2013 Fiscal Year Research-status Report
IL-18誘導性ヘルパーNK細胞と抗腫瘍性γδ型T細胞との相互作用解析
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24590581
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
田中 義正 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90280700)
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Keywords | γδ型T細胞 / NK細胞 / 免疫療法 / 抗体 / 乳がん / HTLV-1 / 成人T細胞白血病 / 肺がん |
Research Abstract |
本年度は、標的がん細胞および感染細胞に対するモノクローナル抗体、エフェクター細胞であるIL-2/IL-18誘導性ヘルパーNK細胞、γδ型T細胞に対するモノクローナル抗体の作成を行った。標的がん細胞および感染細胞に発現する分子としてブチロフィリン3A1がある。そこで、ブチロフィリン3A1の細胞外領域を大腸菌で封入体として発現させ、リフォールディング後、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーおよびゲル濾過を行い精製した。ラットをブチロフィリン3A1で免疫し、リンパ節をミエローマ細胞SP2/0と融合し、3株のハイブリドーマを得た。これらの細胞株に関しては、ELISA法により抗ブチロフィリン3A1抗体を産生することを確認した。また、標的がん細胞および感染細胞を免疫原として用いてモノクローナル抗体の作成を行った結果、抗CD166抗体産生ハイブリドーマを3株樹立することができた。一方、IL-2/IL-18誘導性ヘルパーNK細胞に対するモノクローナル抗体産生性ハイブリドーマを2株樹立したが、これらはLFA-1に特異的なモノクローナル抗体を産生していた。γδ型T細胞に対するモノクローナル抗体に関しては、Vδ1、Vδ2、Vγ2を有するT細胞受容体細胞外領域を作成し、ラットに免疫することによりハイブリドーマの樹立を行った。その結果、各受容体領域に対して2株ずつのハイブリドーマを樹立することができた。また、これらのハイブリドーマから得られたモノクローナル抗体を標識するために、種々の化学修飾を行った。具体的な方法として、PEGリンカーを用い、一端にNHS、他端に色素やビオチンなどをカップリングさせた試薬の合成し、抗体修飾を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、乳がん患者、腎臓がん患者、前立腺患者、肺がん患者、HTLV-1感染性成人T細胞白血病患者、HTLV-1関連脊髄症患者に関してIL-2/IL-18誘導性ヘルパーNK細胞およびγδ型T細胞の割合と増殖性の確認を行ってきた。本研究の目的は、これらのがん患者および感染症患者に関して、IL-2/IL-18誘導性ヘルパーNK細胞およびγδ型T細胞を利用した新規免疫療法を行う基盤を整備することにある。ヘルパーNK細胞とγδ型T細胞を用いたこの新規免疫療法を行う際の評価項目としてヘルパーNK細胞の数、細胞傷害性、γδ型T細胞の数、細胞傷害性をモニターする必要がある。この目的のために、これら細胞に対するモノクローナル抗体を樹立する必要があるが、平成25年度は、これらの細胞数測定のためのエフェクター細胞特異的モノクローナル抗体の作成、および、細胞傷害性測定のための標的がん細胞および感染細胞特異的モノクローナル抗体の作成を行った。その結果、モノクローナル抗体を産生する安定なハイブリドーマの樹立に成功した。また、肺がん患者、HTLV-1感染性成人T細胞白血病患者、HTLV-1関連脊髄症患者の検体を用いた前臨床試験を行えるよう施設倫理委員会に申請書を提出し、受理された。また、細胞傷害性をハイスループットで検定可能なキットの開発を行い、機能アッセイを研究室レベルで行う耐性も整えた。このことから、がんおよびHTLV-1感染症に対する新規免疫療法を行うための準備は整った。以上のことを考慮すると、進捗状況としては、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、初年度で行った、IL-18誘導性ヘルパーNK細胞と通常のNK細胞とのオミックスの結果を検討すると共に、第2年度に取得したIL-18誘導性ヘルパーNK細胞および腫瘍細胞傷害性γδ型T細胞に対する特異的モノクローナル抗体の被認識構造の探索を行う。これにより、抗原の取り込みと提示を行うCD14陽性モノサイト、IL-18依存性ヘルパーNK細胞、腫瘍細胞傷害性γδ型T細胞がどのように相互作用し、最終的にγδ型T細胞の増殖誘導の亢進が生じるのか詳細に解析する。これらの解析により、γδ型T細胞を効率的に増殖誘導する技術の確立が容易になることが期待される。現在、高度医療評価制度の枠組みで、東京女子医科大学において腎臓がんおよび前立腺がんに関して、また、京都大学において乳がんに関して、γδ型T細胞を利用した新規がん免疫療法が先進医療第3項の枠組みで進められている。さらに長崎大学においても、肺がん、HTLV-1誘導性成人T細胞白血病、HTLV-1関連脊髄症に関して前臨床試験を開始している。ここでも、一番問題になっている点が、末梢血γδ型T細胞の割合の少ない症例をどう扱うかということである。これまでに小林博人准講師らとの共同研究により、複数回のex vivoγδ型T細胞誘導を行い患者に戻すとγδ型T細胞の割合が徐々に上昇することを見いだしている。これらの患者の末梢血において、本研究課題で見いだされる可能性のあるγδ型T細胞活性化因子がどのように推移しているかを検討すれば、さらに、γδ型T細胞を用いたがん免疫療法を改良できる可能性がある。このように本研究課題においては、より効率的で、より効果の高いがんおよび感染症免疫療法を確立するために、種々の比較解析を行っていく。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Decreased Vg2Vd2 T cells associate with liver damage through regulating Th17 response in chronic hepatitis B patients2013
Author(s)
Xiaoli Wu, Ji-Yuan Zhang, Ang Huang, Yuan-Yuan Li, Song Zhang, Jun Wei, Siyuan Xia, Yajuan Wan, Weiwei Chen, Zheng Zhang, Yangguang Li, Ti Wen, Yan Chen, Yoshimasa Tanaka, Youjia Cao, Puyue Wang, Liqing Zhao, Zhenzhou Wu, Zheng Zhang, Fu-Sheng Wang, and Zhinan Yin
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Journal Title
J. Infect. Dis.
Volume: 208
Pages: 1294-1304
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Robust induction of gd T cells with anti-myeloma activity by lenalidomide and IPP in combination2013
Author(s)
Takeshi Harada, Cui Qu, Shingen Nakamura, Asuka Oda, Masami Iwasa, Shiro Fujii, Hirokazu Miki, Kumiko Kagawa, Hironobu Shibata, Shuji Ozaki, Yoshimasa Tanaka, Toshio Matsumoto and Masahiro Abe
Organizer
The 4th Japanese Society of Hematology International Meeting 2013
Place of Presentation
Yamatoya-Honten, Matsuyama, Ehime, Japan
Year and Date
20130524-20130525
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[Presentation] Butyrophilin 3A1 plays an essential role in prenyl pyrophosphate recognition by human Vg2Vd2 T cells2013
Author(s)
Craig T. Morita, Olivier Henry, Mark D. Distefano, Yen-Chih Wang, Johanna Raikkonen, Jukka Monkkonen, Yoshimasa Tanaka, and Hong Wang
Organizer
The American Association of Immunologists Annual Meeting 2013
Place of Presentation
Hawaii Convention Center, Honolulu, Hawaii, U.S.A.
Year and Date
20130503-20130507
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