2012 Fiscal Year Research-status Report
赤血球膜Na+/K+-ATPaseの簡易活性測定法開発と臨床検査への応用
Project/Area Number |
24590702
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
三村 邦裕 千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (40439039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 聡 千葉科学大学, 危機管理学部, 助教 (30406805)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | なし |
Research Abstract |
本研究の最終目的は赤血球からのNa+/K+-ATPaseを単離する方法を開発することで糖尿病を始め、骨粗鬆症、関節リウマチなどの生活習慣病の予防や診断に貢献できる新たな臨床検査法を確立することである。平成24年度では下記に示す基礎的検討を行った。 (1)HPLCによるNa+/K+-ATPaseの単離のための検討 Na+/K+-ATPaseのSubunits構造解析のために必要な条件として、TSKgel G4000SWXLを用いてElution Bufferに界面活性剤としてSDSおよびEDTAを混じることによりα、β、γの検出が可能となり、またOligomers構造解析のためにはTSKgel G4000SWXLとG3000SWXLのカラムを組合せ、Elution Bufferに界面活性剤としてC12E8とプロピオン酸カリウムそしてpHを酸性の5.6にすることが適していることを見いだした。さらに赤血球膜からの単離に適した条件として、WGA(小麦胚芽 )レクチンカラムを用いて、タンパクがレクチン -アガロースカラムに結合した後、阻害糖であるN-アセチルグルコサミン(GlcNAc、NAG)を用いてリニアグラジエントで溶出することでNa+/K+-ATPaseを単離できることを明らかにした。 (2)関節リウマチとNa+/K+-ATPaseとの関連性 関節リウマチ患者は破骨細胞が活性化しており、骨から血中へのCaの漏出が進み、その結果、骨粗鬆症が認められる。関節リウマチ患者(20名)の血清検体を用いて我々が開発したTRACP-5a,5b同時検出法で両者の活性を測定したところ5aは全ての検体で高値を示し、骨疾患を併発している患者は5bも高値を示すことが明らかとなった。今後、上記方法でのNa+/K+-ATPase活性値との関連性の解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画では当該年度(平成24年度)においては、HPLCを用いた赤血球膜からのNa+/K+-ATPaseの単離を試みることが主の目標となっていた。実際には蛋白の単離には至っていないが、赤血球膜からの分離方法やNa+/K+-ATPaseの構造解析に必要な基礎的検討は完了した。今後、ヒト赤血球を用いて、Na+/K+-ATPaseを単離し、得られた(αβ)4-Tetraprotomerを電気泳動法やUV法(紫外部吸光度法)またRI法(視差屈折法)でもって分子量測定を行い、純度を確認する予定である。そのようなことからも現在の達成度は80%位といえよう。一方、研究計画では平成25年以降に予定していた糖尿病、骨粗鬆症などの生活習慣病患者のNa+/K+-ATPase活性値と病態との関連性について、一部、当該年度において患者検体を用いて実験を進めることができた。以上のことから本研究は、おおよそ計画通り研究が進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は成人健常者ヒト赤血球から、Na+/K+-ATPaseの単離を行い、下記に示す方法でさらに研究を進める予定である。 【赤血球Na+/K+-ATPaseの(αβ)4-Tetraprotomer (T標品)の純度検定】ブタ腎から得られた単離T標品からはATPase比活性やそのウアバイン感受性そして電気泳動像と、本研究で得られた赤血球からのT標品を比較することにより、微量法の妥当性を評価する。 【内因性ウアバインとNa+/K+-ATPase複合体の簡易活性測定法の開発】ウアバイン結合量は、放射性3H標識をした市販試薬の3H-ウアバインとT標品をインキュベーションした後、ラジオ・ゲルクロマトグラフィーを行い、その溶出液の紫外吸光度(A280nm)と3H-放射能をモニターすることにより、単位蛋白質量当りを定量する。 【糖尿病や骨粗鬆症患者のNa+/K+-ATPase活性値と病態との関連の検証】破骨細胞から出される骨代謝マーカーの酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP-5b)を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いた手法で分離することが可能である。糖尿病や骨粗鬆症患者の血清中に含まれるTRACP-5bをヘパリンカラムで分離し、それらと新規開発する赤血球Na+/K+-ATPase活性値との相関を見出すことで新たな骨粗鬆症診断のための指標を見いだす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は消耗品費を中心に計画している。赤血球Na+/K+-ATPaseの純度測定のための電気泳動を行うためにゲルボンドフィルム、寒天、アガロース、各種特異抗血清の試薬類を購入する。また電気泳動に必要なBuffer試薬などを必要とする。 HPLCでは赤血球分離のためのレクチン-Agaroseカラム、TSKgel(G4000+G3000)SWXLカラム。また生活習慣病との関連性を検証するためにTRACP-5b用ヘパリンカラム(TSKgel Heparin-5PW)、またそれぞれのガードカラムを購入予定である。さらに検体を濃縮するために限外濃縮器およびアミコンウルトラも使用するために研究費として計上する。
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