2014 Fiscal Year Annual Research Report
医薬品に対する応答性の民族差を生じさせる要因は何か?:東アジア国際共同研究
Project/Area Number |
24590661
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
小手川 勤 大分大学, 医学部, 准教授 (20264343)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アジアにおける民族差 / 薬物動態 / 遺伝子多型 / 内的要因と外的要因 / 代謝酵素 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アジアにおける医薬品応答性の民族差に影響する要因を検討した。まず、βブロッカーであるアセブトロールの薬物動態を日本人と韓国人で比較した。日本人と韓国人の間で有意の代謝比(代謝物濃度/親化合物濃度)の差が認められた。これは代謝酵素の遺伝子型では説明できない差であった。また、アップルジュースの服用がアセブトロールの血中濃度を著明に低下させることも明らかになった。これに対して、アセブトロールの薬物動態を規定するトランスポーター(OATP2B1)の遺伝子変異の影響はわずかであった。次に、抗菌薬であるセフチゾキシムの薬物動態を、日本人、韓国人、中国人で比較したところ、韓国人において有意に低い血中濃度が認められた。この民族差は、セフチゾキシムの薬物動態を規定するトランスポーター(MRP4)の遺伝子型では説明できなかった。これらの研究から、医薬品の薬物動態には、代謝酵素やトランスポーターの遺伝子多型では説明できない民族差があることが示され、何らかの外的要因(食習慣など)が民族差を生じさせることが考えられた。そこで、外的要因のインパクトについて検討するため、抗アレルギー薬であるフェキソフェナジンの薬物動態に及ぼすアップルジュースの影響と、その飲用タイミングの影響について検討した。アップルジュースはフェキソフェナジンの血中濃度を著しく低下させるが、その影響は飲用タイミングによって大きく変動することが明らかになった。これらの研究から、遺伝子型などの内的要因の民族差が比較的少ないと考えられるアジア諸民族においても、薬物動態に民族差があることが示され、その差には食習慣などの外的要因が関与することが示唆された。
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