2013 Fiscal Year Research-status Report
難治性白血病の分子機構の解明:FLT3ーITDによる薬剤耐性と関連分子の診断応用
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24590709
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
宮地 勇人 東海大学, 医学部, 教授 (20174196)
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Keywords | 白血病 / 抗がん剤 / 治療抵抗性 |
Research Abstract |
本研究では、予後不良な染色体・遺伝子異常、特に FLT3-ITDを有する白血病細胞における抗がん剤耐性の機序を明らかにするため、骨髄微小環境、特に低酸素状態に着目し、抗がん剤耐性をもたらす遺伝子発現異常とそれを制御する関連miRNA分子について、新たなバイオマーカーとしての意義を明らかとし、それらを指標とした抗がん剤耐性の評価法を確立することを目的とする。 本年度は、前年度成果に基づき、FLT3-ITD 導入した白血病細胞株の性状の解析を進めた。FLT3-ITD 導入した骨髄性白血病細胞株K562において、低酸素条件での細胞増殖の安定性の確認を行った。puromycinにて細胞選択した後、FLT3の野生型とFLT3-ITDの状態、さらにFLT3リン酸化の状態を、それぞれRT-PCRとウェスタンブロットにて確認した。細胞の増殖率は、選択後3-4週に低下し、それにともないFLT3リン酸化の状態も低下した。低酸素条件での細胞増殖は不安定であることが判明した。 骨髄微小環境におけるFLT3-ITD陽性白血病細胞の増殖優位性に寄与しうる遺伝子発現を知るため、DNAマイクロアレイ(Human Genome U133 Plus 2.0 GeneChips, Affymetrix 社)を用いた遺伝子発現プロファイリングを行った。2つのFLT3-ITD導入K562において、41,000遺伝子の内、311遺伝子が発現亢進し、18遺伝子が発現低下していた。これらから、細胞増殖、増殖因子受容体、細胞外マトリックス受容体に関連する遺伝子に着目した。細胞増殖関連のFGFR1, IGFBP2, NNMT、RUNX3をコードする遺伝子、キナーゼ型activin受容体、細胞外マトリックスfibronectin受容体、very late antigen (VLA)4受容体などの遺伝子発現の亢進が明らかとなった。 以上より、FLT3-ITD陽性白血病細胞の骨髄微小環境における増殖優位性をもたらす機構の詳細を知る上で有用なマーカーをスクリーニングできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、予後不良なFLT3-ITDを有する白血病細胞における抗がん剤耐性の機序を明らかにするため、骨髄微小環境に着目し、抗がん剤耐性をもたらす遺伝子発現異常について、新たなマーカーとしての意義を明らかとし、それらを指標とした抗がん剤耐性の評価法を確立することを目的とする。 本年度は、FLT3-ITDを有する白血病細胞K562の低酸素下で増殖優位性が確認されてものの、不安定であることが判明した。K562細胞以外の細胞として、骨髄系白血病HL-60にて、FLT3-ITD導入を試みるも成功しなかった。そこで、低酸素下での細胞培養による性状評価について難渋している。 一方、DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイルにより、細胞生存、細胞増殖因子、細胞外マトリックスに関連した候補遺伝子をスクリーニングできた。これら遺伝子は、FLT3-ITDを有する白血病細胞での抗がん剤耐性への関与が示唆されるため、これらの意義を細胞薬理学、細胞内シグナルの観点から調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、予後不良なFLT3-ITDを有する白血病細胞における抗がん剤耐性の機序を明らかにするため、骨髄微小環境に着目し、抗がん剤耐性をもたらす遺伝子発現異常について、新たなマーカーとしての意義を明らかとし、それらを指標とした抗がん剤耐性の評価法を確立することを目的とする。 今後の研究では、FLT3-ITD陽性白血病細胞における遺伝子発現プロファイリングにて明らかとなった、細胞生存、細胞増殖因子、細胞外マトリックスに関連した候補遺伝子について、細胞薬理学、細胞内シグナル伝達の観点に焦点を絞り、以下の実験を行う。1)骨髄微小環境の要素とFLT3-ITD陽性白血病細胞の抗がん剤耐性の関係を知るため、様々な培養条件(細胞外マトリックスの存在下および線維芽細胞との共培養)にて抗がん剤感受性試験を行う。細胞と細胞外環境の相互反応を抑制するモノクローナル抗体や競合ペプチドを用いて、抗がん剤への耐性度変化を調べる。2)上記の培養条件にて、FLT3-ITD陽性白血病細胞における抗がん剤耐性の薬理分子機構と影響を知るため、抗がん剤の膜輸送、細胞内活性化・不活性化、DNA修復に関する遺伝子変異や機能の解析を行う。3)候補遺伝子の制御機構を明らかとするため、プロモータ領域に結合しうる分子を選択し、それぞれに特異的な阻害物質の処理における発現の変化を調べる。4)抑制の効果を知るため、shRNAを有するプラスミドを細胞にトランスフェクションし、抗がん剤への耐性度変化を調べる。5)抗がん剤耐性に寄与が明らかとなった遺伝子を検出対象として、白血病治療反応性評価のための検出パネルを作成する。
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