2013 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブ曝露により誘発された中皮細胞における遺伝子損傷作用の解析
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24590766
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
小笠原 裕樹 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (20231219)
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Keywords | カーボンナノチューブ / DNA損傷 / 抗酸化酵素 / 脂質過酸化 / ナノマテリアル / 胸膜中皮細胞 |
Research Abstract |
本年度は、CNT暴露による細胞増殖抑制及び変異原性の機序を解明すべく、研究を進めた。 これまでの先行研究で示唆されるG6PDHとCatalaseの活性及びグルタチオンレベルの変化について調べたところ、有意な変化は認められなかった。しかし、本検討では、暴露時間が従来の報告よりも短いため、より長い時間の暴露も行うと共に、24時間後のみの測定ではなく、経時的な変化を調べる事が望まれる。 一方、細胞膜脂質の酸化を調べるために行ったTBA試験では、SWCNT暴露の結果において、有意な差が見られ、脂質過酸化の亢進が示唆された。 TBA試験によってSWCNT暴露における膜脂質の過酸化が見られたことから、体内で発生する主要な活性酸素種のスーパーオキサイドを消去する、主要な酵素であるSODの活性がどのような影響を受けるかという点に注目した。暴露濃度と分散媒の組合せを変えて検討した結果、100μg/mlでの暴露において、SOD活性は有意に減少するという結果が再現性良く得られた。従って、SOD活性が低下することにより細胞内での過酸化が進み、膜の脂質過酸化と共に細胞増殖が抑制されている可能性が考えられた。 DNA損傷評価についての検討において、CNTを細胞に暴露すると細胞内に取り込まれ、Histone(H3)に結合しDNA損傷を引き起こしていることが示唆された。また、修復酵素XRCC-1はSWCNT曝露においてタンパク質レベルで2時間後に、mRNAレベルで1~2時間後において有意な上昇が認められた。また、MWCNTにおいても、曝露1時間後に有意なmRNAの増大が示された。この事から早い時点で何らかのDNA損傷修復系が活性化していることが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究の目的」の達成度としては、DNAアダクトーム解析が進んでいない状況にある。標準物質が入手できないことが原因として挙げられる。しかし、DNA損傷修復酵素の有意な発現変動をとらえたことから、間接的ながらも、CNTによる変異の促進が示唆された(達成度40%)。 MeT-5A細胞細胞内で起こる変化として、新たにSOD活性の低下を認めた。TBA-RS値の有意な増加については、再現性が得られたため、DNAアルデヒド付加体について解析する必要があると思われる(達成度80%)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高速液体クロマトグラフ-タンデム質量分析器(LC/MS/MS)を用いたDNAアダクトーム解析法によりMeT-5Aに対するCNT曝露により起こる直接的なDNAの修飾を比較解析する。DNA損傷修復酵素系をプロテオームアレイ法で網羅的に解析することで、どのようなDNAの修飾が起きているかを類推し、標準物質の合成を試みる。更に、次世代型シーケンサーによる解析を行い、損傷部位の特定化を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
少額の端数で、適当な消耗品がなかったために生じた。 細胞培養用血清およびプロテインアレイなど消耗品の購入。
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Research Products
(1 results)