的の根幹となる、髄質上皮細胞の同定を行うことができ、また髄質上皮幹細胞の活性や異常を評価するin vitroコロニーアッセイシステムの確立を行うことが出来た。以上、おおむね計画通りに進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を受けて、今後主に以下の3点に研究の焦点をおいて推進する予定である。 1.加齢に伴い胸腺髄質上皮幹細胞の活性が低下するメカニズム;生後直後にコロニー形成能が低下する原因について、時間と共に発現が変化する遺伝子をCldn+SSEA1+細胞分画で検討することにより明らかにする。 2.Cldn+SSEA1+の細胞分画の遺伝子発現を詳細に検討し、胸腺髄質上皮幹細胞に特異的に発現する機能的分子を同定する。 3.上述した幹細胞特異的分子をマーカーとして、髄質上皮幹細胞が組織内のどこに局在するかを検討する。これにより、髄質幹細胞が維持されるニッチを同定し、その活性維持、あるいは加齢に伴う活性低下のメカニズムを明らかにする。 これらは、T細胞の中枢性自己寛容の維持機構を理解し、それを制御するために必須の課題であり、期間内での解明をめざして研究を推進する。
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Causes of Carryover |
実験の途中で新たな発見があり、T細胞産生が出来ないマウスは歳をとっても髄質上皮幹細胞活性が高いことが明らかとなった。研究遂行上、この現象の本質を見極めることが重要であることから新たな実験が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな実験を行うための物品費、国際学会発表のための旅費として使用する。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] In vivo imaging reveals PKA regulation of ERK activity during neutrophil recruitment to inflamed intestines.2014
Author(s)
Mizuno R, Kamioka Y, Kabashima K, Imajo M, Sumiyama K, Nakasho E, Ito T, Hamazaki Y, Okuchi Y, Sakai Y, Kiyokawa E, Matsuda M.
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Journal Title
J Exp Med.
Volume: 211
Pages: 1123
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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