2012 Fiscal Year Research-status Report
途上国における学校でのメンタルヘルス・プロモーションについての研究
Project/Area Number |
24590800
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
秋山 剛 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 研究員 (20579817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 潤 長崎大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70225514)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際保健 / 学校保健 / タイ / メンタルヘルス |
Research Abstract |
メンタルヘルスは途上国においても、重要な問題であるが、先進国と比べ、知見は少ない。本研究では、途上国の学校における効果的なメンタルヘルス・プロモーションの方法論を確立し、今後、他国への効果的な展開を図るための基盤づくりを行うことが目的である。具体的な研究項目は、下記①②の2つである。①②とも今年度は次年度の介入研究実施に向けた準備期間であり、主に背景となる知見を得た。これを利用し、業績としては、次年度となるが、論文1本の刊行を見ることができた。 ①学生に対するメンタルヘルス・リテラシーとスティグマ等態度の介入研究 対象としているタイの移民学校では、ビルマ族とカレン族の学生が混在して学んでいる。本年度は質的研究を行う計画で、まず対象者抽出のため対象学校の学生の年齢や性別のほか、民族と宗教の確認を行った。アジアを含む、多くの社会において、精神疾患の原因として宗教的または超自然的な理由があげられる場合があることを配慮した。ビルマ族においては、仏教、聖霊と精神疾患との関連づけること、カレン族でも、多数を占める仏教徒カレン族では同様に聖霊信仰と仏教が併存していることが報告されている。対象となる学校で、9-12年生についてデータを入手した。仏教徒カレン族が最も多く、追加的に文献を収集し用語や概念について展望、検討した。 ②途上国での、学生のセルフ・エスティームへの学校課外活動の効果についての研究 現地学校(合計62学校、1-12学年まで在籍)には余暇活動として、サッカー等の学生チームが存在している。集団競技チーム(サッカー)に参加している学生への、これら課外活動を通じた心理面への介入研究を、2013年度に行なう計画である。2012年度のトーナメントが2012年11-12月に開催され、現況分析を行った。11-12月に、円滑な実施ができるように参与観察とスケジュール確認を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①学生に対するメンタルヘルス・リテラシーとスティグマ等態度の介入研究 本年度は、次年度以降の介入研究に資するべく、現況の質的な研究と分析の実施を行なうため、学生と学校関係者などのインタビューを実施する計画であった。2013年2月に現地学校の学生の民族、宗教について、ベースラインの調査が完了し、仏教徒カレン族、キリスト教カレン族、仏教徒ビルマ族の順で構成されていること、また人数を確認した。これをもとに対象者を抽出して調査スタッフによる質的インタビューを2013年3月に引き続き行うにあたり、事前に現地の医療機関の同意と協力を得ていた。しかしながら、医療機関側で、人事異動があり、新任の副院長からその医療機関の倫理審査を再申請すること、また介入研究での、学生への教育内容について、英語版以外に、それを現地語に翻訳したうえで、再提出する等の要求があり、2012年度末に、予定していたインタビュー調査の実施は準備のため、来年度に持ち越しせざるを得なくなった。しかしながら、同意がとれ次第、速やかに調査を再開する予定である。 ②途上国での学生のセルフ・エスティームへの学校課外活動の効果についての研究 こちらも上記の、医療機関の同意を得る必要があるが、2012年度の準備や教協確認は円滑に進行した。計画では、現地移民学校のサッカー等の学生チームを対象として、介入研究を2013年度中のトーナメントとあわせて実施する予定である。次年度の円滑な研究実施のため、2012年度は、スムーズなトーナメント運営と現況の分析を実施した。本年度は日程の確認と観察を行い、次年度のサッカートーナメントの開催は、2012年度と同様に、雨季の後の2013年11月―12月に開催する予定である。なお、学生に聞き取りを行ったところ、2012年度のトーナメント参加については練習が十分出来なかった等の意見があがり、今後の投入の参考とした。
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Strategy for Future Research Activity |
①学生に対するメンタルヘルス・リテラシーとスティグマ等態度への介入研究 研究計画の課題は、初年度に実施できなかったインタビュー調査である。上記のとおり、現地協力医療機関の指導体制が変わり、新たに同意を得る必要が生じた。解決するため、現地の関係者の協力を得て、速やかに対応したい。調査は現地の許可が得られ次第、早急に実施予定である。同年6月を予定している。学生や学校関係者や、医療関係者など、各グループから10名程度を抽出して、インタビューを行う。さらに学生のメンタルヘルスに関する認識、知識、及びスティグマ等、態度について介入調査は8月を予定している。学生100名程度、参考情報としてまた教師など学校関係者や、医療従事者への質問紙を使用してメンタルヘルスへのリテラシーなどを調査する。その後、学生へ介入として、メンタルヘルスについて教育を実施することとなる。なお、学生への直接的な教育的介入効果そのものを測定するため、教育は学校関係者は除外し、学生のみに実施することとなっている。直後に介入効果を前述した調査票のスコアで評価する。現地の文化的な問題のかかわる可能性もあるので慎重に進めていく。 ②学生のセルフ・エスティームへの学校課外活動の効果についての研究 当初の予定どおり、現地移民学校の、サッカーチームに参加している学生へ、これら課外活動を通じた心理面へのコーチングを通じた介入研究を年度内に行う。合計100名程度を想定しているが、参加学生数が不足した場合は、コントロールを設けず、介入群のみを設定して、介入前後・男女などを比較することで対応する。介入として先行研究で実施されたコーチング・トレーニングを本年度内に実施する予定である。なるべく十分な練習・指導期間を与えるために、トーナメント開催を当初予定していた12月から来年1月に設定することも考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「収支状況報告書」の「次年度使用額」の合計額は28,568円となっている。これは当初見積もっていた人件費が予定より、短期間、また効率的に作業でき、人件費・謝金が計画より少ない額で実施できたことからである。しかしながら、現地学校の日程調整をうまく合わせることが、先方の都合で困難であったため、効率的な日程を組めず、当初の計画より渡航回数が多くなった。そのため、旅費は2012年度においては交付申請で推定していた当初の金額より多く使用することになった。物品については、質的インタビュー調査実施後の購入で対応可能であるため、質的研究支援ソフト等の購入を次年度以降に先送りにした。 上記から翌年度以降に請求する研究費とあわせた使用計画としては、旅費に合算して使用する予定である。次年度の研究費としては、このため、旅費は約63万となるが、物品、人件費・謝金やその他の額は、交付申請で算出した配分で実施する予定である。今年度は予想より旅費に使用額が多かったため、3回程度の国外出張にとどめて、効率的な支出に努める。
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Research Products
(1 results)