2013 Fiscal Year Research-status Report
P450のMBIを介した薬物相互作用に個人差をもたらす遺伝的要因の定量的解明
Project/Area Number |
24590668
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大谷 壽一 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (70262029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 康次郎 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70174787)
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Keywords | 薬物相互作用 / 遺伝子多型 / 不可逆的阻害 / 個人差 / テーラーメード薬物治療 |
Research Abstract |
薬物相互作用の重要な原因の一つに、薬物代謝酵素シトクロムP450 (CYP) の阻害があり、中でも酵素活性を不可逆的に失活させる mechanism based inhibition (MBI) は、特に注意が必要とされている。本研究では、CYP の阻害を介した薬物相互作用の程度に個人差をもたらす要因として、CYP の遺伝的変異型分子種間での、各種 MBI 阻害剤に対する感受性の違いに着目した。昨年度は CYP3A4 の MBI 阻害剤としてエリスロマイシン、クラリスロマイシン、レスベラトロールおよひリモニン、CYP2D6 の MBI 阻害剤としてパロキセチン (PAR) の、各種変異型分子種に対する阻害特性の違いを、in vitro rCYP 発現系を用いて評価した。 そして、本年度は以下の検討を行った。まず、CYP3A4 の MBI 阻害剤として、グレープフルーツジュース (GFJ) 抽出物および GFJ に含まれる MBI 成分であるベルガモチン (BG) およびジヒドロキシベルガモチンの阻害特性を評価した。その結果、いずれのMBI特性も分子種間で差異がみられ、特にBGのKI値は最大 30 倍程度の違いがみられた。 一方、CYP2D6 については、阻害剤であるテルビナフィン (TERB) の各種変異型分子種に対する阻害特性を検討するとともに、MBI を示すかについても検討した。その結果、TERBは、CYP2D6 に対しては MBI 特性を示さず純粋な競合阻害をしたが、その阻害強度 (Ki値) は分子種間で最大20倍も異なっていた。また昨年は PAR のMBIパラメータを評価したが、本年はこれに加えて、PAR 自身のCYP2D6各変異型分子種による代謝パラメータを算出した。そして、これらの結果をもとに、自己MBI阻害を考慮したIVIVEと生理学的母集団薬物速度論モデルによって、ヒトにおけるPARの体内動態をおおむね良好に予測することができた。 以上、薬物相互作用の大小に個人差をもたらす要因として、代謝酵素の遺伝子変異が重要であることがより明確に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにCYP3A4については変異型5種類と阻害剤7種類 (5×7=35) の組み合わせ、CYP2D6については変異型3種類と阻害剤2種類 (3×2=6) の組み合わせについて、その阻害特性を定量的に明らかにすることができた。さらに、最もモデルシミュレーションが複雑な、阻害剤自身が自己MBI阻害特性を有することにより非線形動態を示すPARについても、IVIVE による予測を可能にした。これらのことから、in vitro における検討結果をもとに、in vivo における薬物相互作用の個人差を定量的に予測するための基礎的な検討が完了し、必要なデータがとれたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでに蓄積された in vitro データと、これまでに確立されたモデルを用いて、in vivo における薬物相互作用の個人差を定量的に予測するための方法論の確立を目指す。また、各種MBI阻害剤と酵素分子とのドッキングシミュレーションを行い、in silico 系から阻害特性の差異が予測可能か否かについて考察を進めて行く。
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