2012 Fiscal Year Research-status Report
小グループ学習における医学生の学習スタイルに関する文化的検証とモデル開発
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24590605
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
西城 卓也 岐阜大学, 医学部, 助教 (90508897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 ちひろ 岐阜大学, 医学部, 助教 (50610440)
鈴木 康之 岐阜大学, 医学部, 教授 (90154559)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成24年度の目標:「一般に、国ごとに医学生には異なる特性が見られ、個々の学習スタイルには、ばらつきはあるものの、一定の傾向が国により存在すると捉えられている。その特性を明らかにし、国別の比較検討を行うことで、日本の学習スタイルの特徴に関する仮説を生成することを目指す」と設定されていた。 報告①:調査の準備を進めたが、平成24年10月に、調査表Aの妥当性の欠陥性に関する重大な文献報告があった。具体的には、「学習スタイル」という概念の懐疑論と、その多くの調査票の妥当性と信頼性に関する不安定さを指摘するものであった。これまでの先行研究と近年の学習スタイルに関する論文を再度レビューをしたが、その方針に変更はなかった。 ①:慎重な協議の結果、このまま調査を実施しても有意義な結果が得られない可能性が大きいという結論に至り、調査内容と方法を一部改訂することとした。 ②:一方、予備調査で、医学生の問題基盤型学習のグループ討議への参加態度に関する調査を行った。そこでは報告・成果①をうらずけるように、やはりグループ討議に参加する意欲は、学習の方法に対する嗜好性とはまったく相関がなく、グループ学習の理解度合いや学習に対する喜びや不安感といった価値観や感情が有意に正の相関性を見せた。このことで、次年度の研究にむけて「学習への価値観」という新たな要因を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学習スタイルに関する懐疑論が出たことは、新たなパラダイムシフトであった。研究実施前に、それがわかったことは、むしろ結果的に事前に判明して良かったと考える。絶え間ざる文献検索を通じた最新の情報をいち早く入手できたことで、未然に、妥当性の低い調査票を実施する無駄を回避することができた。 また予備調査にて、良き結果を得ることができたことは大きな進歩である。「学習スタイル」にとって代わる、重要な要因として「学習の価値観」を見出すことができた。また認知的不協和(Cognitive Disonnance)が日本の医学生にも存在し、学習への価値観を見出し学習する喜びを感じる要因、それと対比的に、自己評価の低さが存在した場合の、理想と現実のギャップが、学習のドライブとなっていることが明らかになった。これは学習スタイルの調査の中止に伴い延期した「Values Survey Module 2010(VSM2010)」にて調査出来ると思われる、人間の価値観のインパクトの大きさを示唆するものであるといえる。このような知見を得られたことは、とても進歩があったと自己点検している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究の具体的テーマは、様々なグループ討議の会話のあり方と価値観、とする。 目標:対象とする国内外の様々なグループ討議を観察・記録し、会話分析をするためのサンプルを収集し、特定の状況における会話のあり方を理解する。特定の状況としては協働的な状況、協調が必要な状況とそれぞれ区分する。また討議は、「肯定・否定・共感・無視・質問・受け流し・変更」の分類などをベースに発言を質的にまた量的に分類を試みる。 概要:1)日本人医学生が参加する様々なグループ討議の議論を録音し逐語録作成する。2)比較する事例サンプルとして、諸外国のグループ討議もデータ収集する。 具体的計画:[1]日本の医学部の各学年のPBLにおけるグループ討議、卒前の各種セミナーにおけるグループ討議、臨床実習におけるグループ討議を研究対象とする。サンプル数は100を目安に準備し、質的にデータ飽和した時点で終了とする。主に、日本人医学生が参加する様々なグループ討議の議論を録音し逐語録作成する。一方で、比較する事例サンプルとして、諸外国のグループ討議もデータ収集する。[2]VSM2010とLSIを上記の参加者にすべて実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年10月までに、個人特性と学習スタイルの調査表A.Bを検証し、実施校を最終選定し, 平成25年3月までに、メール・郵送を通じて調査表を配布し、結果を収集する研究計画であった。しかし、平成24年10月に調査表Aの妥当性の欠陥性を指摘し、パラダイムシフトをもたらす重要な文献報告がオランダよりあった。慎重な協議の結果、このまま調査を強行しても有意義な結果が得られない可能性が高いという結論に至り、調査内容と方法を改編する必要が生じた。この調査の実施を中止としたため、繰越金が生じている。 次年度は、研究デザインの修正、および可能な限りのデータ収集のため、英国グラスゴー大学のPhillip Evans教授を長期訪問する。訪問の費用に関しては、昨年度使用しなかった繰越金を運用することで賄える。また他国で協力が得られる場所を現在検討中である。これらの国の選択はVSMの分布を参照に検討する。
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Research Products
(6 results)