2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノ材料による神経系発達障害の評価系の開発に関する研究
Project/Area Number |
24590774
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
石堂 正美 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (60211728)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノ材料 |
Research Abstract |
ナノテクノロジーは、これまでの科学技術基本計画や新産業創造戦略において、推進すべき重要な政策として位置づけられており、産業発展のために必須の科学技術である。したがって、我が国が産業立国として21世紀の新たな産業技術をリードしていくためにもその基盤となるナノ材料の健康への影響、特に次世代への健康影響を明確にして、十分な対策を構築することが極めて重要な課題である。 しかしながら、ナノ材料の有害性に関しての研究報告は混沌とした状況にある。それはナノ材料の特異的な物性にあるといわれている。ナノ材料は評価困難物質とされ、その有害性評価は全く不明である。 本研究では、神経幹細胞の機能にナノ材料がどのように影響するかを調た。はじめにラット胎生15~16日の脳胞から神経幹細胞を単離し、その培養系を確立した。脳胞から取り出した神経幹細胞は、これまでの予備実験において培養7日ぐらいから塊を形成しはじめ、2~3週間で直径100~200ミクロンの球状の塊を形成する(neurosphereの形成)。今回は、このneurosphereを用いて実験を行こなう。neurosphereを培養系に静置すると、表面から細胞が飛び出してくるのを観察している。neurosphereが培養皿に接着していると、飛び出してくる細胞も底皿を外側に向かって移動していくことが観察された。脳内の神経幹細胞もその他の神経系細胞も胎生期から新生期にかけて盛んに移動し、機能的な神経回路網を形成することから神経系細胞の移動は、高次脳機能形成に重要な現象で、培養系でその細胞移動を模擬できると考えられた。 こうした神経幹細胞の移動に対して、ナノ材料、はじめに銀ナノ粒子がどのような影響を及ぼすかの評価を行った。その結果、銀ナノ粒子が他の内分泌攪乱物質や農薬のように神経幹細胞の移動を阻害することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調と判断されるのでこのまま継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
私たちはこれまでに内分泌撹乱化学物質や農薬がラット新生仔に曝露すると、多動性障害が惹起されることを自発運動量を指標とした行動科学的に実証してきている。その原因としてカテコールアミン系神経の発達障害であること示した。一方、東京理科大の武田グループは、ディーゼル排気粒子に含まれているナノ粒子が、私たちの報告と同じようにマウスの自発運動量に影響を及ぼし、しかもモノアミン系の代謝産物量が変化するという報告を行っている[文献Particle and Fibre Toxicology(2010)7:7]。 そこで、本研究ではこれまで確立してきた自発運動量を指標とした行動試験を次のように行う。 銀ナノ粒子(10nm~60nm)を生後5日の雄性Wistarラットに経口投与する。ヒトの学童期に対応する4~5週齢より自発運動量(Supermexシステム・室町機械株式会社)を測定を始める。自発運動量測定器は、遠赤外線を利用した温度センサーが付着しており、これでラットを認識し、ラットの移所行動、身づくろい、立ち上がりを測定する。8~11週齢まで測定を継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第一に、培養系において神経幹細胞の細胞移動が銀ナノ粒子により阻害される知見が得られた。そこで、次年度はこの阻害機構の詳細を調べる。たとえば、濃度依存性、銀ナノ粒子の粒子径依存性を調べる。また、銀ナノ粒子に対する神経幹細胞の縮退作用の有無も検討する。 第二に、銀ナノ粒子における神経発達障害が惹起されるかをin vivoにおいて調べる。たとえば、これまで同様、ドーパミン神経系の発達障害に注目して実施する。
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Research Products
(2 results)