2013 Fiscal Year Research-status Report
赤血球膜Na+/K+-ATPaseの簡易活性測定法開発と臨床検査への応用
Project/Area Number |
24590702
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
三村 邦裕 千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (40439039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 聡 千葉科学大学, 危機管理学部, 助教 (30406805)
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Keywords | 赤血球膜タンパク / Na+/K+-ATPase / ナトリウムポンプ / HPLC / C12E8 |
Research Abstract |
本研究の最終目的は赤血球からのNa+/K+-ATPaseを単離する方法を開発することにより糖尿病を始め、骨粗鬆症、関節リウマチなどの生活習慣病の予防や診断に貢献できる新たな臨床検査法を確立することにある。そのため平成25年度では24年度に行ったHPLC(高速液体クロマトグラフィ)を用いた赤血球膜からのNa+/K+-ATPaseの単離を試みるための基礎的研究を元に実際に赤血球膜からの蛋白の単離を試みた。 HPLCによるNa+/K+-ATPaseの単離 赤血球膜からの膜蛋白質を精製するため赤血球に冷却H20を作用させることで溶血させ、遠心分離を行い膜蛋白のみを精製した。その後、非イオン性界面活性剤のC12E8と膜蛋白濃度の混合比を変化させ、可溶化濃度を測定したところ蛋白濃度2mg/ml:C12E8濃度6mg/mlの割合が最も可溶化されることが示された。そこでP/C=2/6で可溶化し、0.2mg/ml C12E8 pH5.6の溶出液を用いてNa+/K+-ATPaseのOligomers構造の検出のためC12E8-SECを行ったところ、複数のピークが認められた。アルブミンの分取位置から分子量を推測し、Na+/K+-ATPase のTetraprotomer(T)、Diprotomer (D) 、Protomer(P)であることが示唆された。さらにNa+/K+-ATPaseサブユニット構造(α、β、γ)の検出と定量のために採取したT分画、D分画、P分画を濃縮し、1.0%SDS pH7.0の溶出液を用いてHPLCを用いて分離を試みた結果、3つの溶出位置の異なるピークが認められた。それぞれピークの大きさは異なるもの同一溶出位置に分取されたため、Na+/K+-ATPaseのα、β、γであることが推察された。またWGA-Agaroseゲル(Bio Rad)を用いてNa+/K+-ATPase以外の夾雑物を除くことでより純度の高い赤血球膜Na+/K+-ATPaseの分離を試みた。その結果、0.03MのGlucNacで溶出したピークを目的物質として捉えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画では平成25年度の実験において赤血球Tetraprotomer(T)の純度検定や内因性ウアバインとNa+/K+-ATPase複合体の検出と簡易活性測定法の開発を行うことが主の目的となっていた。前年度の目標を達成するために精力的に実験を進めたが、赤血球膜に存在するNa+/K+-ATPaseは単離することはできても非常に微量のため検出が難しく、濃度の調整や夾雑物の除去に時間を取られ、試行錯誤を繰り返したために計画通りには進んでいない。しかし、赤血球膜からの膜蛋白質の精製、Na+/K+-ATPaseのOligomers構造の検出そしてNa+/K+-ATPaseサブユニット構造の解析を行うことができ、目標の80%は達成されたと考える。また糖尿病、骨粗鬆症などの生活習慣病患者のNa+/K+-ATPase活性値と病態との関連性について、骨粗鬆症患者(20名)の血清検体を用いて我々が開発したTRACP-5a,5b同時検出法で両者の活性を測定した。その結果、5bは全ての検体で高値を示し、マクロファージ活性化の指標となる5aについては炎症性疾患の併発と関連して上昇していることを見いだした。骨細胞のNa+/K+-ATPase活性値とCa代謝とは密接な関係があるためTRACP-5a,5bとNa+/K+-ATPaseとの関連性を見いだす意義がある。以上のことから本研究は、おおよそ計画通り研究が進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、 (1)「赤血球Na+/K+-ATPaseの(αβ)4-Tetraprotomer (T標品)の純度検定」既に我々が先行研究で試行しているブタ腎から得られた単離T標品からはATPase比活性やウアバイン感受性が求められている。それらを赤血球膜から得られた標品と比較検討する。さらに電気泳動像と、本研究で得られた赤血球からのT標品を比較することにより、微量法の妥当性を評価する。 (2)「内因性ウアバインとNa+/K+-ATPase複合体の簡易活性測定法の開発」赤血球から得たT標品をSDS処理した後、ラジオクロマトグラフィ法で3H-ウアバイン結合量を測定することでウアバイン結合量をその溶出液の紫外吸光度(A280nm)と3H-放射能をモニターすることにより、単位蛋白質量当りを定量する。またSDS処理しないT標品を用いて内因性ウアバインまたは市販ウアバインに対する抗体を使って内因性ウアバイン結合量の測定を試みる。 (3)「糖尿病や骨粗鬆症患者のNa+/K+-ATPase活性値と病態との関連の検証」骨質は骨基質であるコラーゲンや石灰化、マイクロダメージによって規定されている。これらは骨芽細胞や破骨細胞の働きそしてそれらの新陳代謝(リモデリング)、さらに高血糖や酸化ストレスなど骨基質を取り巻く環境に影響される。そこで破骨細胞から出される骨代謝マーカーの酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP-5b)とマクロファージから出されるTRACP-5aを高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で分離し、それらの活性値と新規開発する赤血球Na+/K+-ATPase活性値との相関を見出すことで糖尿病、骨粗鬆症そして関節リウマチの負のスパイラルを早期に発見し、治療に結びつけることができれば生活習慣病増悪を防ぐための方法になると考え検証を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の消耗品費の内、赤血球Na+/K+-ATPaseの純度測定を行うため、電気泳動を用いて比較検討する予定であった。そのためゲルボンドフィルム、寒天、アガロース、各種特異抗血清の試薬類を購入するため予算として計上していたが、赤血球膜からの蛋白精製に時間を要したため、次年度に行うこととした。またレクチン-Agarose以外の分離精製担体を用いてアフィニティークロマトグラフを行う予定であったが同じ理由から次年度に先送りした。 電気泳動に必要なBuffer、ゲルボンドフィルム、寒天、アガロースそして各種特異抗血清をそしてWestern Blot用の試薬などを購入する予定である。また分離精製用の担体としてBlue Sepharose 、DEAE-Sepharose、ProteinG Sepharoseなどを購入する予定である。
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