2013 Fiscal Year Research-status Report
MRSAの新規SCCmec-ACME複合体の遺伝子構造解析と分子疫学調査への応用
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24590751
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80396308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
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Keywords | ブドウ球菌 / MRSA / 表皮ブドウ球菌 / ACME / アルギニン代謝 |
Research Abstract |
arginine catabolic mobile element(ACME)は,ブドウ球菌ゲノムに見いだされた可動性エレメントで,ACME カセット内のアルギニン代謝遺伝子群(arc cluster)によりアンモニアが生成され,皮膚の弱酸性条件下(pH4.2-5.9)での定着能を高めると考えられている。代表的な市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)クローンUSA300 株の蔓延に寄与したと推察されるが,起源は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)をはじめとするコラゲナーゼ陰性ブドウ球菌で,それが種間の水平伝搬により S. aureus へともたらされた可能性が考えられる。ACMEはメチシリン耐性を担う遺伝子 mecA を含むゲノムアイランド,Staphylococcal Cassette Chromosome mec (SCCmec) に近接して挿入され,ACME- SCCmec 複合体を形成している。近年,アジア,ヨーロッパ,オーストラリアにおいて USA300に代表される遺伝子型 ST8-MRSA-IVaとは異なる SCCmec 型の分離株でACME が多く検出されている。当研究室では,日本で最も多く見られる SCCmec 型であるタイプ II,さらにタイプ VのMRSA からACME を見いだし,その遺伝子構造を明らかにした。日本での ACME 保有株は極めて少ないが今後の増加が懸念されることから,本課題では国内における ACME 保有 MRSA 株の動態を明らかにすることを目的とし,(1) ACME 保有率の推移,(2) ACME- SCCmec 複合体の遺伝子構造の多様性を明らかにし,(3) ACME 保有株の遺伝的系統・薬物感受性・病原遺伝子プロファイル等の解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の2012年度は2008-2012年の間に札幌とその近隣の病院にて分離された S. aureus (うち MRSA 1,023 株)を解析した(報告済み)。 本課題申請の際は,S. aureus を研究対象とし,新規に分離された株ならびに研究開始時より前に収集・保存されている菌体を年次を遡る順序で解析する予定であった。しかしながら 2012 年までの調査でS. aureus での ACME 検出率はこの数年の間に増加しているが未だ1.5 % 程度であり,2008 年以前の分離株では更に頻度が低いと予測された。より多数の ACME-SCCmec 複合体の遺伝子構造を得るために2013 年度はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)を対象に加えた。2012 年に札幌医科大学にて分離された CoNS 271株について解析を行った。菌種は S. epidermids が190 株と最も多かった。S. epidermids 87 株,S. capitis 2 株, S.simulans 1 株で ACME が検出された。S. epidermids の ACME 保有率は 45.8 % で,mecA 陽性株では 40.0 %(58/145),mecA 陰性株では 64.4%(58/145)であり,これらは海外での調査と同様の結果であった。S. aureusでは, arc cluster と opp cluster を持つタイプ I 型(ACME I),arc cluster のみを持つ II 型(ACME II),さらに arc clusterの周辺配列が短いtruncated form(tACME II)の 3 タイプが報告されているが,本調査で新たにarc - opp cluster 間の短い亜型ACME Iを見いだし,その遺伝子構造を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2012 - 2013 年に行った CoNS における調査で得られた知見,すなわち「truncated-ACME Iの存在」,「S. epidermidsでは,mecA陰性株での ACME 保有率が優性株に比して高い」を元に次の2点を中心に進める。分離された菌体は番号化し個人を特定できないよう配慮し,データを保管するコンピュータはウイルス対策ソフトがインストールされパスワード管理がなされたものするなど情報の紛失・漏洩等の防止に努める。 1. 対象をふたたびS. aureus に戻し,2012-2013 年の間に収集された臨床分離株 682 株における ACME の保有状況ならびに遺伝子構造解析を進める。これまでの調査結果より,2012 年以前の臨床分離株に比べ ACME の保有率が高いことが予測される。CoNS で新たに見つけられた ACME I の亜型 truncated-ACME I が S. aureus で存在するか否かも解析の対象とする。 2. S. epidermids における,mecA 陰性 ACME 保有株の解析を進める。 ACME カセットの挿入部位・周辺配列を明らかにし,Multilocus sequence typing(MLST)法による sequence type(ST)の決定による系統解析等を行う。種として昨年度までに収集した株を用いて解析する予定だが,必要に応じて札幌市内の民間臨床検査機関などの協力を得て新たな菌株の収集を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度にあたる2012年に事前の予備検討による反応スケールの縮小等によって実験が効率的に進展し,執行金額が当初の見込み額に比べ 1,031,600 円下回った。そのため,本年度は申請時の予定額,1,000,000円を223,228円上回って使用したが,差し引き808,372円を 2014 年度に繰り越すこととなった。 以下(1)-(3)の通りに推算した。2014年度は本申請課題の最終年度であるため,学会発表ならびに論文投稿に必要な金額を高く試算した。 (1)消耗品費として 1,008,372 円を計上した。内訳は遺伝子実験関連試薬 408,372円(酵素,オリゴヌクレオチド合成,PCR 関連試薬,シークエンス関連試薬,分子量マーカーなど),遺伝子解析ソフトウエア 400,000円, プラスチック器具100,000 円(汎用チューブ,プレート,ピペット),そして細菌培養・保存関連試薬100,000 円とした。(2)旅費として 400,000 円を計上した。これは,成果発表あるいは調査資料収集を目的とした国内学会参加費用(1人分,1回)と,海外学会への参加(1人分,1回)に必要な額として推算した.(3)論文投稿に関する校正・掲載費等に必要な額として,300,000 円を計上した(英文論文 2 報分)。
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[Journal Article] Detection and Genetic Characterization of PVL-Positive ST8-MRSA-IVa and Exfoliative Toxin D-Positive European CA-MRSA-Like ST1931 (CC80) MRSA-IVa Strains in Bangladesh2014
Author(s)
Paul S.K., Ghosh S., Kawaguchiya M., Urushibara N., Hossain M.A., Ahmed S., Mahmud C., Jilani M.S., Haq J.A., Ahmed A.A., Kobayashi N.
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Journal Title
Microbial Drug Resistance
Volume: -
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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