2013 Fiscal Year Research-status Report
金属結合タンパク質メタロチオネインは肥満の性差発現を規定する
Project/Area Number |
24590771
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
川上 隆茂 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (40441589)
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Keywords | 肥満 / メタロチオネイン / 脂肪肝 / 去勢 / テストステロン |
Research Abstract |
非アルコール性脂肪性肝疾患は環境因子や遺伝的要因が重要であることが指摘されてきたが、性ステロイドと遺伝的な素因との直接的な関係については未解明な部分が多い。前年度では、雄性メタロチオネイン(MT)欠損マウスへの高脂肪食負荷により、野生型マウスと比較して著しい脂肪肝が生じることを見出した。また、男性ホルモンであるテストステロンは、脂肪肝発症に対して抑制的に機能することが報告されているがMT遺伝子との関連性については不明である。本研究では、MT欠損マウスに去勢処置を施し、MT欠損で増強される脂肪肝に対するテストステロンの影響を検討した。 MT欠損マウスの去勢群は偽処置群と比較して、(1)有意な肝臓重量の減少と肝臓中脂肪滴の著しい沈着、(2)WAT重量の著しい増加と脂肪細胞サイズの肥大化、(3)血中ALT値の有意な増加、(4)脂質合成関連遺伝子である脂肪酸合成酵素(FAS)およびステアロイルCoA不飽和化酵素(SCD-1)mRNA発現量の有意な増加を認めた。これらの結果はテストステロンの補充によって濃度依存的な回復や正常化が認められた。しかし、(5)β-酸化関連遺伝子であるアシルCoA酸化酵素1(ACOX-1)および脱共役タンパク質2(UCP2) mRNA発現量は去勢群、偽処置群および補充群との間で有意な差は認められなかった。さらに、WTマウスで同様の解析をおこなったところ、去勢処置やテストステロンの補充による臓器重量やmRNA発現量に有意な差は認められなかった。また、WTマウスはMT欠損マウスと比較して、去勢による脂肪肝の症状や頻度は軽度であり、より低用量のテストステロン補充で脂肪滴の減少が認められた。 以上、MT欠損マウスはWTマウスと比較して、低テストステロン条件下での脂肪肝に対する感受性が強いことを確認し、テストステロン補充は用量依存的に脂肪肝形成を回復させることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の一つである去勢MT欠損マウスを用いたテストステロン濃度変化による肥満・脂肪肝への影響解析を行った。研究実績の概要において述べたように、メタロチオネイン遺伝子は、雄性において高脂肪食誘導性の脂肪蓄積や脂肪肝発症に対してテストステロンが有する抑制作用を促進する可能性を示し、メタボリックシンドローム発症メカニズムの一端が明らかになったことから、当初の目的を達成しており、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究結果をふまえ、脂肪分化に性差あるいはMTの有無による差が反映されているのではないかと仮定し、MT欠損マウス由来の脂肪細胞株(ADC;Adipose-derived stromal cell)を用いたin vitro解析を主におこなう。本年度では、雌雄のマウスから個体別に前駆脂肪細胞株を樹立することから出発し、その分化性状の解析をするとともに、脂肪細胞分化能感受性に対する性ホルモンの影響を解析することにより、マウス個体の肥満感受性性差について脂肪細胞レベルでの要因を検討する。具体的には、生後5~7日齢マウス(129SV系MT欠損マウス、野生マウス)の鼠頸部皮下脂肪組織を無菌的に回収し、ウシ胎仔血清を含むDMEM培地にて、継代を繰り返す経過で増殖性を示した培養系を、マイクロプレート上で限界希釈法によって、クローン化をおこなう。ADCの脂肪細胞分化能は、細胞の脂肪滴蓄積量を指標とする。脂肪滴蓄積量の測定は、細胞を分化誘導処理、また性ホルモン及び性ホルモン受容体遮断薬で処理し、Oil Red O染色後、色素をNP-40で可溶化し、OD520を比色定量する。 また、前年度から引き続き、高脂肪食を摂取させたMT欠損マウスに金属(Mn、Co、Zn)を曝露し、MT遺伝子非存在下における肝臓および脂肪組織に与える影響について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由として、当初計画時よりも物品を安価に購入できたためである。 本年度は、MT-I/II欠損マウスおよび野生型マウスから異なる個体由来の複数の不死化クローンを主に解析に用いる予定であるが、その培養関連試薬代に30万円、脂肪蓄積量およびリポタンパク質などの測定に30万円、脂肪分化および脂肪蓄積に関与する遺伝子群の発現量解析(PCR法およびウェスタンブロット法など)に50万円、英文校閲に10万円、学会発表に10万円を計上する。
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