2013 Fiscal Year Research-status Report
胎児期のエピジェネテイクスの変化がもたらす炎症発がん感受性を規定する因子の解明
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24590759
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
立道 昌幸 東海大学, 医学部, 教授 (00318263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑 春実 昭和大学, 医学部, 助教 (00396441)
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Keywords | エピジェネテイクス / 胎児期 / 炎症発がん / 発がん感受性 |
Research Abstract |
本研究では、胎児期に母体に葉酸含量の異なる飼料を投与し意図的に惹起したメチル化の程度の異なる仔マウスに対して、p53ヘテロノックアウトマウスを用いた異物による慢性炎症発がん促進モデルを応用し、発がん高感受性をもつ仔体をスクリーニングする。次に発がんに対して高感受性マウスと低感受性マウスに生じたDNAメチル化の変化を網羅的に比較することによって、炎症発がんの感受性を規定するエピジェネテイクスの因子を明らかにすることを目的とする。特に本研究では、予防医学的な応用を目標とするため、仔マウスから炎症を惹起する前に末梢血を採血し末梢血の白血球DNAのメチル化を比較することによって、発がん感受性を規定する因子を末梢血で検出できるバイオマーカーを特定することにある。今年度は、胎児期に母体に高葉酸飼料、コントロール飼料、低葉酸飼料を投与した後生まれた仔マウスの生後8週の段階で、採血とともに皮下にプラスチックプレートを埋め込み、慢性炎症を惹起させることによって皮下に線維肉腫を形成する実験を行った。コントロール飼料では、平均約23週で腫瘍形成を確認できたが、葉酸の組成の違う群では、群間内に早期に腫瘍形成する仔体と腫瘍形成が遅れる仔体が出現することを確認した。これらの結果からは、一様に高メチル化、低メチル化されていると考えられる仔体が表現系として炎症発がんに対して感受性を持つものではなく、特異的な領域にエピジェネテイクスの変化が生じた場合に炎症発がん促進作用がある可能性があり、今後、その領域を特定し胎児期のエピジェネテイクスの変化がもたらす炎症発がん感受性を規定する因子を解明する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスの出産に関してトラブルがあり実験に用いることのできるp53ヘテロノックアウトマウスの繁殖が計画通りに進まなかった。さらに、実際葉酸の組成を変えた飼料を投与した場合の出産も安定せず慢性炎症促進モデルを作成するのに時間を要した。しかし、飼育環境を整備することによって繁殖のトラブルは解決し、時間は要したが今期末には計画通りの数を確保でき、発がん実験を実行できた。又、今期の途中(10月)にて、大学を異動したため、異動先での実験環境の立ち上げに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
慢性炎症による発がん促進作用について、高感受性群と低感受性群を概ね確立できたため、これらの8週時に採取した血液サンプルを用いてDNAを抽出し、高感受性群と低感受性群との間でメチル化の差をマイクロアレイを用いて網羅的に探索する。その差分解析の結果を用い、pathway, GO解析にて炎症発がん感受性を決定する因子を探索する。マイクロアレイについては実績ある外注先にて委託する。さらに、今回p53ヘテロマウスの雌雄を掛け合わせて仔マウスを作成したため、p53ホモノックアウトマウス、ヘテロノックアウトマウス、ワイルドタイプマウスの3種類を得ることができた。胎児期の母体の葉酸暴露の変化にp53がいかなる影響を及ぼすかをあわせて、マイクロアレイを用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
p53ヘテロノックアウトマウスの繁殖にトラブルが生じ、必要なマウスを確保するのに時間を要した。そのため、今年度は発がん実験の観察が主たる実験であったため、解析費用として計上していた予算執行ができなかった。又、今年度、期の途中(10月)で研究機関を昭和大学医学部から東海大学医学部に異動したため、東海大学での実験環境を整えるのに時間を要した。そのため今年度の助成金に未使用分が発生し、次年度に繰り越した。 当初予定の炎症惹起する前の血液のサンプリング、発がん実験による高感受性群と低感受性群の同定は、時間を要したが今年度末で大半は終了することができた。そこで、得られたサンプルを用いた解析を次年度に行う。次年度では、得られた血液サンプルからDNAを抽出してDNAメチル化の網羅的解析を行うためのマイクロアレイの外注の予算、差分解析、pathoway解析、GO解析の予算が必要となる。さらに候補となる遺伝子領域が推定できた場合、パイロシーケンス法を用いて定量的な解析を行う予算を執行する予定である。
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