2013 Fiscal Year Research-status Report
T型電位依存性カルシウムチャネル賦活化を標的としたアルツハイマー病創薬研究
Project/Area Number |
24590653
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森口 茂樹 東北大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (70374949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 浩司 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90136721)
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Keywords | T-type VGCC / アルツハイマー病 / 認知機能改善効果 |
Research Abstract |
本研究は、T型カルシウムチャネル(T-type VGCC)の賦活化によるアルツハイマー病(AD)の創薬研究である。本研究では、AD治療候補薬としてST101/ZSET1446に注目し、ST101の認知機能改善作用の細胞内機序について検討した。さらに、申請者は、大脳皮質神経細胞においてST101によるCaMキナーゼIIの活性化の亢進は、T-type VGCCの賦活化を介して認知機能を改善することを世界で初めて明らかにした(Moriguchi et al., J. Neurochem. 2012)。これまでT-type VGCCが認知機能調節に関与する報告は皆無であり、本研究ではST101の細胞内機序としてT-type VGCCに注目し認知機能調節との関連性について詳細に検討し、以下の結果を得た。(1)OBXマウスを用いてT-type VGCC阻害薬MibefradilおよびNNC55-0396処置の記憶学習行動を検討した結果、ST101による認知機能障害の改善効果は、上記の阻害薬処置により有意な改善阻害効果が確認された。(2)海馬におけるACh遊離に対するST101の効果ならびにT-type VGCC阻害薬MibefradilおよびNNC55-0396の阻害効果について検討した結果、ST101は海馬におけるACh遊離を介してT型カルシウムチャネルを賦活化することを明らかにした。(3)海馬における長期増強現象に対するT-type VGCC阻害薬MibefradilおよびNNC55-0396の阻害効果について検討した結果、ST101による海馬および大脳皮質におけるLTPの増強効果は、阻害薬により有意に抑制された。これらの研究により、ST101によるT-type VGCCの賦活化による認知機能改善効果について、詳細な作用機序を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ST101のT-type VGCCを介した認知機能改善効果の作用機序に関しては、当初の研究計画の通り、明らかにできている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は新規AD治療薬ST101の細胞内機序の解明を目的としており、申請者の発見したT-type VGCCの賦活化による認知機能調節は世界初の報告であると共に申請者のオリジナルな研究である。また、ST101は米国で既に治験(PhaseII)が進行しており、将来的には日本でも治験を行いたいと考えている。現在、我々は、ST101の5種類の誘導体(SAK1~SAK5)を作製した。中でも、SAK3は、T-type VGCCの賦活化効果がST101より高く、ST101では弱かった海馬のLTPの増強効果も強く、創薬の可能性が高い。T-type VGCCはCav3.1、Cav3.2およびCav3.3の3種類のアイソフォームが脳内に発現する(Perez-Reyes, Nature 1998)。今後、T-type VGCCのアイソフォームであるCav3.1、Cav3.2およびCav3.3に対するSAK3の細胞内機序を同定する。また、本研究により、SAK3によるT-type VGCCの賦活化を介した認知機能調節の重要性が明らかになると予想している。さらに、本研究の結果は、中期から末期のAD患者のQOL改善に適応できる新しいADの創薬基盤となることが期待される。
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Research Products
(10 results)