2013 Fiscal Year Research-status Report
多機能メカノセンサーTRPV2の成体知覚神経細胞における機能と疼痛への関与の精査
Project/Area Number |
24590725
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
片野坂 公明 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (50335006)
|
Keywords | TRPV2 / 疼痛 / 機械受容 / 一次知覚神経 / 侵害受容器 / 熱痛覚 |
Research Abstract |
本研究は、成体の末梢神経系における非特異的陽イオンチャネルTRPV2の機能と役割について、独自に作成した知覚神経特異的遺伝子欠損マウスを用いて解析するものである。 平成25年度は、TRPV2の細胞レベルでの機能の検討を行った。昨年度までに樹立した一次知覚神経特異的TRPV2欠損マウス(TRPV2 flox/flox; Cre+)から脊髄後根神経節(DRG)細胞を単離してシリコン薄膜上で培養した後、シリコン膜の伸展により生じるカルシウム応答をFura2イメージングにより記録し、野生型マウスのDRG細胞の応答と比較した(H25計画の実験3)。野生型の細胞においては、伸展刺激後の細胞内カルシウムレベルの回復が速いタイプと遅いタイプの細胞が観察された。この二つの応答を示す細胞は、薬剤感受性・機械閾値などの点で異なる細胞集団であることが示唆された。さらに、TRPV2欠損マウスのDRG細胞では、回復の速い高閾値タイプのストレッチ応答を示す細胞の割合が有意に減少しており、TRPV2が細胞レベルの機械応答に関与することが示唆された。 また、昨年度実施しなかった、高温感受性の脊髄神経節DRG細胞の細胞種の解析を行った(H24計画の実験2)。麻酔下の野生型マウスの後肢に高温刺激を与えたあと急速灌流固定を行い、神経活動マーカーであるpERKに陽性を示すDRG細胞を免疫組織化学法により同定した。さらに蛍光二重染色により、細胞種を同定するためのマーカー分子とpERKとの共発現の有無を調べており、現在も継続中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた研究計画のうち、これまでに、「知覚神経特異的遺伝子欠損マウスの系統の樹立」、「遺伝子欠損マウスでの痛覚行動試験」、「遺伝子欠損マウス知覚神経細胞の機械応答解析」については、予定通りに終了しており、TRPV2の機械受容における役割を示唆する結果が得られている。また、高温感受性の脊髄神経節細胞の細胞タイプを解析する実験を進めている。研究開始当初は平成24年度に実施予定であった、「触圧覚と固有感覚を調べるための行動実験の構築と予備検討(H24年度計画の実験1後半)」、および「神経座滅損傷によるTRPV2の発現変動の検討(H24度実験計画の実験3)」については 、時間的な制約から実施できていない。 以上、本研究の柱である「知覚神経特異的遺伝子欠損マウスを用いたTRPV2の機能解析」に関しては概ね計画通りに進んでいるものの、その他計画に関してはやや遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、現在進行中の蛍光二重染色法による高温感受性DRG細胞の細胞種の解析を継続して実施し、新たな高温感受性細胞の同定を行う。また、平成24年度に実施予定で未だに始められていない二つの実験:「触圧覚と固有感覚を調べるための行動実験(H24年度計画の実験1後半)」と「神経座滅損傷によるTRPV2の発現変動の検討(H24度実験計画の実験3)」を開始する。 但し、最終年度(H26年度)4月に研究代表者の所属の変更があるため、前者(実験1後半)の実施に必要な、実験施設・設備の準備に時間を要すると予想されること、また最終年度という時間的な制約を鑑みて、最終年度は実験3を優先して進める。同時に、実験1実施のための準備も並行して進める。実験3については、顕著な発現分子の変動が観察され、神経損傷や軸索再生へのTRPV2の関与が強く示唆される場合には、さらに実験を進め、神経損傷後の痛覚過敏の成立過程や、軸索再生の時間経過とTRPV2発現の関連性を詳細に調べ、TRPV2欠損によるこれらの過程への影響を解析する。しかし、明瞭な発現レベルの変動が見られない場合には、本実験は中断し、実験1を優先して実施する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度(平成25年度)は、研究代表者の所属の変更予定があり、変更後の実験設備等の状況が不明であったため、実験計画が計画通り実施可能かどうかがわからない状態であった。実験計画全体を予定通り進めるに当たり、所属変更後に、これまでに使用していた前所属部局所有の機器に対する代替品の購入が必要となることを考慮して、次年度使用分として持ち越した。 繰り越した経費については、次年度(平成26年度)の物品費として、新しい所属部局における代替機器等の購入に使用する。旅費およびその他の経費については、ほぼ交付申請時通りの使用を予定している。
|
Research Products
(5 results)