2013 Fiscal Year Research-status Report
津波被災地をフィールドとした下肢静脈エコー所見と止血機能検査の研究
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24590685
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山村 修 福井大学, 医学部, 講師 (30436844)
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Keywords | 災害医療 / 深部静脈血栓症 / 下肢静脈エコー / 凝固線溶機能 / D-dimer / 仮設住宅 / NT-proBNP / 受診回数 |
Research Abstract |
本研究は,震災被災地において深部静脈血栓症(deep vein thrombus:以下DVT)の検出を目的とした下肢静脈エコーと血液凝固線溶機能検査を実施し,被災環境がエコー所見に及ぼす影響を検討する.平成25年度は前年に引き続き,9月14日-15日に宮城県亘理郡(亘理町,山元町)の仮設住宅団地9か所で検診を希望する被災者230名(男性57名,女性173名,年齢72.1±10.0歳)を対象に実施した.背景因子は高血圧59.6%,糖尿病16.1%,脂質異常症48.0%で,脂質異常症は24年度(29.6%)と比較して有意に増加していた.DVTは5.7%(13名)に認め,24年度(4.2%)よりやや増加していた.新鮮血栓はなかった.D-dimer値は希望者57名で測定,1.0μg/ml以上の高値例は5.2%(3例)で,24年度(15.1%)より著しく減少していた.一方,NT proBNP値は希望者37名に実施,125pg/ml以上の高値例は48.6%(18例)で,24年度(44.1%)とほぼ同率であった. 2年連続で検診を実施できた仮設団地7か所を比較すると,24年度はすべての団地からDVTが検出(4.7-11.8%,1-3例)されたのに対し,25年度は中山熊野堂(15.2%,7例)と公共ゾーン(6例,10.5%)の2ヵ所から集中的に検出された.2ヵ所の仮設団地は比較的規模が大きく,世帯数が多い傾向にあった.歩行回数と受診回数の変化は24年度と同様であった. 本年度の町別のDVT検出率は山元町(7.2%)が亘理町(4.5%)より高かった.平成25年度に本研究と同様の検診を実施した他地区と比較すると,岩手県大槌町(11.0%),釜石市(9.5%),陸前高田市(8.4%)など三陸海岸沿岸部より検出率は低値であったが,福島県南相馬市(4.8%)とはほぼ同率であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は24年度と同様,津波被災地である宮城県亘理郡内の2町(亘理町,山元町)において,前年と同規模のDVT検診を実施することができた.昨年度より準備調整時間は短縮され,研究協力者も宮城県内の医療関係者と合わせて50名に達した.被検者は昨年より100名以上減少したが,これは山元町の3か所の仮設団地がで24年度と異なったことによる.この3か所は24年度に実施した3か所より規模が小さい団地が含まれており,被験者減少につながったものと考えられる. 本年度も適当な対照候補地が得られなかったが,平成25年度の期間中にほぼ同じメンバーで福島県南相馬市においてDVT検診を実施することができた.これにより時間的差異と場所的な差異を比較する機会を得られたため,今後の解析に有益な情報を得ることができた. 以上より概ね順調に進展しているものの,次年度に向けて新たな工夫が必要と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は先の2年と同様,亘理郡内の複数の仮設住宅団地でDVT検診を実施する.すでに実施については亘理町と山元町の了承を得ており,本年11月1日と2日に実施予定である.引き続き,過去2年の検診に参加した研究協力者に協力を要請し,スタッフの確保に努める.これにより,仮設住宅団地におけるDVT検出率を発災後2年目,3年目,4年目で比較する.昨年に引き続きD-dimer値とNT proBNP値も測定し、血液凝固線溶機能と心機能の評価も実施する.山元町については,可能であれば24年度と同じ仮設住宅団地での実施を要請する. 対照地は昨年の南相馬市に加え,地震被害を受けていない福井県内の漁村,農村地区において,DVT検診の実施を働き掛ける.25年度は実施できなかったが,福井県坂井市やあわら市においてDVT検診の実施を検討する. これあとの背景を元に被災地間のDVT検出率の比較,同一地点での時間的比較を行い、被災地の立地条件や被害状況も加えた解析を実施する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では被災地内の仮設住宅地を移動するため,レンタカーを利用している.予想より走行距離が若干短く,わずかな使用額が残存した. 平成26年度分の消耗品に利用する予定である.
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Research Products
(3 results)