2012 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患薬のファーマコゲノミック・バイオマーカーの機能的探索及び活用法の提案
Project/Area Number |
24590671
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
大野 雅子 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (50467528)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ファーマコゲノミクス / 炎症性腸疾患 / アザチオプリン |
Research Abstract |
アザチオプリン(AZA)は、難治性疾患である炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病)に対して適応を有する免疫抑制剤であり、治療上重要な位置を占めている。しかしAZA療法の問題点として、骨髄抑制などの重篤な副作用がみられること、副作用・有効性発現に個人差があること、小児での安全性が十分には確立されていないことが挙げられる。本研究は、1)薬物動態関連分子の機能的解析により、炎症性腸疾患薬AZAの反応性に関わるファーマコジェネティック・バイオマーカーを探索し、さらにその活用法を提案すること、2)臨床研究マインドをもつ薬剤師の育成に向けた教育プログラムを創出することを目的とする。 研究計画を遂行するため、平成24年度は以下のことを行った。1)臨床疫学研究については、まず臨床研究の計画内容についてヒトゲノム倫理審査委員会の審査を受け認可を得た。臨床研究の参加施設との調整ならびに事前調査等を行うとともに、既登録症例の体系的見直しを開始した。また、AZAの代謝に関わるチオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)およびイノシン3リン酸ピロフォスファターゼ(ITPA)の遺伝子多型解析を開始した。その他の解析対象遺伝子については解析系を検討中である。2)臨床(疫学)研究教育については、患児の治療経過に関する基礎調査を通して、薬学部生が自ら見出したリサーチクエスチョンに基づき、コホート研究計画を立案させた。これにより学生の臨床研究意識を啓発できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.兵庫医療大学ヒトゲノム研究倫理審査委員会での研究認可手続きに時間がかかっため、遺伝子解析ならびに資料収集の開始が遅れた。 2.平成24年度中に臨床研究関連の専門家によるセミナーを開催する予定であったが、調整の都合で実施できなかったため、予備的な臨床疫学研究セミナーを少人数体制で行った。 3.臨床研究の実践的な教育演習環境の整備に関しては、コンピュータのOSがWindows 8に移行する時期と重なったため、年度内の実施を控えた。
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Strategy for Future Research Activity |
【平成25年度】臨床疫学研究では、H24年度に継続して新たな被験者の登録を行い、臨床成績を収集する。臨床データ収集やモニタリングについては、適宜、研究実施医療機関への研究協力者等の出張、研究補助者の雇用等の対応をとる。逐次、候補分子の遺伝子解析を行う。集積した臨床データと遺伝子多型等との関連性について探索的な検討を開始する。具体的には、遺伝子多型の有無によって、6-TGN、ITPA活性、副作用発現率・有効性発現率が異なるかを統計学的に解析する。この過程から、副作用・有効性発現の個人差を予測しうる因子を抽出する。さらに、直接の有効性に関わる物質である6TGNの血中濃度をHPLCにて測定し、有効性のマーカーとなり得るか検討する。 臨床研究教育については、延期していた臨床研究の実践的な教育演習環境を整備するため、臨床薬理研究では必須となる薬物動態解析、臨床統計解析等に必要なソフトウエア、コンピューター、教育用書籍などを購入する。学生の研究マインドを育むため、実践的な臨床研究(NCT00298870等)を用い、新たな解析に挑ませる。また、欧米の薬学部における臨床研究教育法や国際的な小児臨床研究専門医師・薬剤師教育システムについての調査を行う。 連携研究者:東純一 研究協力者:上野山博子、奥村早喜、宮下善充、門田 弓、田尻仁、他 【平成26年度】臨床研究は継続して同様に行う。平成24年~26年度に抽出したPGマーカーと臨床データを統合し、ベイジアンアルゴリズムに基づき個別化適正投与のためのプロトタイプを導出し、その活用法を提案する。さらに、提案した活用法の具現化を目指した新たな研究計画を立案する。また、本研究に携わった薬学部5、6年次生の理解・習熟度評価に基づき、臨床(疫学)研究および薬効評価に関する基礎的な教育プログラムを立案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費:1,276,500円(遺伝子解析関係、臨床研究の教育演習環境整備関係(PC、ソフトウエア等))、旅費:1,200,000円(国際学会、国内学会、国内調査)、人件費・謝金:200,000円、その他:200,000円 計2,876,500円 (間接経費:360,000円) 次年度に使用する予定の研究費が生じたのは以下の状況による:1)ヒトゲノム倫理審査委員会による臨床研究の審査、承認が遅れたため、遺伝子解析研究をあまり実施しなかった、2)パソコンのOSの変更時期と重なったため、コンピュータやソフトウエアなどの購入を控えた。 一方、平成24年度における臨床研究の臨床データ収集状況から、研究の遅滞を避けるためには、臨床データを収集するための出張調査が不可避であると判断した。また、研究成果を国内外の学会で発表する予定である。以上の理由により、平成24年度からの繰り越し金の一部を旅費に充当することを計画した。
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