2012 Fiscal Year Research-status Report
うつ病・不安モデル動物におけるオピオイド鎮痛薬の作用機序解析
Project/Area Number |
24590738
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 公道 安田女子大学, 薬学部, 教授 (80025709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井手 聡一郎 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30389118)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オピオイド / 鎮痛 / 麻薬拮抗性鎮痛薬 / ノルアドレナリントランスポーター / モルヒネ / トラマドール / 抑うつ |
Research Abstract |
抑うつ・不安などの負情動が、痛みの感覚的側面に影響を与えることは、広く認識されつつあるが、負情動存在下での鎮痛薬の作用変化の有無やその機構は未だに不明瞭であり、機構の解明とそれらの知見を基盤とした疼痛治療が求められている。そこで本研究では、抑うつ・不安状態における種々のオピオイド鎮痛薬の抗侵害受容作用特性と、その分子機構を解明することを目的とし、本邦で臨床使用されているオピオイド鎮痛薬の行動薬理学的解析並びにin vitro解析を行う。本年度は、樹立したヒト型ノルアドレナリントランスポーター(NET)を安定的に発現する細胞株を用い、細胞外NE取り込みに対する阻害効果を検討した。その結果、トラマドールとその代謝物が比較的高い阻害活性を有することを確認すると共に、ブトルファノールとペンタゾシンが弱いながらもNET阻害活性を有すること、さらにモルヒネとブプレノルフィンはNET阻害活性を示さないことを明らかとした。そこで、NET阻害活性に差があるトラマドールとモルヒネにまず焦点を絞り、抑うつモデル動物として広く知られている、嗅球摘出モデルを用いた行動薬理学的解析を行った。嗅球摘出マウスでは、モルヒネならびにトラマドール共に、sham手術群と比較し抗熱的侵害受容作用(ホットプレート試験並びにテールフリック試験)の減少傾向が見られた。一方、嗅球摘出マウスは、高架式十字迷路試験を用いた不安様行動の測定、ならびにテールサスペンション試験および強制水泳試験を用いた抑うつ様行動の測定において、いずれもsham手術群と比較して有意な行動変化を示さなかった。このため、嗅球摘出マウスで見られる鎮痛効果の減弱傾向は、抑うつ・不安によって誘発されているのではなく、嗅球摘出によって引き起こされるモノアミン神経伝達変化など他の要因に起因すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初、広く一般に用いられている抑うつモデルである嗅球摘出モデルを用いて研究を進める予定であったが、嗅球摘出マウスでは、想定される行動変化(強制水泳試験法ならびにテールサスペンション試験法における無動時間の延長)が観察されず、他のモデルの作成・検討を行う必要が生じた。一方、NET阻害活性の検討は、検討予定の全ての麻薬拮抗性鎮痛薬に関して評価を終えており、当初の計画以上に進展しており、それらの結果を反映させ、行動薬理学的解析に関して用いる薬物の種類や使用動物数を削減することが可能となった。このため、全体としては、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
嗅球摘出モデルマウスが、行動薬理学的な解析を行う上では抑うつモデルとして適切ではないと考えられたため、現在他のモデルの作成・検討を行っている。具体的には、拘束ストレス負荷(2-3時間の拘束を2-3週間)ならびにchronic mild stress (比較的穏和な複数のストレスをランダムに繰り返し負荷)モデルの検討を現在行っている。特に、テールサスペンション試験および強制水泳試験を用いた抑うつ様行動を指標として、それらの抑うつ動物モデルの有用性を評価した後に、引き続き麻薬拮抗性鎮痛薬の鎮痛効果の評価を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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