2012 Fiscal Year Research-status Report
発育・発達期における低濃度複合水銀曝露による神経行動毒性に対する遺伝的要因の影響
Project/Area Number |
24590755
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hachinohe University |
Principal Investigator |
吉田 稔 八戸学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80081660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雅彦 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (20256390)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水銀蒸気 / メチル水銀 / 複合曝露 / 神経行動毒性 / 発育期 / 発達期 / マウス |
Research Abstract |
発育・発達期における低濃度水銀蒸気(Hg0)と低濃度メチル水銀(MeHg)による複合水銀曝露が神経行動機能へどのような影響を与えるかについてマウスを用いて検討した。水銀曝露は授乳終了3週齢から7週齢まで4週間間行った。Hg0曝露は曝露濃度平均0.096 mg/m3、1日8時間で連日を行った。MeHg曝露は5ppm水溶液に飲水にて曝露を行った。なお動物を対照群、Hg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg複合曝露群に分け、各群22匹を実験に供した。曝露終了後直ちに4匹を屠殺し、臓器中の水銀濃度を測定した。また10週齢で種々の行動試験(オープンフィールド(OPF)試験、受動回避反応(PA)試験、放射状迷路(RM)試験)を実施した。行動試験には各群7匹動物を使用した。OPF試験では対照群と比較し、Hg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg複合曝露群との間で総移動距離、中心に滞在する割合(%)にそれぞれ統計的に有意な差は認められなかった。PA試験はOPF試験同様、対照群と各水銀曝露群との間に保持試行の回避反応時間に統計的な差異は認められなかった。RM試験では対照群と比較し、Hg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg複合曝露群との間に正選択数、誤選択数ともに有意な差異は認められなかった。曝露終了後の臓器中水銀濃度は対照群に比べ、大脳ではHg0曝露群は約15倍、MeHg曝露群は約80倍、Hg0+MeHg複合曝露群は約90倍で高値あった。小脳ではHg0曝露群は約75倍、MeHg曝露群は約140倍、Hg0+MeHg複合曝露群は約200倍、対照群より高値を示した。他の臓器もHg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg複合曝露群ともに対照群に比べ高値を示した。10週齢ではいずれの曝露群も脳内水銀濃度が対照群に比べ高値にあるにも関わらす行動試験に変化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は胎生期における低濃度MeHg水銀曝露(5ppm給餌)では繁殖適齢期における行動試験ではいずれも異常は認められないが、1年後に行った行動試験においてOPF試験、PA試験、水迷路試験に異常が認められ、加齢による神経行動毒性が発現していた(Yoshida et al 2008)。また授乳期における低濃度Hg0曝露(平均0.057mg/m3)でも繁殖適齢期における行動試験では異常は認められず、1年後の神経行動試験でOPF試験に異常が認められ、遅延性の神経行動毒性が発現することが明らかとなった(Yoshida et al 2013)。今回の授乳後のHg0曝露(平均0.096 mg/m3)、MeHg曝露(5ppm飲料水)、Hg0+MeHg複合曝露実験の曝露条件は過去の結果に基づいて行った。繁殖適齢期に測定した行動試験(OPF試験、PA試験、RM試験)結果は対照群とそれぞれの曝露群の間に統計的な有意差は認められず、Hg0曝露(平均0.096 mg/m3)実験やMeHg曝露(5ppm飲料水)実験結果はこれまでの胎生期におけるMeHg曝露、授乳期におけるHg0曝露実験と同様の結果であった。Hg0+MeHg複合曝露実験ではこの群の水銀濃度は大脳で1.2~6.6倍、小脳で1.4~1.9倍、Hg0曝露群やMeHg曝露群に比べ高いにも関わらず神経行動毒性への影響が認められないこと明らかとなった。この結果を踏まえて加齢による神経行動異常の発現について検討することができ、当初の研究の目的に到達している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は平成24年度に行ったHg0曝露、MeHg曝露そしてHg0+MeHg複合曝露マウスについて、1年後に再び行動試験を行い、加齢による影響について検討する。神経行動異常を発現した場合、毒性発現機構を解明する目的で遺伝子発現への影響を調べるために、脳をターゲットとしマイクロアレイ法により解析する。 さらに本年度は個体側の感受性要因として遺伝的要因(メタロチオネイン-I/IIやIII遺伝子欠損)を想定し、メタロチオネイン遺伝子欠損マウス(以下MT-I/II欠損マウス、MT-III欠損マウス)に対する発育・発達期の水銀曝露による神経行動毒性への影響を平成24年度と同様に曝露条件を用いて実地する。繁殖適齢期に神経行動異常を発現した場合、個体側の感受性要因として遺伝的要因、神経行動毒性の発現との関係を解明するため脳をターゲットとしマイクロアレイ法による遺伝子発現への影響を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 消耗品 1150千円:①動物飼育及び曝露に係る費用 400千円(内訳:飼料100千円、ケージ200千円、動物の微生物検査費用100千円)、②水銀分析に係る費用 100千円(内訳:試薬類50千円、器具類50千円)、③マイクロアレイアッセイに係る費用 500千円(内訳:オリゴDNAチップ350千円、Cy3およびCy5 150千円、RNA抽出キット100千円)④行動試験に係る費用 150千円 2. 旅費 200千円(年1回、研究成果を発表及び今後の実験を検討する会議の出張費用) 3. 人件費・謝金 250千円(行動試験の実験補助に行なってくれる人への謝金) 4. その他 100千円(成果を発表するための投稿料及び印刷費)
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Research Products
(3 results)