2013 Fiscal Year Research-status Report
新規遺伝子改変マウスを用いた疼痛神経回路網の蛍光可視化システムの開発
Project/Area Number |
24590736
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
西田 和彦 関西医科大学, 医学部, 助教 (80448026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 伸治 関西医科大学, 医学部, 講師 (70276393)
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
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Keywords | 脊髄 / カルシウムイメージング / 疼痛 |
Research Abstract |
本研究ではin vivoカルシウムイメージングを用いて体性感覚刺激に応答するマウス脊髄後角ニューロンの神経活動の三次元分布の解析を行い、脊髄後角神経回路による体性感覚情報処理のメカニズムの解明を目指すものである。 今年度は皮膚の異なる部位への疼痛刺激を行うことにより、脊髄後角における刺激応答ニューロンの局在を解析した。その結果、マウス腰部脊髄後角(L1)においては、その部位に入力する一次求心性ニューロンを介する疼痛刺激のみならず、それより2体節離れた脊髄に入力する疼痛刺激によっても多くの脊髄後角ニューロンの神経活動が認められた。異なる層の間の介在ニューロンを介した情報の伝播がそれほど顕著には認められないという昨年度得られた成果と合わせて考えると、脊髄後角介在ニューロンは異なる層の間よりも吻尾軸方向の異なる体節間の体性感覚情報の伝達に大きく関与する可能性が示唆された。 また、脊髄後角ニューロンの体性感覚刺激への応答性を神経サブタイプ特異的に解析するために、カルシウムインディケーター蛋白質をコンディショナルに発現するレポーターマウスを用いた解析に着手した。このレポーターマウスを脊髄後角介在ニューロン、および脊髄後角抑制性介在ニューロン特異的にCreリコンビナーゼを発現するドライバーマウスとそれぞれ交配させて、それぞれのニューロン特異的にカルシウムインディケーター蛋白質を発現させる試みを現在行っている。また予備実験として、これらのドライバーマウスとROSA26レポーターマウスとの交配マウスを用いて、組換えが起こる脊髄後角ニューロンの細胞種の同定を合わせて行っており、ドライバーマウスとして適切かどうかの検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、今年度は異なる部位への皮膚刺激に応答する脊髄後角ニューロンのin vivoカルシウムイメージングを行うことにより、脊髄後角介在ニューロンが脊髄後角の吻尾軸方向への情報の伝播に関与することを明らかにした。この成果は脊髄後角神経回路の情報処理機構の解明に大きく貢献するものであり、本研究の当初の目的の一部が達成されたといえる。 一方、レポーターマウスを用いたin vivoカルシウムイメージングについては予想よりも伸展が見られなかった。その理由はレポーターマウスでのカルシウムインディケーター蛋白質の発現がヘテロのマウスでは弱かったためであり、現在ホモマウスを用いた解析への方針転換を図っている。現在までにレポーターマウス(トランスジェニックマウス)におけるトランスジーンの挿入箇所をジェノミックウォーキングにより決定し、ホモマウスをジェノタイピングにより簡便にスクリーニングする系を確立した。また、当初予定していた脊髄後角興奮性介在ニューロンのドライバーマウスがよく機能しないことが分かり、別のドライバーマウスの入手を現在検討している。 また当初計画していた光神経科学の技術を用いた解析は上記の研究に時間を割かれ遂行することができなかった。 以上の進展状況を総合的に判断すると異なる部位への皮膚刺激に対する脊髄後角ニューロンの応答性についてはほぼ計画通りに実験が遂行され、またレポーターマウスを用いた解析はやや進捗が遅れているものの次年度以降の研究の礎が築かれたということができる。したがって全体としては「おおむね順調に進展している」と自己評価するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
上記に記した前年度の研究のうち、レポーターマウスを用いたin vivoカルシウムイメージングをさらに推し進める予定である。すべての脊髄後角ニューロン、および脊髄後角抑制性介在ニューロンで特異的にCreリコンビナーゼを発現するドライバーマウスとの交配により得られたマウスを用いて、前年度までに行ったような疼痛、接触、熱刺激、および異なる部位への皮膚刺激に応答する脊髄後角ニューロンのパターンを解析する。また脊髄後角興奮性介在ニューロン特異的ドライバーマウスを入手し同様な解析を行うことにより、興奮性、抑制性ニューロンの活動パターンに違いが見られるかどうかについて解析する。 一方、昨年国外のグループにより報告されたGCaMPタイプ超高感度カルシウムインディケーター蛋白質を用いて、脊髄後角ニューロンのスパインでのin vivoカルシウムイメージングについて解析していきたいと考えている。In vivo カルシウムイメージングの際のマウスの呼吸、心臓の拍動に伴う脊髄の動きを今まで以上に抑えるために、気胸手術、肺への酸素吸入を施すことも検討している。この解析により脊髄後角ニューロンの樹状突起上に多数存在するスパインのうち、どこに感覚入力が入るかが明らかになると期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脊髄後角興奮性ニューロンのドライバーマウスの入手が遅れ、それに伴うマウスの輸送費にかかるコスト、またマウスの維持費を今年中に使用できなかった。また光神経科学の技術を用いた実験も遂行しなかったので、当初そちらに割り当てられるはずの予算も使用しなかった。 次年度は脊髄後角興奮性介在ニューロンのドライバーマウスの入手に予算を使用する予定である。 またレポーターマウスを用いたin vivoカルシウムイメージングのための各種遺伝子改変マウスの維持、またジェノタイピングによるマウスのスクリーニングのために予算を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)