2013 Fiscal Year Research-status Report
脳疾患に伴うコミュニケーション障害に対する定量的評価法の開発に関する研究
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24590628
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
中村 光 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (80326420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 真哉 姫路獨協大学, 医療保健学部, 教授 (00296188)
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Keywords | 医療・福祉 / リハビリテーション |
Research Abstract |
本研究の目的は、認知コミュニケーション障害を簡便かつ定量的に評価する新しい(日本で初めての)方法を開発・確立することである。 25年度は、昨年度の研究で開発した観察方式の評価法である「日本語版PRS(Pragmatic Rating Scale)」について、研究の成果をまとめて学会誌に論文投稿した。その結果、いくつかの点において再検討を求められたので、それらについてデータの確認や評価用紙の修正を行い再投稿し、現時点で審査中である。 また、これと並行して、検査方式の評価法について検討した。小規模のパイロット実験を繰り返した結果、比喩の理解課題が認知コミュニケーション障害を的確に測定できる可能性が高いことが明らかになった。その中で、その比喩が慣用句的か否かが成績に大きな影響を与えることがわかり、試行錯誤を繰り返しながら、課題文の慣用句性をコントロールした「比喩理解課題」を作成した。それを用いて健常高齢者、認知コミュニケーション障害のない脳損傷者、認知コミュニケーション障害のある脳損傷者(認知症者を含む)のデータを収集し、それがほぼ終了した段階である。 さらに、24年度の研究で「言語流暢性課題」が認知コミュニケーション障害の評価に有効であることを発見した。25年度は、この成果を論文にまとめ学会誌に投稿し掲載された(高次脳機能研究33巻4号,pp.421-427)。さらにそれと並行して、脳損傷者のデータを収集し、現在解析しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の計画は、①観察方式の認知コミュニケーション障害の評価法を1つ新たに発表すること、②それを認知症者に適用できるか確かめること、③検査方式の認知コミュニケーション障害の評価法を1つ新たに開発することであった。 このうち①については、尺度の信頼性と妥当性は確認し、開発した尺度について論文としてまとめあげ学会誌に投稿している。学会誌での審査が長引き、現時点では受理され公表できる段階にない点が、予定より若干進行が遅れている部分である。しかしこれについては、ほぼ受理・掲載の目処がたち、深刻な遅れとはいえない。 ②については、③の試案とあわせて現在、データを収集している段階である。①の遅れに伴い予定より若干の遅れ(3ヶ月程度)があるが、今後取り戻せる範囲内である。 ③については、24年度の研究の過程で、「言語流暢性課題」が認知コミュニケーション障害の評価に有効なことがわかり、それについて学会誌に論文が掲載され公表することが出来た。さらに、「比喩理解課題」が認知コミュニケーション障害の評価に有効であろうことが小規模のパイロット実験の段階ではほぼわかり、現在大規模の対象群でデータを収集している段階である。このように、検査方式の尺度についてはすでに1つ開発し、さらに1つのものを開発途中である。③については当初の計画以上に進展しているといえる。 以上の状況をあわせると、おおむね順調に進展している状況といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたり、今までもまずは順調に研究が進展しているので、おおむね当初の計画に基づき研究を進めていく予定である。①認知コミュニケーション障害の観察式評価尺度については、論文として公表して、日本語版を確定する。 ②認知コミュニケーション障害の検査式評価尺度については、データの収集を継続して、それを分析し、学術論文として公表できる形にまとめあげる。「比喩理解課題」については、データ収集がほぼ完了しており、夏ごろには投稿が可能だと考えている。「言語流暢性課題」については、おおむね8割程度のデータ収集が終わっており、引き続きデータを集め分析を進める予定である。 ③観察式評価尺度と検査式評価尺度が揃うので、それらを使って脳損傷者のコミュニケーションについて評価し、認知コミュニケーション障害の本質に一層接近するための検討を行う。また、新たな介入法について研究協力者やそれ以外の専門家とも議論し検討して、小規模な介入実験を行って有効性についての示唆を得る。 ④開発した観察式・検査式の評価尺度を、成人の認知コミュニケーション障害者だけでなく、同様の問題を示す精神遅滞児や発達障害児(自閉症スペクトラム、注意欠陥多動性障害など)にも適用できる可能性があるか、小児分野の専門家とも議論し検討する。可能であれば、一部の児に試験的に適用する。 ⑤これらの成果を国際学会も含めた複数の専門学会で発表(口頭発表、論文発表)し、成果をこの分野の臨床家に広く提供する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①大学からの研究費の支援が予想よりも高額であり、それで研究遂行の一部をまかなうことが可能であったこと。②最も先行して研究を進めていた「日本語版PRS」の成果について学会誌に投稿したが、予想よりも厳しい査読意見を受け、その修正に追われて次の研究の展開がやや遅れたこと。③上記2の理由で、論文印刷に伴う別刷等費用や予定した研究成果の口頭発表について見送ったため、学会等出張のための旅費の一部が不使用となったこと。 本年度は最終年度であり、研究成果が次々と得られる見込みであることから、特に研究成果の発信に力を入れたい。そのための学会等出張旅費としての使用を計画している。具体的には、研究代表者が指導する大学院生・藤本憲正が、秋に「日本高次脳機能障害学会」(於:仙台)で成果の一部を発表する。また、同じく大学院生・李ダヒョンが、秋に「韓国老年学会」(於:韓国)で成果の一部を発表する。さらに、研究代表者自身が国際学会(時期・学会名未定)で成果の一部を発表する。 物品費は、図書等研究資料、記録メディア、文具、論文別刷、英語での成果発信のための英文校正料として使用する。また、研究打ち合わせのための液晶プロジェクタ1台を購入する。人件費・謝金は、主にデータの入力・分析と研究資料の整理のためのアルバイト賃金として使用する。その他として、学会参加費などに若干の支出がある。
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Research Products
(3 results)