2013 Fiscal Year Research-status Report
神経障害性疼痛における骨髄由来ミクログリアを介した治療戦略
Project/Area Number |
24590729
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
新山 幸俊 札幌医科大学, 医学部, 講師 (90423764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 敦史 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (10551492)
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Keywords | 骨髄由来ミクログリア / 神経障害性疼痛 / 不安・抑うつ |
Research Abstract |
慢性疼痛は不安や抑うつなどの不快情動を惹起するが,その機序は解明されていない.近年,脳内には前駆細胞由来のレジデントミクログリアだけでなく,侵害刺激を契機として骨髄由来単球細胞が脳内に移行・分化した骨髄由来ミクログリア(bone marrow-derived microglia: BMDM)が存在することが報告されている.本研究の目的は慢性疼痛による不快情動の形成に脳内の骨髄由来ミクログリアが関与するという仮説を明らかにすることである. 平成24年度までにわれわれはC57BL/6JマウスにGreen Fluorescent Protein(GFP)トランスジェニックマウスの骨髄細胞を移植し,GFP陽性キメラマウスを作成した.骨髄移植4週間後に坐骨神経を部分結紮し,神経障害疼痛モデルマウス(Model群)を作成した.また,侵襲を与えない群(Naïve群)と坐骨神経の剖出のみを行う群(Sham群)を作成し,比較対象とした.坐骨神経部分結紮1,2,4週後のBMDMの脳内への集積を検討したところ,坐骨神経部分結紮4週後のModel群でのみBMDMが扁桃体中心核に有意に集積した(P 平成25年度は各群について坐骨神経結紮1,2,4週後に不安・抑うつに関する行動学的解析(高架式十字迷路試験)を行った.その結果,坐骨神経結紮4週後に,Model群にのみ不安・抑うつ行動が観察された.これはBMDMの扁桃体中心核への発現の傾向と一致する.扁桃体は不快情動と深く関わっており,本研究結果から,扁桃体中心核に集積したBMDMが慢性疼痛による不快情動の形成に関与する可能性が示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は高架式十字迷路を用いた不安・うつ状態の行動学的解析を行う予定であったが,目標を達成し,前述のような結果が得られている.また,本研には頭部への放射線照射によりBlood Brain Barrierが直接的な障害による影響がミクログリア遊走の原因となるのではないかという問題があった.しかしながら頭部を鉛で遮蔽することで放射線の直接的なBlood Brain Barrierへの障害に対する影響を抑えることができた(ただし,脊髄レベルには照射されている)という改善点は大きく,今後の研究を進めやすくなった.
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Strategy for Future Research Activity |
神経障害性モデルマウスでは坐骨神経結紮4週後にBMDMが扁桃体中心核に集積し,それが不安・うつ状態の行動を惹起する可能性が示唆された.当初,われわれは骨髄抑制剤の投与により,BMDMの形成・遊走を抑制し,不安・うつ状態の改善させることを検討していたが,それでは全身に与える影響が大きいと判断し,現在は,脳内に骨髄由来ミクログリア遊走・および活性化させる機序を分子学的レベルで解析し,その標的分子を同定すべく研究を継続している.具体的には神経結紮28日後に,扁桃体中心核より骨髄由来(GFP陽性)ミクログリアと内在性(GFP陰性)ミクログリアを分別単離し,RT-PCRを用いて分子生物学的解析を行う. 最終的にはそれらの標的分子の拮抗薬を使用することで行動学的解析およびBMDMの発現がどのように変化するかを研究する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究進行中であるが,当研究室に消耗品の在庫があったためそちらを優先的に使用したため 在庫があった消耗品は使用しきったため,今後は改めて購入予定である.また,解析ソフトなどを新たに購入する予定である.
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