2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590788
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
佐藤 美理 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10535602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 孝太 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (90402081)
山縣 然太朗 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (10210337)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 疫学 / 学校保健 / 母子保健 / メンタルヘルス |
Research Abstract |
甲州市母子保健長期縦断調査の一環として、甲州市内すべての小中学校において、小学校4年生から中学3年生約2000人を対象として、「児童生徒の心の健康と生活習慣に関する調査」(以下、思春期調査)を行った。調査内容は、生活習慣(睡眠、運動週間、食習慣)、心の健康(バールソン抑うつ評価尺度、起立性調節障害診断基準問診項目)であった。さらに、児童生徒健康診断表から、身長・体重等の身体データの抽出を行った。また、前年度までに集積されている思春期調査のデータのリンケージも行った。これら、思春期の縦断データにより、この時期のメンタルヘルスの指標のひとつの起立性調節障害のリスクとなる要因の検討を行った。まず、起立性調節障害を有する割合の経年的に明らかにし、横断データによる生活習慣との関連を検討し、男女による違いなどを示す。さらに、縦断データにより、起立性調節障害を発症するリスクとなる生活習慣や、発症を予測する問診項目などを明らかにする。また、抑うつスケール得点の経年変化をトラジェクトリー解析によりグルーピングを行い、抑うつ症状を有するリスクの検討を行う予定である。 また、本研究は甲州市母子保健長期縦断調査の一環として行っている。このため、母親の母子手帳届け時、乳幼児健診(1.6、3,5歳)時の身体データや睡眠、食事やおやつの摂取などの生活習慣のデータが蓄積されている。思春期調査のデータとこれらをリンケージして、より長いスパンでの縦断的解析を行うためにデータセットの作成を行った。これらのデータセットにより、胎生期や乳幼児期の生活習慣などが思春期のメンタルヘルスに及ぼす影響の検討を行う。サンプルサイズが充分となってから、乳幼児期の睡眠習慣が思春期の起立性調節障害の発症に及ぼす影響を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度思春期調査を実施した。調査票の回収率は、97.2%であった。思春期調査の縦断データにより、本コホートにおける近年の起立性調節障害や抑うつ症状などの有病率が明らかとなった。抑うつ症状は、学年や性別による割合はほぼ一定であった。起立性調節障害については、年度によって、さらにはその学年の特性が存在する可能性が示唆された。これらの特徴が、どんな要因と関連しているのかを検討する必要性が示唆された。 起立性調節障害に関連する生活習慣では、横断解析において、寝つき感が悪いと起立性調節障害陽性のリスクが男子で4.6倍、女子で6.5倍と高いインパクトとなっていた。これらは、学校保健において、起立性調節障害を発見する指標になると思われる。また、縦断的解析により、就寝時刻が12時以降の生徒は、1年後に起立性調節障害を発症するオッズ比が2.3となっていた。また、同じくベースラインで、立ちくらみあるいはめまいを起こす、乗り物に酔うという2つの問診項目が、その後の発症のリスクとなっていることが明らかとなった。 抑うつ症状については、経年変化による解析を進めている。研究の進捗状況としては、概ね予定通りに進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
思春期と乳幼児期データのリンケージが行われ、長期にわたる縦断データが蓄積された。小児期の生活習慣がその後の様々な疾患に関連すると示唆されているが、思春期のメンタルヘルスをターゲットにしている研究はほとんど存在しない。また、思春期のメンタルヘルスは、単年のデータでは十分な検討はできないと考えられる。なぜならば、抑うつ症状を呈した児が翌年も呈する割合は、男女差や学年の差があるが50%以下である。したがって、思春期でのアウトカムをどのようにカテゴライズするかは、トラジェクトリー解析やマルチレベル解析を用いて、検討を行う予定である。さらに、長年の調査の実施により、教育現場からの提案で取り入れられた新たなメンタルヘルスに関連する調査項目なども追加の予定であり、合わせて解析を行う予定である。 これらの研究の成果は、国内外の学会での発表により、研究結果を世界に発信するとともに、特に国際学会での最新の解析方法など情報の収集も行う予定である。また、学校保健という観点から、成果の還元も積極的に行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、縦断データの解析に時間がかかったために、報告書の作成や論文投稿が次年度に繰り越された。そのため、報告書印刷費や英文校正代などにおいて研究費の繰り越しが発生した。次年度に、これらの目的のために繰り越しの研究費を使用する。また、平成25年度も、引き続き思春期調査を実施するために、準備を行っている。調査実施のための調査票印刷費、身体データの各学校における抽出作業のための人件費やデバイス購入費、結果報告に関連する様々な消耗品代などに、研究費を使用する予定である。さらに、学会発表や論文投稿の際にかかる費用についても、本研究費を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)