2013 Fiscal Year Research-status Report
高齢社会における医療・福祉従事者の国際移動に関する研究
Project/Area Number |
24590638
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
松本 邦愛 東邦大学, 医学部, 講師 (50288023)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 友紀 東邦大学, 医学部, 教授 (10198723)
瀬戸 加奈子 東邦大学, 医学部, 助教 (50537363)
|
Keywords | 労働移動 / 外国人労働者 / 医療福祉従事者 |
Research Abstract |
平成25年度は、医療従事者の受給モデルの作成と将来予測を行うために、産業連関表を用いた予測を行った。方法は、医療に関しては、2011年の性年齢階級別一人当たり医療費に2020年の性年齢階級別人口をかけあわせることで2020年の医療費を推計し、2011年からの医療費の増加を算出した。介護に関しては、2011年の性年齢階級要介護度別受給者の一人当たり給付額を算出して2020年の性年齢階級別人口をかけあわせることで2020年の介護給付額を推計し、2011年からの介護給付額の増加を算出した。これら増加額を、2005年の産業連関表(108部門)を用いて作成した経済波及効果計算ツールに代入して、2020年までの医療・介護サービスの需要の増大がもたらす経済波及効果、需要創出効果を推計した。結果、2020年までに医療・介護サービスの需要の増大がもたらす経済効果は9兆6,179億円、雇用創出効果は106万人であった。このうち、直接効果はそれぞれ5兆8,808億円、805万人、一次波及効果は3兆6,347億円、25万人、二次波及効果は1,024億円、9,000人であった。 また一般的な労働力の国際移動の実例として、二重経済モデルを用いたタイにおける労働移動の分析を行った。モデルを用いて、以下の結果を得た。(1)タイ経済は1992年前後に一度転換点に達したものと考えられる。(2)しかし、アジア通貨危機は伝統部門から近代部門へという労働の流れを逆転させ、さらに同時期に近隣諸国から大量の労働流入があったおかげで、転換点後の発展プロセスは一時停滞した。(3)しかし、アジア通貨危機の停滞から経済が回復するとともに、転換点以後の発展プロセスが再度進行し始めた。 さらに関連研究として、高齢化が進展する中で、医療需要が今後どのように変化していくかに関して、COI法を使ったがんの社会負担の研究を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、医療福祉従事者に限定した国際移動についてのモデルを構築する予定であった。人口動態要因や経済要因などを用いて需要を予測し、医療従事者の供給は過去の推計値を延長して考察する予定であった。しかし、特に介護職などの労働力は、他部門からの流入が容易であり、国際労働移動一般の現状を見る必要が生じた。また、将来の予測のためにはまず、需要面から考える必要があるため、産業連関分析やCOIといった将来の需要のための分析に多くの時間がとられた。結果として、当初想定していた研究範囲よりもやや広い分野を扱うことになった。しかし、これらの医療・介護需要分析は、最終年での研究の基礎資料となるものであり、研究の意義は十分あるものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、当初計画で立てた(1)看護師・介護従事者の需給モデルの作成と将来予測、(2)東アジア諸国への看護師・介護従事者(caregiver)需給モデルの応用、(3)看護師、介護従事者の国際移動の推計、(4)外国人看護師雇用医療施設に対するヒアリング調査およびアンケート調査をさらに進めるとともに、それに加えて、すでに看護師・介護従事者を多く受け入れている国の現状と問題点についてまとめ、また将来我が国に医療従事者が海外から来るだけの条件が整うのか、もしも十分な労働者が来なかった場合どのような対策が考えられるかをまとめたい。 最終的には、3年間の研究結果を国内外の学会で報告し、そこでの討議の結果を踏まえて論文を作成したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
人件費・謝金を多く見込んでいたが、第2年度は独力での作業が多かったため残額が発生したため。 次年度は、国内学会での成果の報告にかかる費用として200,000円、国際学会での成果の報告にかかる費用及び海外調査費用として海外旅費に1,000,000円、資料整理など人件費・謝金として300,000円、残りを会議費用などに充てる予定である。間接経費を除いた、初年度・第二年度の残額と最終年度の請求額合計は1,613,553円である。
|
Research Products
(3 results)