2013 Fiscal Year Research-status Report
山間部過疎地域医療支援システムの構築―医師・薬剤師協働“定期的健康相談”の展開
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24590648
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
冨重 恵利紗 九州保健福祉大学, 薬学部, 助手 (20538657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河内 明夫 九州保健福祉大学, 薬学部, 准教授 (80389593)
本屋 敏郎 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (60166345)
佐藤 圭創 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (00315293)
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Keywords | 定期的健康相談 / 山間地域 / POCT |
Research Abstract |
「山間部過疎地域医療支援システムの構築―医師・薬剤師協働“定期的健康相談”の展開」に関する研究を行うにあたって、①山間部過疎地域における“定期的健康相談”実施による健康相談事例及びサポート事例、受診勧奨事例等の収集・解析、健康啓発教育の実施、②“定期的健康相談”の有用性検討、過疎地域住民の医療ニーズ検証、③地域医師・薬剤師との事業連携を模索し、持続可能な地域医療支援システムの構築を提案、を目標としている。 ①については本事業開始(平成22年12月)から平成26年4月までに収集した健康相談事例及びサポート事例、受診勧奨事例等を診療科別に分け解析を行っている。平成25年5月までについては、39名(男性15名、女性24名)が健康相談に参加したことを報告した(第23回日本医療薬学会年会、2013.9、仙台)。総相談件数は125件であり、内訳は皮膚科疾患が最も多く、次いで循環器、消化器、整形外科等が多かった。また相談対応として、かかりつけ医・専門医療機関への受診勧奨、OTC薬等による処置や治療、生活指導、医薬品適正使用、病識不足に対する情報提供等を行い、すべての対応に薬剤師が関与した。またPOCT(Point of care testing)として超音波骨量測定19名、血清脂質・血糖測定15名、AST・ALT測定3名に実施し、その結果に基づいた受診勧奨、生活指導、医薬品適正使用等を行い、POCTは疾患の早期発見や予防に有用であることが示された。②に関しては診療科別の解析結果を基に、地域住民の医療ニーズを検証するとともに、健康相談の有用性を探るため対応後の経過について検証を進めている。また、③の目標達成に向け、地域住民のかかりつけ医や薬局と連携した事例のうち2症例について報告した(第23回日本医療薬学会年会)。また、皮膚科関連疾患ならびに高血圧症の症例に関する論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宮崎県延岡市山間地域住民(平成26年4月現在36世帯、75名、延岡市統計)を対象に地区公民館にて医師・薬剤師協働による定期的健康相談を実施した(毎月2回)。平成25年度の健康相談実施回数は22回、平成22年12月の健康相談事業開始から76回と継続的に実施し、住民の約半数にあたる43名(男性17名、女性26名)が参加している。また、健康啓発教育の一つとして、毎月1回健康相談パンフレットを発行し、地域住民の健康づくりをサポートした。本事業開始から平成25年5月までに収集した健康相談事例及びサポート事例、受診勧奨事例等を診療科別に分け解析した結果を第23回日本医療薬学会年会にて報告した。また、地域薬局薬剤師の役割を提案するため、皮膚科関連疾患(1症例)ならびに高血圧症(3症例)の症例についての論文を投稿した。これらのことから、本研究はおおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に引き続き延岡市山間部過疎地域住民を対象とした医師・薬剤師協働「定期的健康相談」ならびに健康啓発教育を実施し、医学的・薬学的アプローチで地域住民に医療サポートを行う。また、血圧計、パルスオキシメーター等の非侵襲的ポータブル計測機器や血清脂質・血糖簡易式迅速測定装置、HbA1c測定装置、超音波骨量測定装置等を用いた簡易迅速検査(POCT検査)実施により、疾患の早期発見、治療効果や副作用のモニタリングを行い、検査結果に基づいた医薬品適正使用や生活指導等を行うこととする。これらの健康相談・サポート事例、及び専門医への受診勧奨事例データ、使用したOTC薬等の解析を進め、定期的健康相談の有用性や過疎地域住民の医療ニーズを検証するとともに、過疎地域住民の医療を取り巻く問題の解決策を提案したい。 地域住民のかかりつけ医・かかりつけ薬局との連携を密に取り合うことにより能率的に研究を推進する。本研究の最終目標である持続可能な地域医療支援システムの構築のため、地域住民の健康に関する活動を支援するNPO法人のべおか健寿ささえ愛隊(医師、薬剤師、看護師、栄養士、理学療法士等の医療従事者や一般市民で構成)や行政との連携を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の健康相談は通常月2回実施し、年間24回実施予定であったが、平成25年度の実績としては22回であった。年間24回の健康相談実施計画で過疎地域訪問用旅費(燃料費/1回訪問につき約100 km走行概算、研究協力者は約200 km走行概算)および研究協力者への謝金を計上していたため、次年度使用額が生じた。 本健康相談実施中において応急的処置の必要なケースや禁煙指導を含めた生活習慣改善を行うケースを想定したOTC薬やこれまでの健康相談内容から皮膚科関連疾患に関することが多かったことから皮膚科用薬剤を購入する。さらに、山間地域においてPOCT検査が有用であると考えられたため、血清脂質・血糖簡易式迅速測定装置及び超音波骨量測定装置等による検査を実施するにあたっての必要な検査キット、ゲル等の購入費用を計上する。また、健康相談への対応に必要な在宅医療・セルフメディケーション関連書籍を購入する。 第47回日本薬剤師会学術大会(2014年10月12-13日、山形)にて研究成果の発表を予定しており、その学会旅費を計上する。平成25年度に引き続き、過疎地域訪問用旅費(燃料費/1回訪問につき約100 km走行概算、研究協力者は約200 km走行概算)を計上する。また、論文請求・投稿料のための経費を計上する。
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