2012 Fiscal Year Research-status Report
網羅的遺伝子発現解析による疼痛低下を引き起こす遺伝子メカニズムの解明
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24590741
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
笠井 慎也 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (20399471)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 疼痛感受性 / 鎮痛薬感受性 / 全ゲノム遺伝子発現 / モデルマウス |
Research Abstract |
オピオイド受容体高発現マウス系統として知られているCXBHリコンビナント近交系マウス系統において、ミューオピオイド受容体作動薬であるモルヒネによる鎮痛効果の解析を行った。Tail-flick試験においては、CXBHマウス系統はprogenitor系統の一つであるBALB/cBy系統と比べモルヒネによる鎮痛効果が有意に亢進していたものの、C57BL/6系統とはモルヒネの鎮痛効果に有意な差異が見られなかった。Hot-plate試験においても、BALB/cBy系統と比べモルヒネによる鎮痛効果が有意に亢進していたものの、C57BL/6系統とは濃度一点を除きモルヒネの鎮痛効果に有意な差異が見られなかった。CXBH系統ではprogenitor系統と比較して、オピオイド性鎮痛薬の分子ターゲットであるミューオピオイド受容体の発現量及び機能に著しい差異が無い事が示唆された。 また、熱刺激試験としてhot-plate試験及びtail-flick試験を、機械刺激試験としてRandall-Selitto試験を、化学刺激試験として酢酸ライジング試験を行い、progenitor系統と比較することで各種侵害刺激による痛覚感受性を詳細に解析した。その結果、CXBHマウスは、hot-plate試験、Randall-Selitto試験及び酢酸ライジング試験の熱・機械・化学刺激すべてに対して著しい痛覚感受性低下を示した。しかし、tail-flick試験においてCXBHマウス系統ではprogenitor系統と比較して有意な痛覚感受性の変化は見られなかった。Tail-flick試験は熱刺激に対する脊髄反射反応を、その他の試験は各種刺激に対する脊髄・上脊髄性反応を測定する試験であることから、CXBHマウスにおける痛覚感受性の著しい低下は、上脊髄性の異常によるものであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画は、以下の(1)-(3)である。(1) ミューオピオイド受容体作動薬であるモルヒネによる鎮痛効果を、hot-plate試験及びtail-flick試験により明らかにする。(2) 熱刺激試験としてhot-plate試験及びtail-flick試験を、機械刺激試験としてRandall-Selitto試験を、化学刺激試験として酢酸ライジング試験を行い、CXBHマウスにおける各種侵害刺激による痛覚感受性の詳細を明らかにする。(3) Illumina社whole-genome expression chip (MouseWG-6 Expression BeadChips)、約47,000転写産物の発現が解析可能)を用いて、網羅的遺伝子発現解析を行う。(1)、(2)は【研究実績の概要】に記載した通り、明らかにすることが出来た。(3)については、CXBHおよびprogenitor系統の全脳から全RNAを抽出後、mRNAのみの増幅を行った。現在、MouseWG-6 Expression BeadChipsを用いて発現解析を進めており、研究計画通りおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降も研究計画に従い、(3) CXBHマウスにおける遺伝子発現変化の網羅的解析、(4) 候補遺伝子の塩基配列解析、(5) 痛覚感受性低下の原因遺伝子の同定を行う予定である。具体的には以下の通りである。 ・MouseWG-6 Expression BeadChipsを用いて網羅的遺伝子発現解析を行う。また、MouseWG-6 Expression BeadChipsに載っていない重要な転写産物については、TaqMan法やnorthern blotting法により個別解析を行う。 ・候補遺伝子が定まらなかった場合、インフォコム社pathway解析モジュールMetaCore等により遺伝子ネットワーク解析を行い、どの情報伝達系に遺伝子発現変化が生じているか解析する。 ・(3) の網羅的遺伝子発現解析の結果、候補に上った遺伝子について、エキソン及び転写調節領域のシーケンシングを行い、塩基配列変異を同定する。 ・塩基配列変異が同定された場合、CXBHマウス若しくはprogenitor系統において脳領域特異的に遺伝子導入を行い、痛覚感受性低下がレスキューされるか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
CXBHマウスにおける遺伝子発現変化の網羅的解析に用いるMouseWG-6 Expression BeadChipsや関連試薬、TaqMan法やnorthern blotting法を用いた個別の遺伝子発現解析に用いる試薬・器具類等の購入を予定している。また旅費では、国内出張として国内学会発表費用及び情報収集のための関連学会・研究会参加費用を計上している。海外出張として国際学会での発表を計画している。
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