Outline of Annual Research Achievements |
介護施設で人生の最晩年を迎える高齢者に向けて, 職員 (介護・看護) ならびに施設外の宗教家・葬儀社の協働のもと, エンドオブライフケアを展開する要件つき, 2015年度は4年間にわたる研究の総括を行い, 下記を導いた. (1) わが国における死は, 生活習慣や老化に由来する均質な形態を取るようになり, 死者は他界へ送り出すべき存在というより, 生者のそばの見守り人と捉えられている. (2) 葬儀社はもともと, 典礼の催行という道具的サポートを通し, みぢかな援助者となる要件を備えていた. 近年, 葬儀が故人の個性を反映した集いの場の性質を帯びるに伴い, 葬儀社による高齢者・家族 (遺族) ケアの広がりが具現化しつつある. (3) 一方で職員や家族に残る, 近しい人の死という不条理の記憶を緩和し, 死者を安定した存在に変える宗教家の伝統的役割が, 現代においても希求されている. 宗教家の働きは職種内完結性が高いため, 他職種との円滑な疎通が課題といえる. (4) 介護, 看護, 宗教, 葬儀それぞれによるケアに加え, 専門職とは異なった枠組みで当事者が支え合う自助グループが, 専門職ケアの限界を超える機能を果たし得る. この場合, 社会保障制度 (介護・看護), 伝統/市場経済 (宗教・葬儀), 脱経済合理性 (自助グループ) を各々意識する必要がある. 以上の論考について, 2015年度内に雑誌論文へまとめた (武庫川女子大学紀要 63: 31-40, 地域ケアリング 17(11): 66-69, 同 17(13): 72-75). 発展的な視座として, (5) 精神科ソーシャルワーカーが高齢者や職員を支援する鍵となる専門職に位置付けられることから, 学際性と固有性の双方に配慮した, 実践行為の体系化の重要さを引き続き論じた. その援助理論の構築には, エンドオブライフへ向けた認知や儀礼の変化のように, 社会の側から個人へ及ぶ影響を検証する姿勢が欠かせないことを提起した (精神保健福祉学 3: 18-34, 地域ケアリング 17(10): 90-92).
|