2013 Fiscal Year Research-status Report
抗リン脂質抗体症候群の新たな鑑別診断法の確立と病態発症機序の解明
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24590696
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
野島 順三 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30448071)
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Keywords | 抗リン脂質抗体症候群 / 全身性エリテマトーデス / 酵素固相化免疫測定法 / 抗リン脂質抗体 / ループスアンチコアグラント |
Research Abstract |
抗リン脂質抗体症候群(APS)の検査診断法の確立を目的に,全身性エリテマトーデス患者331例を対象に,各種抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体,抗カルジオリピン/β2グリコプロテインI抗体:aCL/β2GPI,抗β2グリコプロテインI抗体:aβ2GPI,抗ホスファチジルセリン抗体,抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン抗体:aPS/PT,抗プロトロンビン抗体)をELISAにて同時測定し,APSに関連する各種合併症発症との関連を解析した.その結果,動脈血栓症の最も強い危険因子としてaPS/PTが,静脈血栓症の危険因子としてaβ2GPIが特定された.また,習慣性流死産の発症にはaCL/β2GPIとaPS/PTが関連していた.(Thromb Res. 2014) さらに,代表的なAPS患者血漿(aβ2GPIとaPS/PTが共に陽性の患者5例、aβ2GPI単独陽性患者3例・aPS/PT単独陽性患者2例)から純化・精製したIgG抗体を用いた末梢単核球細胞(PBMC)刺激実験にて,aβ2GPI-IgGとaPS/PT-IgGは,それぞれ単独で単球表面への組織因子(TF)発現,培養液中への炎症性サイトカイン(TNFα・IL-1β)の産生,さらには単球走化性活性化因子(MCP-1)の産生を惹起することを明らかにした.さらに,これらの作用は,aβ2GPIとaPS/PTが共に陽性のIgGにて強力に促進されることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画は,①平成24年度に確立した認識エピトープ別抗リン脂質抗体ELISAの臨床的有用性の検証、および②各種抗リン脂質抗体の単離・精製と血栓形成作用の解明に関する研究であり,認識エピトープ別抗リン脂質抗体ELISAシステムを用いることにより,個々の患者毎に合併症パターンおよび発症リスクをある程度予測出来る可能性を見出した. さらに,代表的な抗リン脂質抗体症候群患者血漿から純化・精製したIgG抗体を用いた末梢単核球細胞(PBMC)刺激実験にて,aβ2GPIとaPS/PTによるTF依存性血栓形成とサイトカイン誘発性炎症反応の相乗効果がAPSの動脈血栓塞栓症の発症に強く関連している可能性を見出し,当初の研究目的を概ね達成できた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,正常ヒト臍帯動脈内皮細胞(HUAEC)と末梢単核球細胞(PBMC)の共培養系(細胞接着系とセルインサートシステムによる細胞非接着系)モデルを用いて,aβ2GPIおよびaPS/PTが,細胞表面TF発現・接着分子の発現・各種サイトカインの産生・一酸化窒素(NO)産生・活性酸素種(ROMs)産生などにどのような影響を与えるか総合的に解析する. さらに,抗リン脂質抗体症候群の血栓塞栓症の発症に強く関連しているaβ2GPIとaPS/PT,さらには習慣性流死産の発症に関連しているaCL/β2GPIについて,IgGクラスとIgMクラスの合計6種類の抗リン脂質抗体を同時に測定できるシステムを構築し,抗リン脂質抗体症候群の検査診断の向上を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度以降の主たる研究計画は、各種抗リン脂質抗体の血栓形成作用の解明と効果的な阻害薬の検証であったが、抗リン脂質抗体症候群の検査診断法の確立を急ぐ必要があり、25年度の前半は、24年度に確立した認識エピトープ別抗リン脂質抗体ELISAシステムの有用性を検証するための臨床研究に費やした。そのため、正常ヒト臍帯動脈内皮細胞と末梢単核球細胞の共培養実験系による各種抗リン脂質抗体の血栓形成作用の解明に関する研究の多くが26年度に持ち越すこととなり、細胞培養関連試薬等物品費が次年度に繰り越された。 平成26年度は、正常ヒト臍帯動脈内皮細胞と末梢単核球細胞の共培養実験モデルを用いて各種抗リン脂質抗体の血栓形成作用の解明と効果的な阻害薬の検証に関する実験を予定しており、①正常ヒト臍帯動脈内皮細胞を中心に細胞培養関連試薬、②各種サイトカイン(TNF-α, IL-1β, IL-6, IFN-γ, MCP-1)測定用ELISAキット、③各種(TF, TNF-α, IL-1β,VCAM-1, MCP-1)mRNA発現定量のためのリアルタイムRT-PCR関連試薬、④各細胞内シグナル伝達測定用キット(Trans AM ELISA, Fast Activated Cell-based ELISなど)、⑤各シグナル伝達経路阻害剤(SB203580・PDTC・PD98059・JNK inhibitorなど)、⑥酸化ストレス度測定のためのd-ROMsキットおよびBAPキット、⑦NO定量用Griess試薬、⑧その他実験用器具などに充当する。
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Research Products
(10 results)