2013 Fiscal Year Research-status Report
医療安全に対する直接効果を発揮するインシデントレポート管理システムの開発と評価
Project/Area Number |
24590618
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 武浩 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20372237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 正幸 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10143306)
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Keywords | インシデントレポート / 医療安全 / Eラーニング / インシデントレポート管理システム |
Research Abstract |
医療安全分野では、インシデントレポートのオンライン運用が普及しているが、従来システムは医療安全への直接効果を狙ったものではない。我々は、「インシデントレポートの積極的閲覧促進」と「再発防止策の確実な評価」および「医療安全に特化したEラーニングシステム」により、直接的な安全効果を発揮するシステムを開発した。本研究は、本システムの医療安全効果の長期的な評価が目的である。インシデントレポートによる安全管理上、必要条件となる報告数については、本システム導入前の973件(H18年度)に対し導入後、1,907件、1,908件、2,700件、3,192件、3,647件、3,740件、3,647件と年々増加した。インシデント事例の周知を反映する月平均レポート閲覧数も1,738.9件、5,178.0件、8,755.7件、10,815.7件、15,091.3件、16,640.3件、17,979.0件と年々増加し、8年目のH25年度では導入1年目(H19年度)の10.3倍に達した。インシデントの重篤度を示す影響レベルの評価では、影響レベル「3b」以上のインシデントが、運用前のH18年度3.49%(34件)に対し、1年目(H19年度)1.16%(22件)、2年目(H20年度)1.27%(24件)、3年目(H21年度)0.98%(26件)、4年目(H22年度)1.78%(56件)、5年目(H23年度)1.38%(50件) 、6年目(H24年度)1.32%(49件)、7年目(H25年度)1.55%(56件)と導入後は、導入前より全て発生率が低かった。一方、本システムに導入した研修会内容のビデオ配信であるE-ラーニングシステムの利用状況は、H23年度、24年度、25年度の平均受講者数が921.0人、721.5人、816.7人であり、研修会未受講者のE-ラーニング受講率は75.3%、66.7%、75.9%と、H25年度が最も受講率が高かった。研修会受講者とE-ラーニング受講者を加えた総受講率はそれぞれ、85.6%、83.0%、88.0%と受講率は極めて高く医療安全教育研修への参加者の増加に貢献しているものと思われる。以上により本システムが医療安全に対し有効と判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度計画により医療安全に特化したEラーニングシステムはほぼ完成し順調に運用しており、平成24年度からは医療安全同様実施と受講が義務付けられている感染管理研修にも本システムのEラーニングシステムを利用し始めたほか、ME機器研修、薬剤研修等にも利用している。今後は安全管理関連研修以外の分野においても本システムのEラーニングシステムを利用予定である。なお、本システムの医療安全効果についてインシデント影響レベルで評価した結果、H25年度の影響レベル「3b」以上の報告率は1.55%と本システム導入前のH18年度3.49%に対しH24年度同様低率を維持している。一方、影響レベル「0」の報告率は19.51%で本システム導入前H18年度および導入後の7年間の中で最も高く、影響レベル「1」以下の報告率はH20年度の68.5%の次となる66.4%と高い結果を示した。影響レベル「3b」以上の報告率が高い点は重篤なインシデントの発生率が低いことを示し、影響レベル「1」以下の報告率あるいは影響レベル「0」の報告率が高い点は、影響度の低いインシデントの集積を意味しハインリッヒの法則に基づく対策の充実が可能な点と職員の安全意識啓蒙の向上に起因することから医療安全効果に好影響を与えるものと思われる。以上の結果より本システムの長期的な医療安全効果が得られている根拠となり、本研究が順調に進んでいる根拠となるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度も引き続きインシデントレポートシステムの長期評価を実施するとともに、本システム上に構築したEラーニングシステムの詳細評価を行う。さらに「インシデントレポートの報告」「インシデントレポートの閲覧」「重篤インシデントの発生数」「E-ラーニング結果」の4 指標によりグループ分けを行い、それぞれグループの特徴の分析と、特徴に応じた個別の教育プログラムをもって介入しその安全効果を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H26年度が本研究の最終年度にあたり、H25年度に予定していた学会発表等をH26年度の研究結果を踏まえ発表すべく、H26年度に一括で行うことにした。 その結果、当初学会参加費及び旅費として確保していた本年度研究費が未使用となった。 当該年度未使用額については研究成果発表にかかる学会参加費及び旅費等に充当する予定である。
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Research Products
(22 results)