2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病の早期発見と末期腎不全・心血管障害予防のための個別化予防システムの開発
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24590746
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
山田 芳司 三重大学, 生命科学研究支援センター, 教授 (90333286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 有 三重大学, 生命科学研究支援センター, 助教 (50287463)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 糖尿病性腎症 / 高血圧性腎硬化症 / ゲノム全領域関連解析 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
慢性腎臓病252例(腎機能高度低下~腎不全群、eGFR < 40 mL min-1 1.73 m-2)および対照249例(腎機能正常群、eGFR > 90 mL min-1 1.73 m-2)についてゲノム全領域関連解析を行い、各種の遺伝統計学的クオリティーコントロールを実施してもなお非常に有意性の高い5種類の一塩基多型(SNPs)を抽出した。5種類のうち4種類のSNPsは3遺伝子上に存在しており、1種類は非遺伝子領域に存在した。この3遺伝子がコードするタンパク質はいずれもヒト腎臓で発現しており、慢性腎臓病の発症に関連している可能性が示唆された。しかし、この5種類のSNPsは全てイントロン領域または非遺伝子領域のタグSNPsであり、タンパク質の機能や発現量との関連は不明であった。研究代表者は、4種類のSNPsが存在する3遺伝子についてdbSNP(米国NCBI)を検索し、日本人に存在し、マイナーアリル頻度が5%以上のSNPsの中で、アミノ酸置換を伴う(非同義置換)SNPsや、遺伝子の転写に関連するプロモーター領域のSNPsを22種類選択した。次に、合計27種類のSNPsについて別の集団(慢性腎臓病910人、対照838人)で解析し、慢性腎臓病と強く関連するSNPsを3種類選択した。さらに別の集団(慢性腎臓病190人、対照1,412人)において、それらのSNPsと慢性腎臓病との関連を検証した。その結果、慢性腎臓病の発症と強く関連するSNPを発見した。また、糖尿病症例における慢性腎臓病の発症と有意に関連する2個のSNPsを発見した。この3個のSNPsを組み合わせることにより、糖尿病症例において慢性腎臓病になるリスクが最も高い群と最も低い群との間には7.4倍の差があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した平成24年度の計画は、「慢性腎臓病のゲノム全領域関連解析で抽出した一塩基多型(SNPs)と公的データベースから選択したSNPsの横断的関連解析」であり、具体的には、ゲノム全領域関連解析により慢性腎臓病と有意な関連が認められた5種類のSNPsおよび公的データベースから選択した23種類のSNPsの合計28種類について、独立した集団で横断的な関連解析を行ない、慢性腎臓病の発症リスクに強く関連するSNPsを同定することであった。 本研究課題では、実際にゲノム全領域関連解析で抽出した5種類のSNPsおよび公的データベースから選択した22種類のSNPsについて(1種類のSNPは解析が困難であった)、独立した2つの集団で慢性腎臓病との関連を解析し、最終的に3種類のSNPsが慢性腎臓病に有意に関連することを明らかにした。したがって、研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、慢性腎臓病感受性遺伝子とSNPsの機能解析を行ない、病態における役割を解明する。プロモーター/エンハンサー領域に存在するSNPsについては、転写活性への影響をルシフェラーゼ・アッセイおよびゲルシフト・アッセイにより解析する。また、特定した慢性腎臓病感受性遺伝子が、細胞内情報伝達機構においてどのような役割を有しているかについて検討する。エクソンに位置しアミノ酸の置換を伴うSNPについては、アリルの異なるcDNAを作成し、培養細胞にトランスフェクションすることにより、腎機能に関連する遺伝子群の発現に及ぼすSNPの影響について解析する。また、慢性腎臓病感受性遺伝子を培養細胞にトランスフェクションして過剰発現させた場合あるいはshort hairpin RNAを用いて発現を抑制した場合の細胞内分子機構の変化について解析する。これらの検討により慢性腎臓病感受性遺伝子およびSNPsの病態における役割について分子レベルで解明する。 また、慢性腎臓病感受性遺伝子のSNPsに加え、既知の危険因子(糖尿病・高血圧・脂質代謝異常・メタボリックシンドローム・肥満・喫煙・蛋白尿など)および年齢・性別を包括した慢性腎臓病の個別化予防システムを、多重ロジスティック回帰分析やステップワイズ変数増加法等の統計学的手法を用いて開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
慢性腎臓病感受性遺伝子およびそのSNPsの機能解析のための分子生物試薬(50千円)、遺伝子発現解析のためのマイクロアレイ(450千円)などの消耗品を購入する。また、同定したSNPsと慢性腎臓病との関連をさらに別の集団で検証するためSNP解析(700千円)を行なう。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Identification of 3q28 and ALPK1 as susceptibility loci for chronic kidney disease in Japanese individuals by a genome-wide association study2013
Author(s)
Yoshiji Yamada, Tamotsu Nishida, Sahoko Ichihara, Kimihiko Kato, Tetsuo Fujimaki, Mitsutoshi Oguri, Hideki Horibe, Sachiro Watanabe, Kei Satoh, Yukitoshi Aoyagi, Michio Fukuda, Motoji Sawabe
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Journal Title
J Med Genet
Volume: published online
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed
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